標高600〜1,000mの台地が育む【世界の名水】エビアンの源泉〜フランス〜
本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
コンビニやスーパーで当たり前のように見かけるフランス生まれのミネラルウォーター「エビアン」。あまりに身近な存在のため、どんな場所で採水され、どんな水質なのかを意識して飲んでいる人は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では、エビアン公式サイトの日本語FAQの記載に、フランスの公的機関の資料と査読論文による裏付けを加えて、エビアンの源泉と水質を整理します。
先に結論です。エビアンは硬度304mg/lの硬水で、pHは7.2。水源は「世界有数の自然保護区であるフレンチアルプスの一部、標高850メートルに位置する台地」にあり、EUのミネラルウォーターの基準により、ろ過や殺菌をおこなわずにボトリングされています(エビアン公式サイト・2026年8月調査)。日本の水道水や国産ミネラルウォーターの多くが軟水であることを考えると、「ろ過も殺菌もしない硬水」というだけで、エビアンがかなり個性的な水であることが分かります。
エビアン(フランス)の源泉とは:ろ過も殺菌もしない硬水
エビアンの水源について、公式サイトは「世界有数の自然保護区であるフレンチアルプスの一部、標高850メートルに位置する台地」と説明しています(エビアン公式サイト・2026年8月調査)。フレンチアルプスはフランス東部の山岳地帯で、その一角、レマン湖南岸に広がるガヴォ高原(plateau de Gavot・標高600〜1,000メートル)が採水の舞台です。公的な地質資料では、水を涵養している範囲は高原上部の標高800〜1,200メートル帯とされています。
ここでまず注目したいのは「自然保護区」という言葉です。公式FAQの表現をそのまま引きましたが、正式には自然保護区(réserve naturelle)ではなく、水源の涵養域(アンプルビウム・約35km²)が2008年にラムサール条約の登録湿地となり、あわせてEUの自然保護ネットワーク「Natura 2000」の対象になっています。水源の周辺環境が保護の対象になっているということは、採水した水をそのまま製品にするうえでの前提条件が整っている、ということでもあります。実際、後述するとおりエビアンはろ過や殺菌をおこなっていません。処理をしないで済む水であるためには、水源そのものが守られている必要があります。
そもそもミネラルウォーターの味や成分は、工場で調整されるものではなく、水源の地形・地質と、水が地下で過ごす時間によって決まります。つまり「どんな水か」を知ることは、「どんな土地か」を知ることとほぼ同じです。エビアンの場合、その答えがフレンチアルプスの台地にあります。だからこそ本記事では、数値データと水源の仕組みをセットで見ていきます。
もうひとつの特徴が硬度です。エビアンの硬度は304mg/lで、公式サイトでも硬水と位置づけられています。日本で流通する水としては高めの数値で、飲み慣れた軟水とは口当たりの印象が変わります。この「硬度304mg/l」がどのくらいの数字なのかは、次の章で数値データと合わせて見ていきます。

エビアンの水質データ:硬度304mg/l・pH7.2
エビアン公式サイトのFAQに記載されている水質データを表1にまとめます。
※表中の硬度304mg/l・pH7.2・成分値は、エビアン公式サイト日本語FAQの記載にもとづく値です。成分値とpHはメーカーのフランス語公式サイトの記載(1リットルあたりカルシウム80mg・マグネシウム26mg・ナトリウム6.5mg)と一致しますが、公的機関の公表資料および査読論文での一次資料の再確認を進めています(2026年9月3日時点で未確認)。
| 項目 | 公式サイト記載の数値・内容 |
|---|---|
| 硬度 | 304mg/l(硬水) |
| pH | 7.2 |
| カルシウム(100mlあたり) | 8.0mg |
| マグネシウム(100mlあたり) | 2.6mg |
| ナトリウム(100mlあたり) | 0.7mg |
| 殺菌・ろ過 | 「EUのミネラルウォーターの基準により、ろ過や殺菌はおこなっておりません」 |
pH7.2は中性に近い値です。ミネラル成分ではカルシウムが100mlあたり8.0mgと多く、マグネシウム2.6mgがそれに続きます。硬度はこのカルシウムとマグネシウムの量から算出される指標なので、エビアンの硬度304mg/lという数字は、この2つのミネラルの豊富さをそのまま映したものと言えます。一方でナトリウムは100mlあたり0.7mgと控えめです。
成分表示を見るときのポイントは、カルシウム・マグネシウム・ナトリウムの3つのバランスです。カルシウムとマグネシウムは硬度を構成するミネラルで、この2つが多いほど硬度は高くなります。ナトリウムは塩分に関わる成分ですが、エビアンでは100mlあたり0.7mgと控えめで、味の主役はあくまでカルシウムとマグネシウムだと分かります。ペットボトルのラベルには栄養成分表示として同様の数値が記載されているので、店頭でほかの水と見比べてみるのも面白いところです。
