山陰の地が育んだ【鳥取県の名水】4カ所をご紹介~名水百選より~
二十世紀梨(にじゅっせいきなし)などの農産物で知られる地、鳥取県。
日本海からの厳しい自然にさらされつつも、とても清らかな水が湧きでているのが特徴的です。
今回ご紹介するのは、古くからこんこんと湧きだしてきた清らかな水「天の真名井(あめのまない)」、因伯(いんはく)の名水百選にもえらばれた良質の水「布勢の清水(ふせのしみず)」、今も大切に使われるお地蔵さまの水「宇野地蔵ダキ(うのじぞうだき)」、かつて大山(だいせん)の参詣者ものどをうるおした「地蔵滝の泉(じぞうだきのいずみ)」の4つです。
以下の文章では、豪雪地帯に湧きでた、昭和・平成あわせて計4カ所の鳥取県の名水についてご紹介していきます。
目次
昭和の名水百選
天の真名井
読みがな:あめのまない。
「アメノマナイ」というのは、きれいな水につけられる最大級の名称です。
この由来からつけられた「天の真名井」といわれる泉は、古代からたえず湧き出し、宇田川平野(うだがわへいや)開発の動脈となり、生活にかかせない水源として大切にされてきました。
1944年(昭和19年)に完成した昭和用水は、現在でも水源をこの湧水にたよっています。また、この水は地域の水道水としても利用されており、住民が組合をつくって管理しています。
地元では、毎年春に泉の底ざらいをしていて、今でも昔のままの神聖なすがたを保っています。
種類
湧水
所在地・アクセス
鳥取県米子市
- 米子自動車道「米子IC」から「天の真名井」まで車で約15分(8.0km)。
水質データ
水温 | 13.9℃ |
---|---|
硬度(mg/L) | 33.8(軟水) |
水素イオン濃度(pH) | 6.6 |
電気伝導度(EC) | 107.9 |
塩化物イオン(Cl–) | 13.1 |
硝酸イオン(NO3–) | 0.9 |
硫酸イオン(SO42-) | 2.9 |
重炭酸イオン(HCO3–) | 44.5 |
ナトリウムイオン(Na+) | 10.9 |
カリウムイオン(K+) | 1.3 |
マグネシウムイオン(Mg2+) | 4.3 |
カルシウムイオン(Ca2+) | 6.5 |
二酸化ケイ素(SiO2) | 32.9 |
平成の名水百選
布勢の清水
読みがな:ふせのしみず。
日本海に面する気高町(けだかちょう)の殿集落にある布施平(ふせひら)神社の境内にわく水で、「因伯(いんはく)の名水」の一つです。古くから生活・農業用水に利用され、明治時代には住民の手によって町内初の水道がひかれました。
殿集落では「清水の恵みを守る会」を中心に、毎週当番制で湧水と布施平神社一帯の清掃を行っています。こうした保全活動が認められ、環境省の「水・土壌環境保全活動功労者表彰」も受けました。
良質ですきとおった湧水は、日本酒をつくる材料にも使われています。鳥取県を代表する山根酒造場が無濾過生原酒(むろかなまげんしゅ)である「無垢之酒(むくのさけ)」に、仕込み水として布施の清水を利用しています。
種類
湧水
所在地・アクセス
鳥取県鳥取市
- 鳥取自動車道「鳥取IC」から「布勢平神社」まで車で約34分(22.9km)。
水質データ
水温 | 13.7℃ |
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硬度(mg/L) | 48.7(軟水) |
水素イオン濃度(pH) | 6.6 |
電気伝導度(EC) | 146.5 |
塩化物イオン(Cl–) | 9.6 |
硝酸イオン(NO3–) | 2.1 |
硫酸イオン(SO42-) | 0.8 |
重炭酸イオン(HCO3–) | 64.6 |
ナトリウムイオン(Na+) | 7.9 |
カリウムイオン(K+) | 1.2 |
マグネシウムイオン(Mg2+) | 5.6 |
カルシウムイオン(Ca2+) | 10.5 |
二酸化ケイ素(SiO2) | 29.9 |
宇野地蔵ダキ
読みがな:うのじぞうだき。
「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」とほられた巨岩と3体の地蔵がまつられている法華堂。
その前にわく水は古くから「ダキ」とよばれ、宇野地区に水道が完備される昭和40年代半ばまで、毎日の洗濯や料理に使われていました。
この「宇野地蔵ダキ」のふるさとは宇野山で、カルシウムを多くふくんでいます。クセがなく甘みがあると評判で、鳥取県が選定した「因伯(いんはく)の名水」の一つでもあります。
この水は昔から生活に密着しており、保全活動がさかんです。地元の人々で構成される「宇野地蔵ダキ保存会」が遊水池の清掃をおこない、花やくだものなどのお供えを欠かしません。
種類
湧水
所在地・アクセス
鳥取県東伯郡湯梨浜町
- 鳥取自動車道「鳥取IC」から「地蔵ダキ集会所」まで車で約40分(34.0km)。
水質データ
水温 | 15.9℃ |
---|---|
硬度(mg/L) | 46.5(軟水) |
水素イオン濃度(pH) | 6.8 |
電気伝導度(EC) | 196.0 |
塩化物イオン(Cl–) | 20.4 |
硝酸イオン(NO3–) | 19.0 |
硫酸イオン(SO42-) | 1.6 |
重炭酸イオン(HCO3–) | 37.8 |
ナトリウムイオン(Na+) | 13.3 |
カリウムイオン(K+) | 1.4 |
マグネシウムイオン(Mg2+) | 5.8 |
カルシウムイオン(Ca2+) | 9.3 |
二酸化ケイ素(SiO2) | 31.6 |
地蔵滝の泉
読みがな:じぞうだきのいずみ。
古くから信仰の山としてあがめられてきた、中国地方最高峰の大山(だいせん)。その山々にいだかれた自然あふれる地、伯耆町(ほうきまち)にわくのがこの「地蔵滝の泉」です。これは鳥取県選定の「因伯(いんはく)の名水」にも選ばれています。
終戦頃まで水はうっそうとした森林におおわれ、高さ5mほどの高さから滝のように流れ落ちていたといいます。これは「地蔵滝」とよばれ、出雲や米子などから訪れる参詣者のいこいの場として、また、旅の守り神として親しまれてきました。
水の温度は年間をつうじて11℃に保たれ、近隣の370世帯に供給されるほか、農業用水にも利用されています。周囲には、すんだ水にしか育たないクレソンやセリが生い茂り、人々を楽しませています。
種類
湧水
所在地・アクセス
鳥取県西伯郡伯耆町
- 米子自動車道「溝口IC」から「地蔵滝の泉」まで車で約10分(5.9km)。
水質データ
水温 | 13.0℃ |
---|---|
硬度(mg/L) | 35.9(軟水) |
水素イオン濃度(pH) | 6.2 |
電気伝導度(EC) | 149.0 |
塩化物イオン(Cl–) | 13.7 |
硝酸イオン(NO3–) | 1.2 |
硫酸イオン(SO42-) | 2.5 |
重炭酸イオン(HCO3–) | 61.0 |
ナトリウムイオン(Na+) | 12.8 |
カリウムイオン(K+) | 2.5 |
マグネシウムイオン(Mg2+) | 3.9 |
カルシウムイオン(Ca2+) | 8.1 |
二酸化ケイ素(SiO2) | 39.9 |
鳥取県の名水百選マップ
- (1番左)天の真名井
- (左から2番目)地蔵滝の泉
- (左から3番目)宇野地蔵ダキ
- (1番右)布勢の清水