静かな水面に水滴が落ちて王冠状のしぶきが立ち、同心円の波紋が広がっている様子

空気製水(AWG)が向く施設・慎重に検討すべき施設|5つの判断軸

「空気から水をつくる装置(AWG)を、うちの施設に入れるべきか」。この問いに、カタログの製水量だけで答えを出すのは難しいものです。同じ機種でも、置く場所と使い方によって、1日に採れる水の量も、1リットルあたりのコストも変わってしまうからです。

この記事は仕組みの解説ではありません。自施設に向いているかどうかを、どの順番で、何を見て判断すればよいかだけを扱います。結論を先に書くと、判断は「空気」「電源」「設置」「用途」「衛生」の5つの軸に分解できます。5つすべてに自施設の答えを書ける施設は向きやすく、どれかが空白のまま話が進んでいる施設は、いったん立ち止まって慎重に検討したほうがよい——というのがこの記事の立場です。

なお、本記事に出てくる数値は、メーカーが公表している仕様と、公的機関が公表しているデータに限っています。出典は記事末尾にまとめました。

結論:AWGは「水道の代わり」ではなく「入手経路をもう1本増やす装置」

導入検討がこじれるとき、原因はたいてい期待値の置き方にあります。「これがあれば水の心配がなくなる」という位置づけで話が始まると、必要な水量・電源・設置条件・衛生管理のどれかが足りなくなります。

一方、「既存の水源が使えないときに、限られた用途だけを支える2本目の経路」という位置づけなら、条件を満たしやすくなります。用途を絞れば必要な製水量が下がり、必要な電源も設置スペースも現実的な範囲に収まるからです。向く/慎重に検討すべきを分けるのは、施設の規模や業種ではなく、この位置づけを決めたうえで5つの軸に具体的な答えを用意できているかです。

前提:仕組みそのものは別記事で

空気製水は、空気を取り込んで冷やし、結露した水を集めてろ過する——除湿機と考え方の近い装置です。本記事は判断軸に集中するため、装置の中で何が起きているかは扱いません。仕組みから知りたい方は、空気製水(AWG)の仕組みと、水ができるまでの流れを先にお読みください。ここから先は「原理はだいたい分かった。では、うちに合うのか」という段階の話です。

判断軸① 空気:温度と湿度が、通年でどう動くか

空気製水機の定格条件と製水量を比べた図。エアリスAL-21000は25℃・湿度60%で14L/日、30℃・湿度60%で17.7L/日、ベルウォーターBW-1500Wは30℃・湿度90%で15L/日。AL-21000には生産終了機種の注記を添えている。定格条件は高温多湿に置かれており、実際の設置環境では条件から外れることを示す
メーカーが公表する定格条件は高温多湿に置かれている(AL-21000=メーカープレスリリース、AL-22000=エアリス公式、BW-1500W=グリーンコア・テック公表仕様)

定格条件は「25〜30℃・相対湿度60〜90%」に置かれている

カタログの製水量には、測定条件が添えられています。各社が公表している定格条件を並べると、傾向がはっきりします。

以下、本記事に挙げる製品の仕様値(製水量・定格条件・消費電力・寸法・質量・フィルター交換周期)は、いずれも2026年7月時点で各社が公表しているものです。製品仕様は改訂されることがあるため、実際の検討では最新の公表値をご確認ください。

機種(メーカー)定格条件その条件での製水量
エアリス AL-21000(アクアテック/生産終了機種)25℃/相対湿度60%14L/日
エアリス AL-21000(同上)30℃/相対湿度60%17.7L/日
エアリス AL-22000(同上/現行機)27℃/相対湿度60%12L/日
ベルウォーター BW-1500W(グリーンコア・テック)30℃/湿度90%15L/日(最大)
AQUAM AQ-200(アクアム)気温27℃/湿度60%200L/日(8L/時)
AQUAM AQ-1000(同上)気温27℃/湿度60%1,000L/日(40L/時)
各社の公表資料より作成。いずれも2026年7月時点で確認した公表値。AL-21000の2件のみ、製品ページではなくメーカーのプレスリリース(発表日2022年11月22日)に記載された数値

注目したいのは、同じエアリス AL-21000 が、25℃で14L/日、30℃で17.7L/日と公表されている点です。湿度は同じ60%のまま、気温が5℃違うだけでメーカー自身が異なる数値を出しています。「定格L/日」は装置そのものの固定的な能力ではなく、特定の空気条件とセットで初めて意味を持つ数字だということです。

なお、この AL-21000 はすでに生産終了となっている機種で、現行機は同社の AL-22000 です(アクアテックの製品ページに「生産終了」と記載)。温度による違いを1機種の中で確認できる公表値が他に見当たらないため、条件と製水量の関係を示す例としてここに挙げています。導入検討では現行機の仕様をご確認ください。