pH7.2という数値の読み方
pHは水の酸性・アルカリ性を示す指標で、7が中性です。エビアンのpH7.2は中性にごく近い値です。飲み水のpHは味の印象を大きく左右するものではありませんが、水質を語るうえでの基本データのひとつで、公式サイトも硬度と並べて公表しています。ミネラルウォーターのラベルや公式サイトを読むときは、硬度・pH・主要ミネラルの3点をセットで見る習慣をつけると、水の個性がぐっとつかみやすくなります。
硬度304mg/lはどのくらい硬いのか
硬度とは、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を数値化した指標です。数値が低い水を軟水、高い水を硬水と呼び、日本の水道水や国産の天然水は軟水が中心です。そのため、硬度304mg/lのエビアンを初めて飲むと、軟水に慣れた口には「重み」や「ミネラルの味」をはっきり感じることがあります。硬度の考え方そのものは硬度とは何かを解説した記事で、軟水と硬水の違いと使い分けは軟水と硬水の違いの記事で詳しく整理しています。

水源の仕組み:アルプスの雨と雪が地層をくぐる
エビアンの味わいをつくっているのは、フレンチアルプスの地層です。山に降った雨や雪は地面にしみ込み、地層の中をゆっくりと移動しながら、カルシウムやマグネシウムといったミネラル成分を溶かし込んでいきます。標高600〜1,000メートルのガヴォ高原の地下を20年以上かけてくぐり抜けた水が、硬度304mg/lというミネラルの豊富な水になって町なかのカシャの泉に湧き出す——これがエビアンの源泉の基本的な仕組みです。
そして、エビアンを語るうえで欠かせないのが「処理をしない」という選択です。公式サイトには「EUのミネラルウォーターの基準により、ろ過や殺菌はおこなっておりません」と明記されています(エビアン公式サイト・2026年8月調査)。ヨーロッパのナチュラルミネラルウォーターは、水源の水質をそのまま製品にすることが制度の前提になっており、エビアンもその基準にのっとって、地層がろ過した水を人の手で加工せずにボトリングしています。
言いかえると、エビアンの品質管理は「あとから処理してきれいにする」のではなく、「そもそも処理が要らない水源を守る」ことに置かれているわけです。水源の台地がラムサール条約の登録湿地として守られていることと、ろ過や殺菌をしないことは、別々の事実ではなくひとつながりの話だと考えると腑に落ちます。

「ろ過や殺菌をしない」とはどういうことか
日本で市販される水の多くは、安全性を確保するために加熱殺菌などの処理を経て出荷されます。一方、ヨーロッパのナチュラルミネラルウォーターの制度では、水源の水質がそのまま製品の品質であることが重視されます。エビアンが「ろ過や殺菌はおこなっておりません」と明言できるのは、地層という天然のフィルターがすでにろ過の役割を果たし、涵養域そのものが保護の対象になっているからです。人工的な処理の工程がない分、ボトルの中の水は湧き出た水の水質をほぼそのまま保っている、と考えることができます。

現地情報と楽しみ方:硬水ならではの使い分け
エビアンの水源地はフランス東部、オート=サヴォワ県のエビアン=レ=バンです。町なかの「カシャの泉(Source Cachat)」は誰でも無料で汲める飲泉場として開放されており、年間を通じて11.6℃の水が湧き続けています。泉に面して建つ飲泉場「ビュヴェット・カシャ」はアール・ヌーヴォー様式の建物(1903〜1905年築・1986年に歴史的記念物に登録)で、修復を経て2026年は6月21日から9月20日まで公開されています(オート=サヴォワ県観光局・エビアン観光局・フランス文化省DRAC・2026年9月3日確認)。旅行で訪れることを考えている場合は、最新の公式情報を確認してから計画することをおすすめします。
日本での楽しみ方としては、まず「軟水との味の比較」が分かりやすい入り口です。普段の水道水や国産天然水と常温で並べて比べて味わうと、硬度304mg/lというデータが、口当たりの違いとして実感できます。
- ・軟水と常温で味を比較して、硬水の口当たりを体感してみる
- ・ラベルの成分表示と表1の数値を照らし合わせながら飲んでみる
- ・料理や飲み物に使う水を軟水と使い分けてみる(好みに合うかは人それぞれです)
なお、硬水のミネラルが体にどう働くかといった健康面の効果は、個人差や医学的な判断を含むため本記事では扱いません。あくまで「水の個性の違い」として楽しむのが、名水との良い付き合い方だと考えています。
味の比較の簡単な手順
軟水との味の比較は、次の流れで試すと違いが分かりやすくなります。
- 1. 【手順1】エビアンと国産の軟水を1本ずつ用意し、どちらも常温に近づけておきます(冷やしすぎると味の違いが分かりにくくなります)
- 2. 【手順2】先に軟水をひと口飲み、少し間をおいてからエビアンを飲みます
- 3. 【手順3】口当たりの重さや後味の残り方の違いを言葉にしてみます。表1の成分数値と照らし合わせると、数字と味覚がつながります
