火山岩盤が磨く地下420mの水【世界の名水】済州サムダスー〜韓国〜

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韓国の南の海に浮かぶ火山の島、済州島(チェジュとう)。この島には、火山がつくった岩盤の層が長い年月をかけてろ過した水があります。済州特別自治道開発公社(JPDC)が製造するミネラルウォーター「サムダスー(三多水)」です。

本記事では、JPDCの公式サイト(日本語・韓国語)と、日本への輸入を手がけた丸紅株式会社のプレスリリースの記載に、済州特別自治道(漢拏山国立公園)と済州観光公社の公式資料、済州島の地下水を扱う査読論文で裏付けを加えて、サムダスーの水源・数値・土地の物語を整理します。

済州島の火山岩盤水(サムダスー)とは

先に結論です。サムダスーは次のような水です。

製造するJPDCは済州道政府が100%出資する公社で、日本への輸入は丸紅が手がけました(丸紅株式会社プレスリリース・2011年7月25日/2026年8月調査)。火山の島の地下水を、島の公社が汲み上げて瓶詰めする——済州島という土地そのものと結びついた水です。なお、サムダスーは「世界3大火山岩盤水」の一つと称されることもあります。

採水地・済州市朝天邑橋来里の橋来自然休養林。シダと広葉樹の森に雨がしみ込み、火山岩盤層の地下水になる
採水地・済州市朝天邑橋来里の橋来自然休養林。この森に降った雨が火山岩盤層にしみ込み、地下420mの取水井へ向かいます。写真:GROOT in jeju(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

水の数値・特徴:硬度18mg/Lの軟水

一次資料で確認できた数値を表1にまとめます。

※表中の硬度18mg/L・pH7.0〜8.0・成分値は丸紅プレスリリース(2011年)の記載、「18年」はJPDC公式の記載(JPDCは2001年の韓国地質資源研究院の研究によると説明)にもとづく値です。JPDC韓国語公式はpHを7.8と記載し、丸紅の同じ資料は「数百年の時をかけてろ過」と記すなど資料間に食い違いがあり、公的機関の公表資料および査読論文での一次資料の再確認を進めています(2026年9月3日時点で未確認)。

項目記載内容
採水地済州特別自治道済州市朝天邑橋来里山
水源漢拏山(標高1,950m)の火山岩盤層・地下420mからくみ上げ
ろ過(水の年齢)「地下420mの火山岩盤層が18年間かけてろ過」(JPDC公式)/「数百年の時をかけてろ過」(丸紅2011年)
硬度18mg/L(軟水)
pH7.8(JPDC韓国語公式)/7.0〜8.0(丸紅2011年)
処理方法単純ろ過と紫外線殺菌過程(JPDC公式)
ナトリウム(100mlあたり)0.45〜0.67mg
カルシウム(100mlあたり)0.24〜0.45mg
マグネシウム(100mlあたり)0.20〜0.38mg
カリウム(100mlあたり)0.15〜0.34mg
バナジウム(100mlあたり)0.7〜0.8µg
表1:サムダスーの数値・特徴。JPDC日本語公式サイトおよび丸紅プレスリリース(2011年7月25日)記載(2026年8月調査)

硬度18mg/Lは日本人になじみ深い軟水の領域

硬度18mg/Lという数値は、軟水の中でもかなり低い部類です。日本の水道水や国産の天然水の多くも軟水のため、サムダスーは日本人の口に慣れた飲み口の領域にある水だと言えます。軟水と硬水の違いや使い分けは軟水と硬水の違いの解説記事で、硬度という指標そのものの意味は硬度とは何かを解説した記事で詳しく整理しています。

JPDC公式サイトは、サムダスーを「バナジウムやシリカ等を含む弱アルカリ性の軟水」と紹介しています(JPDC日本語公式サイト・2026年8月調査)。バナジウムの含有量は表1のとおり100mlあたり0.7〜0.8µgです。なお、これらの成分は「含まれている」という事実のみを掲載します。体への効果には個人差や医学的な判断が関わるため、本記事では扱いません。

成分表は「100mlあたり」で読む

表1の成分数値は100mlあたりの表記です。水の成分は、商品ラベルでは100mlあたりで記載されることが多い一方、資料によっては1Lあたりで記載されることもあり、単位をそろえないと10倍の読み違いが起こります。他の水と比べるときは、まず単位を確認してから数値を並べるのが鉄則です。サムダスーの場合、ナトリウム0.45〜0.67mg・カルシウム0.24〜0.45mg(いずれも100mlあたり)という控えめな数値が、硬度18mg/Lという軟水らしさと対応しています。

