個性が際立った【埼玉県の名水】5カ所をご紹介~名水百選より~

個性が際立った【埼玉県の名水】5カ所をご紹介~名水百選より~

関東地方のほぼ中央部にある地、埼玉県。首都である東京に近い地域でありながらも、秩父(ちちぶ)山地をはじめとする自然に恵まれた水源の中から、昭和・平成の名水百選にて個性的な5カ所が選ばれました。

今回ご紹介するのは、かつて日本武尊(やまとたけるのみこと)が戦の勝利をいのって剣を地面にさしたら湧いたとされる水「風布川・日本水(ふっぷがわ・やまとみず)」、絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)指定魚であるムサシトミヨがすむ「元荒川ムサシトミヨ生息地」、秩父の伝統文化や特産品にかかせない「武甲山伏流水(ぶこうざんふくりゅうすい)」、埼玉県の中ではもっとも都心に近い名水「妙音沢(みょうおんざわ)」、カルシウムが豊富な神の水ともいわれる「毘沙門水」の5カ所です。

以下の文章では、そのような特徴ある埼玉県の5カ所の名水についてご紹介していきます。

目次

昭和の名水百選

風布川・日本水

読みがな:ふっぷがわ・やまとみず。

荒川の上流、玉淀川(たまよどがわ)に注ぐ「風布川」。その川の源に「日本水」があり、この水のある大里郡寄居町(おおさとぐんよりいまち)は県の北西部に位置しています。

日本水のいい伝えの一つとして、日本武尊が、戦の勝利をいのって剣を地面につきさしたところ、水が湧き出してきたという話があります。この時、日本武尊があまりの水のつめたさに、一口しかのめなかったことから、「一杯水」という別名がつけられました。

また、雨がいっこうにふらない時でも、昔からこの水はかれないことから、農民によって「水もらい」の水としてあがめられてきました。

現在、この地域は日本でもっとも北にあるみかん産地でもあり、水が水道水、生活用水、農業用水などに利用されています。

風布川・日本水

種類

湧水

所在地・アクセス

埼玉県寄居郡寄居町

水質データ

水温 12.9℃
硬度(mg/L) 112.0(中硬水)
水素イオン濃度(pH) 7.6
電気伝導度(EC) 203.0
塩化物イオン(Cl 3.3
硝酸イオン(NO3 2.4
硫酸イオン(SO42- 8.7
重炭酸イオン(HCO3 115.9
ナトリウムイオン(Na+ 0.8
カリウムイオン(K+ 0.6
マグネシウムイオン(Mg2+ 20.2
カルシウムイオン(Ca2+ 11.7
二酸化ケイ素(SiO2 179.1

平成の名水百選

元荒川ムサシトミヨ生息地

読みがな:もとあらかわむさしとみよせいそくち。

熊谷市の住宅地をぬうように曲がって流れる「元荒川」は、一年で平均約15℃のきれいな川です。

この川の源流には、世界でも熊谷市にしか生息していない絶滅危惧種指定魚「ムサシトミヨ」がすみ、県の天然記念物にも指定されています。

ムサシトミヨとは、体にトゲをもつ体長4~6cmの小さな魚です。この魚は鳥のように巣をつくり、オスが子育てをします。

そのムサシトミヨをまもるための施設「熊谷市ムサシトミヨ保護センター」では、研究者による活動だけでなく、観察学習会、環境整備活動、小学生の総合的学習の時間の受け入れなどの環境教育が行われています。

元荒川ムサシトミヨ生息地

種類

河川

所在地・アクセス

埼玉県熊谷市

水質データ

水温 13.9℃
硬度(mg/L) 77.2(中硬水)
水素イオン濃度(pH) 7.7
電気伝導度(EC) 160.5
塩化物イオン(Cl 5.2
硝酸イオン(NO3 7.2
硫酸イオン(SO42- 27.4
重炭酸イオン(HCO3 34.2
ナトリウムイオン(Na+ 8.1
カリウムイオン(K+ 1.2
マグネシウムイオン(Mg2+ 3.2
カルシウムイオン(Ca2+ 25.8
二酸化ケイ素(SiO2 不明