各社の定格条件は、おおむね25〜30℃・相対湿度60〜90%——日本の年間の平均的な環境というより、夏に近い空気に置かれています。

「湿度が高い=水が採れる」とは限らない

相対湿度は「その気温で空気が抱えられる水蒸気の上限に対して、いま何%入っているか」を表す割合です。気温が低ければ上限そのものが小さいので、相対湿度が高くても、実際に空気の中にある水蒸気の量は少ないことがあります。気象庁は、この「実際にある水蒸気の量」を蒸気圧(hPa)として平年値で公表しています。

地点・月平均相対湿度平均蒸気圧(実際の水蒸気量の指標)
東京・1月51%4.5 hPa
長野・1月79%4.7 hPa
東京・8月74%26.2 hPa
気象庁「過去の気象データ検索」平年値(統計期間1991〜2020年)より作成

長野の1月は相対湿度79%で、東京の1月(51%)より28ポイント高い。ところが蒸気圧は4.7 hPa と 4.5 hPa でほとんど変わりません。「湿度が高い土地だから採れそう」という直感は、冬にはあてはまらないということです。同じ東京の中でも、8月の26.2 hPa に対して1月は4.5 hPa。同じ場所でも、冬は夏の5分の1程度の水蒸気しかない計算になります。夏の試運転で満足のいく結果が出ても、冬に同じとは限りません。

背景にあるのは、空気が抱えられる水蒸気の量が気温で決まるという性質です。気象庁『気象観測の手引き』は「空気中に含まれる水蒸気量は温度によって存在しうる最大量が決まっており」「飽和蒸気圧は……温度が高くなるにつれ急激に大きくなる」と説明しています。

空調の効いた室内も、定格条件の下限側に寄りやすい

屋外の話だけではありません。建築物衛生法の対象となる特定建築物(おおむね延べ面積3,000平方メートル以上の事務所・店舗など。学校教育法第1条の学校は8,000平方メートル以上)では、室内の空気環境について温度18℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下という管理基準が定められています。つまり、きちんと管理された執務室でも相対湿度は40%まで下がりうる範囲で運用されており、メーカーの定格条件(相対湿度60%〜)の下限よりさらに低い側です。「屋内に置くから安定するはず」とは言い切れません。

確かめ方:いちばん乾く季節に、実際に測る

判断軸② 電源:平常時と非常時、2つの計画があるか

規模によって必要な電源はまったく違います。家庭・小規模オフィス向けにはAC100Vで動く機種がある一方、大型機は三相200Vや220〜440Vが前提です。アクアムのAQ-200は200V三相・定格入力18.5A、AQ-1000は200V三相・24kW(暫定値)。アクアテックの産業用大型機(AL PRO 10000)は消費電力10〜12kW、電源220〜440V、重量700kg超と公表されています(いずれも2026年7月時点の公表値)。分電盤に空き回路があるか、受電容量に余裕があるかが埋まっていない場合、装置本体より電気工事のほうが検討の主戦場になります。

電気代は「1リットルあたり何kWhか」から組み立てる

月額いくら、という数字だけでは判断できません。稼働時間の前提が違えばいくらでも変わるからです。公表仕様から次の式を出しておくと比較しやすくなります。

製水時の消費電力(kW)× 24時間 ÷ 定格条件での製水量(L/日)= 1リットルあたりの電力量(kWh/L)

公表仕様を当てはめた試算が下の表です。いずれも定格条件で24時間連続製水した場合の計算値であり、メーカーが公表している数値ではありません。電気料金は、家電公取協が公表する電力料金の目安単価31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定)を使いました。法人の契約単価はこれと異なります。

機種公表仕様試算 kWh/L試算 円/L
エアリス AL-22000製水時400W/12L/日(27℃・60%)約0.80約25円
ベルウォーター BW-3000W総消費電力600W/30L/日(30℃・90%)約0.48約15円
AQUAM AQ-100024kW(暫定)/1,000L/日(27℃・60%)約0.58約18円
AL PRO 1000010kW/800L/日(条件の記載なし)約0.30約9円
2026年7月時点の公表仕様からの試算値(24時間連続製水を仮定・31円/kWh)。実際の値は稼働率と設置環境で変わります

この表で押さえたいのは、分母の「L/日」が定格条件の値だという点です。実際の設置環境が定格を下回れば製水量は小さくなり、分母が小さくなれば1リットルあたりの電気代は上がります。「乾く季節ほど、水は採れにくく、単価は上がる」という関係を、あらかじめ見込んでおく必要があります。

断水対策として導入するなら、停電が重なる可能性も織り込みます。非常用発電機や蓄電池があっても、限られた電力を何に回すかの優先順位が決まっていなければ、非常時に製水へ電気が回るとは限りません。非常用電源の系統にこの装置は含まれているか、誰がどの手順でつなぐのか、待機運転と製水運転のどちらを想定しているのか——ここまで決まっているかを確認します。