「水の年齢18年」はJPDCが説明する数字

「18年間かけてろ過」という説明について、JPDCの韓国語公式サイトは「韓国地質資源研究院の研究(2001)によれば、済州サムダスーの年齢は18年」と説明しています(JPDC韓国語公式「삼다수 우수성 연구」・2026年9月3日確認)。ただし、この研究の原典を当サイトは確認できていません。また、日本への輸入元である丸紅の2011年のプレスリリースは同じ水を「数百年の時をかけてろ過された水」と記しており、資料間で食い違いがあります。済州島の地下水の年齢については、2026年に『Journal of Hydrology』誌で7年分の同位体・環境トレーサーの観測を統合した査読論文が公表されていますが、当サイトはその本文を確認できていないため、本記事では「18年」をJPDCの説明として紹介するにとどめます。

水源の漢拏山。ツツジが咲く高原の先に岩峰がそびえる
水源の漢拏山(標高1,950m)。ツツジの高原の先に岩峰がそびえます。写真:Korea.net / Korean Culture and Information Service (Jeon Han)(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 2.0

漢拏山と火山岩盤層——水源の仕組みと土地の物語

標高1,950m・韓国の火山がつくった島

済州島は火山活動によって生まれた島で、島の中央には標高1,950mの漢拏山がそびえています。火山の噴火が積み重ねた岩盤の層は、隙間の多い構造をしており、山に降った雨や雪解け水はこの層を少しずつ通り抜けながら地下へ浸み込んでいきます。

サムダスーの採水地は、済州特別自治道済州市朝天邑橋来里山。漢拏山の火山岩盤層を通った水を、地下420mからくみ上げています。JPDCの見学館の資料によると、取水井は1995年12月20日に橋来里の標高440m地点に地下420mの深さで開発され、1998年1月23日に朝天邑橋来里山70番地に工場が建てられました(丸紅プレスリリース/JPDC韓国語公式「제주 삼다수 탄생」・2026年9月3日確認)。処理はJPDC公式サイトによると「単純ろ過と紫外線殺菌過程」のみ。岩盤がろ過した水質を、できるだけそのまま届ける考え方です。

火山岩盤の層は、噴火のたびに積み重なった溶岩や火山灰でできており、内部には無数の隙間があります。この隙間を水が通り抜ける間に、自然のろ過が少しずつ進みます。仕組みとしては、約5,000年前の溶岩の層が水を育むアイスランドと同じですが、済州島ではJPDCの説明で18年という年月で地下420mに達しているとされる点が対照的です。島の大きさや地層の構造によって、水の「地下の旅」の長さは大きく変わります。

漢拏山国立公園・霊室コースの山腹。雲が流れ込む緑の高原
漢拏山国立公園・霊室コースの山腹。山にかかる雲が雨となり、火山岩盤層の地下水を育てます。写真:Basile Morin(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

ユネスコ世界自然遺産の島

水源の漢拏山一帯は、1970年3月24日に国立公園に指定されました。さらに2007年6月27日には、城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)・拒文岳溶岩洞窟群とともに「済州の火山島と溶岩洞窟群」として、韓国初のユネスコ世界自然遺産に登録されています(済州特別自治道 漢拏山国立公園公式・済州観光公社公式・丸紅プレスリリース・2026年9月3日確認)。火山がつくった地形と生態系が世界的に評価された島であり、その大地の内部を通ってきたのがサムダスーの水です。

島の公社がつくる「済州の水」

サムダスーを製造する済州特別自治道開発公社(JPDC)は、済州道政府が100%出資する公社です。丸紅の2011年のプレスリリースによると、サムダスーは当時の韓国内ペットボトル飲料水市場で50%以上のトップシェアを持つ、韓国を代表するミネラルウォーターでした(丸紅株式会社プレスリリース・2011年7月25日/2026年8月調査)。JPDCの日本語公式サイトは、2021年12月時点の市場占有率を約42.6%(ACニールセン)で1位と記しています。島の水資源を島の公社が管理し、その収益が地域に還元される仕組みも、この水の物語の一部です。

採水地と同じ済州市朝天邑にある咸徳海水浴場。ヤシの木と澄んだエメラルド色の海
採水地と同じ済州市朝天邑にある咸徳海水浴場。火山の島の海岸線です。写真:Hong Da Hyeon(Wikimedia Commons)/CC0

現地情報と楽しみ方

済州島は日本から近い海外リゾートとして知られ、漢拏山の登山や城山日出峰の景観など、火山地形を体感できる観光地が多い島です。済州観光公社の公式サイトによると、漢拏山は朝鮮半島の三大霊山の一つで、標高1,950mの韓国最高峰です(済州観光公社 VISIT JEJU 日本語公式・2026年9月3日確認)。韓国国内では、サムダスーはコンビニやスーパーで広く売られている定番の水として知られています。旅行の際に現地で手に取ってみるのも楽しみ方の一つですが、販売状況や観光施設の最新情報は現地・公式の案内で確認してください。旅先で飲んだ水を帰国後に取り寄せて飲み直すと、その土地の記憶と味が結びつく——名水にはそんな楽しみ方もあります。