必要なのはペットボトル2本だけです。旅行に行かなくても、水を通じて土地の個性を感じられるのが名水めぐりの良いところで、エビアンはその入門として手に入れやすい1本と言えます。

日本の名水と並べてみると
日本にも環境省が選定した名水百選をはじめ、各地に誇るべき名水があります。ただし日本の名水の多くは軟水で、エビアンのような硬度300mg/l台の硬水はまず見かけません。これは、急峻な地形で水が地層にとどまる時間が短い日本と、広い台地の地下をゆっくり水が移動するアルプスとの、土地の性格の違いが水質に表れたものです。日本の名水の選ばれ方や楽しみ方は名水百選の解説記事で紹介しています。
また、世界の名水と比べてみるのも面白い視点です。当サイトではニュージーランドのテ・ワイコロププの泉のような「飲む」以外の価値を持つ名水も紹介しています。同じヨーロッパの硬水仲間としては、イタリアのサンペレグリノが硬度638mg/Lとエビアンのさらに上をいく数値で、比べて味わうと硬水の中にも幅があることが分かります。逆に南太平洋のフィジーウォーターは硬度106mg/Lと、エビアンよりずっと軟らかい水です。
ちなみに、水の個性の違いは名水に限った話ではありません。国や地域が変われば水道水の水質も変わります。海外の水道水事情をまとめた世界の水道水の記事と合わせて読むと、飲み慣れた日本の軟水がけっして世界の当たり前ではないことがよく分かります。

まとめ
エビアンの源泉について、公式サイトと公的資料から分かることを整理しました。
- ・水源は「世界有数の自然保護区であるフレンチアルプスの一部、標高850メートルに位置する台地」にある(公式FAQの表現)
- ・公的資料では、涵養域はレマン湖南岸のガヴォ高原(標高600〜1,000メートル・涵養は800〜1,200メートル帯)で、水は20年以上かけて氷河期の地層を通り、町なかのカシャの泉(水温11.6℃)に湧く
- ・硬度304mg/lの硬水で、pHは7.2。カルシウム8.0mg・マグネシウム2.6mg・ナトリウム0.7mg(いずれも100mlあたり)
- ・「EUのミネラルウォーターの基準により、ろ過や殺菌はおこなっておりません」と公式に明記されている
- ・アルプスに降った雨や雪が地層を浸透しながらミネラルを蓄え、処理不要の水として湧き出している
身近なペットボトルの中に、フレンチアルプスの台地と地層の物語が詰まっている——そう思って一口飲むと、いつものエビアンが少し違って見えるはずです。
当サイトでは世界の名水をシリーズで紹介しています。水源の仕組みという同じ物差しで読み比べていくと、それぞれの土地の物語が立体的に見えてくるはずです。
エビアンの水を飲んでみる
エビアンは日本では伊藤園が販売しており、Amazonでケース買いができます。硬度304mg/lの硬水を、まずは味の比較から試してみてはいかがでしょうか。
伊藤園 evian 500ml×24本
フレンチアルプス生まれの硬水(硬度304mg/l・pH7.2)。ろ過や殺菌をおこなわないナチュラルミネラルウォーターです(エビアン公式サイト・2026年8月調査)
Amazonで伊藤園 evian 500ml×24本を見る
硬水を毎日飲むかどうか
エビアンは硬度304mg/lの硬水です。日常的に飲む水として硬水を選ぶかどうかは、味の好みだけでなく淹れるものによっても変わります。
出典
一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)。リンクの到達性は2026年9月3日に確認しました。
- ・ARS Auvergne-Rhône-Alpes(フランス保健省 オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方保健庁)|Eaux minérales naturelles conditionnées en Auvergne-Rhône-Alpes(PDF)|オート=サヴォワ県の欄に「Evian|水源名 Cachat|採取地 Evian」の記載。フランスの公的機関がエビアンを天然ミネラルウォーターとして認め、その水源がカシャの泉であることの根拠
- ・BRGM(フランス地質調査所)系 地質遺産データシート RHA-74468|Aquifères des eaux minérales d’Evian et de Thonon(PDF)|涵養域の標高が800〜1,200メートル(ガヴォ高原の上部)であること、地下の滞留時間が20年超であること、重炭酸カルシウム・マグネシウム型の水質、湧出点がカシャの泉であること、飲泉場の建築年(1903年)の根拠
- ・ペイ・デヴィアン=ヴァレ・ダボンダンス自治体共同体(Communauté de communes Pays d’Evian Vallée d’Abondance)公式|La Source et la buvette Cachat|カシャの泉が年間を通じて11.6℃で湧き続けていること、1878年に医学アカデミーの承認を受けたこと、飲泉場の設計者(Jean-Albert Hébrard)の根拠