武甲山伏流水

読みがな:ぶこうざんふくりゅうすい。

「武甲山伏流水」は、秩父市の市街地をうるおす豊富な水量にめぐまれた地下水です。

この水は、日本三大曳山祭(ひきやままつり)の一つである「秩父夜祭(ちちぶよまつり)」の起源となり、古くから地域の発展をささえ、地域の伝統や文化にだいじな役割をはたしてきました。

湧き出しているのは今宮神社や秩父神社の泉です。現在でも秩父神社の田植え祭では秋の豊作をねがってこの水がそなえられるほか、宮地地域の住民が生活用水に使っています。

また、この地域のおもな特産物に日本酒がありますが、そのしこみ水に名水をつかう酒造もあり、秩父の住民の生活にかかせないになっています。

武甲山伏流水

種類

地下水

所在地・アクセス

埼玉県秩父市

水質データ

水温 17.3℃
硬度(mg/L) 82.3(中硬水)
水素イオン濃度(pH) 6.7
電気伝導度(EC) 225.0
塩化物イオン(Cl 8.1
硝酸イオン(NO3 23.8
硫酸イオン(SO42- 27.8
重炭酸イオン(HCO3 57.3
ナトリウムイオン(Na+ 10.7
カリウムイオン(K+ 2.9
マグネシウムイオン(Mg2+ 3.9
カルシウムイオン(Ca2+ 26.7
二酸化ケイ素(SiO2 不明

妙音沢

読みがな:みょうおんざわ。

新座市(にいざし)にある「妙音沢」は、雑木林(ぞうきばやし)に湧き出る大沢と小沢の2つの沢からなり立っています。

林に足をふみ入れると、この二つの沢の音がまじり合い、なんともふしぎな音色がきこえてきたことから妙音沢の名がつけられました。

本湧水はきわめて水量が多く、近くの農家が農業用の水として使うほどです。水辺のあたりにはカタクリやニリンソウなどの野生植物が多いです。

保全活動としては市が巡視員を派遣して、緑地内での動物・植物の持ち出しや不法なゴミ捨てを防ぐパトロールをしたり、気温や地面の温度や照度(しょうど)の観測をするなど、さまざまな活動を実施しています。

妙音沢

名水百選選抜総選挙

景観が素晴らしい名水部門 エントリー

種類

河川

所在地・アクセス

埼玉県新座市

水質データ

水温 17.2℃
硬度(mg/L) 76.9(中硬水)
水素イオン濃度(pH) 6.7
電気伝導度(EC) 197.4
塩化物イオン(Cl 19.5
硝酸イオン(NO3 37.4
硫酸イオン(SO42- 13.8
重炭酸イオン(HCO3 59.5
ナトリウムイオン(Na+ 11.6
カリウムイオン(K+ 0.6
マグネシウムイオン(Mg2+ 10.0
カルシウムイオン(Ca2+ 14.8
二酸化ケイ素(SiO2 不明

毘沙門水

読みがな:びしゃもんすい。

秩父郡小鹿野町(ちちぶぐんおがのまち)は秩父盆地のほぼ中央にあります。

よろいやかぶとに身をつつんだ毘沙門天の碑(いしぶみ)がたつ湧き水「毘沙門水」は、町の北東に位置する高さ約997mの白石山(毘沙門山)のふもとに湧き出してきました。

毘沙門山から湧く水はカルシウムやミネラルが豊富で、現在でも馬上(もうえ)地区で生活用水として利用されています。雨がふらなくてもかれたことがないという毘沙門水は「神の水」ともよばれ、馬上地区にある諏訪(すわ)神社で毎年1月に行われる「馬上のクダゲエ」という占いの材料にこの水が使われてきました。

また、毘沙門水の近くにはカタクリがはえており、ニホンカモシカなどもすんでいます。

毘沙門水

名水百選選抜総選挙

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種類

湧水

所在地・アクセス

埼玉県秩父郡小鹿野町

水質データ

水温 16.8℃
硬度(mg/L) 96.8(中硬水)
水素イオン濃度(pH) 7.7
電気伝導度(EC) 191.8
塩化物イオン(Cl 0.9
硝酸イオン(NO3 8.0
硫酸イオン(SO42- 4.4
重炭酸イオン(HCO3 103.7
ナトリウムイオン(Na+ 0.3
カリウムイオン(K+ 0.0
マグネシウムイオン(Mg2+ 0.0
カルシウムイオン(Ca2+ 38.7
二酸化ケイ素(SiO2 不明

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