日本国内では輸入品として購入できます。楽しみ方としては、次のような視点がおすすめです。

初めて試すなら、次の比較の仕方が分かりやすい方法です。

【手順1】サムダスーと国産の軟水(または普段の水道水)を、同じ温度にそろえます。温度が違うと味の印象が大きく変わるためです。

【手順2】同じ形のコップに注いで、交互に一口ずつ飲み、飲み口や後味の違いを確かめます。

【手順3】両方のラベルの硬度・成分表示を見比べて、自分が感じた印象と数値を照らし合わせます。

味の感じ方は人それぞれですので、飲み口の印象は実際に確かめてみてください。

朝天邑朝天里の史跡・燕北亭と朝天鎮城の玄武岩の石垣、その先の朝天港
朝天邑朝天里の史跡・燕北亭と朝天鎮城の玄武岩の石垣。その先に朝天港が見えます。写真:Nt(Wikimedia Commons)/CC0

日本の名水と並べてみると

火山の山麓に降った水が地層でろ過されて名水になる——この成り立ちは、日本の名水と驚くほど似ています。環境省の名水百選にも火山山麓の湧水が数多く選ばれており、軟水が中心という点もサムダスーと共通します。日本の名水の全体像は名水百選の解説記事で紹介しています。

一方、世界の名水と並べると個性の違いが見えてきます。アイスランドの氷河水は同じ火山の島の水でも約5,000年前の溶岩の層が育んだ泉の水ですし、ニュージーランドのテ・ワイコロププの泉は透明度で知られる湧水です。JPDCが「18年」と説明するサムダスーは、その中では「若い水」と言えるかもしれません。同じ火山性の水でも、島の大きさや地層の厚さで水の物語は大きく変わります。

また、国や地域が変われば、日常的に飲まれている水道水の水質も変わります。世界の水道水の傾向は世界の水道水の解説記事で整理しています。陸の地下水とは成り立ちがまったく異なる「海の名水」の例として、ハワイの海洋深層水の記事もあわせてどうぞ。

味の比較という観点でも、サムダスーは比較の基準に据えやすい水です。硬度18mg/L(丸紅)・pH7.8(JPDC)という数値が公表されているため、「この水より重く感じるか、軽く感じるか」という形で、他の水の印象を自分なりに整理できます。名水めぐりの最初の一本には、こうした数値の分かる水を選んでおくと、その後の味の比較の経験がずっと積み重ねやすくなります。

よくある質問

軟水ですか?硬水ですか?

硬度18mg/Lの軟水です(丸紅株式会社プレスリリース・2011年7月25日/2026年8月調査)。日本の水道水や国産天然水の多くと同じ軟水の領域にあり、日本人にはなじみやすい飲み口の分類です。

バナジウムが入っていると体に良いのですか?

本記事では「100mlあたり0.7〜0.8µgのバナジウムが含まれる」という事実のみを掲載しています。体への効果には個人差や医学的な判断が関わるため、当サイトでは扱いません。

日本ではどこで買えますか?

輸入品としてネット通販などで購入できます。Amazonでは2L×12本のケースが販売されています(次章のリンク参照)。販売状況や価格は変動するため、購入時に最新の情報を確認してください。

漢拏山・霊室コースの木道から見おろす緑の山腹と済州島の大地
漢拏山・霊室コースの木道から見おろす山腹と済州島の大地。写真:Basile Morin(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0

まとめ

確かな数値と土地の物語がそろった、東アジアを代表する名水の一つです。日本の軟水との味の比較の相手として、まず試しやすい一本と言えるでしょう。

済州島の火山岩盤水を飲んでみる

サムダスーは日本でも購入できます。Amazonでは2L×12本のケースが販売されています。

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漢拏山の火山岩盤層がろ過した硬度18mg/Lの軟水(pH7.8)(JPDC日本語公式サイト・丸紅プレスリリース/2026年8月調査)
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軟水をどう使うか

サムダスーは硬度18mg/Lで、軟水のなかでもかなり低い部類です。やわらかい水は用途によって向き不向きがあり、家庭での使い方は次の記事で扱っています。

出典

一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)。リンクの到達性は2026年9月3日に確認しました。

参考サイト

自動取得ができず本文の根拠には用いていない資料、および書誌情報のみを確認した資料(2026年9月3日確認)