- ・フランス文化省 DRAC オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ|Evian-les-Bains (74), restauration générale de la Buvette Cachat|飲泉場ビュヴェット・カシャが1903〜1905年に建てられたこと、1986年4月26日に歴史的記念物に登録されたこと、修復工事(2023年12月完了)の根拠
- ・APIEME(エビアン天然ミネラルウォーター涵養域保護協会・涵養域13コミューンとメーカーで構成)|evian, un territoire et une eau unique|涵養域(アンプルビウム)が約35km²・標高600〜1,000メートル・13コミューンにまたがること、水が15年以上かけて氷河期の堆積物を通ること、泉の水温11.6℃の根拠
- ・APIEME|L’impluvium de l’eau minérale naturelle evian reconnu site RAMSAR et Natura 2000|涵養域が2008年9月にラムサール条約の登録湿地となり、Natura 2000の対象になっていることの根拠
- ・Nicoud G., Coddet E., Blavoux B., Dray M.(1993)|Les complexes détritiques de marge glaciaire active du Bas Chablais oriental : implications hydrogéologiques|Quaternaire 4(2-3), pp.69-76|DOI: 10.3406/quate.1993.1994|エビアンの鉱泉水の帯水層がガヴォ高原のヴュルム氷期の堆積物であること(査読誌の水文地質学論文)の根拠
- ・Evian Tourisme & Congrès(エビアン観光局)公式|Buvette Cachat|飲泉場ビュヴェット・カシャの所在地(19 rue Nationale)と、修復後の2026年の公開期間(6月21日〜9月20日)の根拠
- ・Haute-Savoie Mont-Blanc Tourisme(オート=サヴォワ県観光局)公式|Source Cachat|カシャの泉が町の中心で誰でも無料で汲める飲泉場として開放されていること、水温11.6℃の根拠
- ・エビアン公式サイト 日本語FAQ|硬度304mg/l、pH7.2、カルシウム8.0mg・マグネシウム2.6mg・ナトリウム0.7mg(100mlあたり)、「標高850メートルに位置する台地」「ろ過や殺菌はおこなっておりません」の記載(本文の数値と引用文の出所)
- ・evian(メーカー)フランス語公式サイト|1L 製品ページ(成分表)|1リットルあたりカルシウム80mg・マグネシウム26mg・ナトリウム6.5mg、pH7.2、15年のろ過の記載(100ml換算で日本語FAQの値と一致することの根拠)
参考サイト
自動取得ができず本文の根拠には用いていない資料(2026年9月3日確認)
- ・ラムサール条約事務局 RSIS|Site 1833 Impluvium d’Evian|涵養域のラムサール登録(2008年9月15日・3,275ha)の一次資料になりうるが、2026年9月3日時点でHTTP 418のため自動取得できず、本文の根拠には用いていない
- ・エビアン=レ=バン市(Ville d’Évian)公式|Patrimoine|カシャの泉と飲泉場の市の公式解説。2026年9月3日時点でHTTP 403のため自動取得できず、本文の根拠には用いていない
画像クレジット
この記事で使っている写真の出所です。CC BY/CC BY-SA の写真は、ライセンスの条件に従って撮影者・ライセンス名・元ファイルへのリンクを表示しています(自作の図版は除きます)。
- ・アイキャッチ:撮影:Lionel BELOT/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0
- ・本文1枚目:撮影:Ngdm/Wikimedia Commons/パブリックドメイン
- ・本文2枚目:撮影:Camster2/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0
- ・本文3枚目:撮影:Bernard Leprêtre/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.5
- ・本文4枚目:撮影:Florian Pépellin/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0
- ・本文5枚目:撮影:Florian Pépellin/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0
- ・本文6枚目:撮影:Florian Pépellin/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0