判断軸③ 設置:排熱・騒音・スペース・給排水・保守

仕組み上、空気製水は空気を冷やす装置です。除湿機やエアコンと同じく、室内に熱を出し、空気を乾かします。夏場は空調の負荷を増やす方向に、冬場は室内をさらに乾かす方向に働く可能性があります。大きさと重さも見落とせません。小型機でもエアリス AL-22000 は高さ1,327mm・約78kg。大型機には380kgや700kg超の機種があり(いずれも2026年7月時点の公表値)、床の耐荷重、搬入経路、扉幅、エレベーターの制限が現実の制約になります。

判断軸④ 用途:飲用か、非飲用か

4つ目の軸が、実は判断をいちばん大きく左右します。飲用に使うのか、清掃・手洗い・トイレなどの非飲用に使うのかで、必要な水量も求められる管理も変わるからです。非飲用から始める設計は条件を満たしやすく、飲用として提供する場合は次の軸(衛生と記録)の要求がそのまま乗ってきます。

とくに、乳幼児、高齢者、妊娠中の方など、水の選び方に配慮が必要な方が利用する施設では、提供する水の管理をより慎重に設計したいところです(関連:妊娠中の水の選び方)。用途を決めるときは「1日に何リットル必要か」を先に置くと話が早くなります。用途を絞れば必要量が下がり、判断軸①の「条件の悪い季節でも足りるか」を満たしやすくなります。

判断軸⑤ 衛生と記録:誰が、どの頻度で、どこに確認するか

最後の軸は、装置ではなく組織の話です。フィルター交換やタンク清掃が特定の担当者の熱意に依存していると、その人が異動した時点で管理が止まります。当番制でも回るチェックリストと記録の様式、外部保守との責任分界点まで設計できているかどうかが5つ目の軸です。

空気製水でつくった水が制度上どう扱われるかは、施設の種類と用途によって変わり、この記事で一律に断定できるものではありません。導入前に所管の保健所・自治体へ確認することを前提としたうえで、参考として関係しうる制度を整理します。

制度定めていること(抜粋)
水道法の水質基準「水質基準に関する省令」で52項目の基準値を規定(令和8年4月1日施行・環境省所管)。水質の物差しとして参照されることが多い
建築物衛生法(特定建築物)飲料水の水質検査を6か月以内ごとに1回。遊離残留塩素は毎日測定(平常時0.1mg/L以上)。貯水槽の清掃は1年以内ごとに1回
食品衛生法(食品営業施設)水道水以外の水を使う場合、新規許可申請時に26項目、その後は年1回以上10項目の水質検査を求める運用(自治体により差がある)
環境省・東京都健康安全研究センター・静岡県の公表資料より作成。適用の可否は所管窓口へご確認ください

ここで確認したいのは、条文そのものより「自施設の場合、誰に聞けばよいかが分かっているか」です。相談先が決まらないまま機種選定に入ると、後戻りが大きくなります。

5つの判断軸を、上から順に通す

空気製水の導入可否を判断するフロー図。1空気(設置場所の温度・湿度は通年で定格条件に近いか)、2電源(平常時と非常時の電源計画)、3設置(排熱・騒音・スペース・給排水)、4用途(飲用か非飲用か)、5衛生(水質確認と記録の担当・頻度・相談先)の順に確認し、5つに答えが用意できれば向きやすい、空白が残れば慎重に検討と結論づける
5つの判断軸を上から順に通して、自施設の答えを埋めていく

そのまま会議に持ち込めるよう、チェックリストにしておきます。空欄が残った項目が、そのまま「慎重に検討すべき点」です。

向きやすい施設と、慎重に検討すべき施設

「空気製水(AWG)は万能ではない」と題し、向きやすい施設と慎重に検討する施設を左右に並べた図。左は空気が暖かく湿っている・電源と設置条件に余裕がある・用途を絞って補完に使う、右は冬に空気が乾く地域・電源や排熱や騒音が窮屈・水道の全量置き換えが前提
施設の状態に言い換えた要約。軸ごとの詳しい対応は下の表にまとめた

5つの軸を施設の状態として言い換えると、次のようになります。右列に当てはまるからといって導入できないという意味ではありません。そこが埋まるまで機種選定に進まないほうがよい、という意味です。

判断軸向きやすい施設慎重に検討すべき施設
①空気通年で空気が比較的暖かく湿っている。実測データを持っている冬に空気が乾く内陸・太平洋側・寒冷地。実測せず定格値で計算している
②電源必要な電圧・容量に余裕があり、非常時の優先順位も決まっている分電盤・受電容量に余裕がなく、停電時は「その時考える」ままになっている
③設置排熱・騒音・搬入経路・保守スペースを実地で確認済み置き場所ありきで、排熱と騒音の検討が後回しになっている
④用途非飲用など用途を絞り、必要量を数字で置いている水道の全量置き換えが前提。必要量が数字になっていない
⑤衛生・記録担当・頻度・様式が仕組みになっており、相談先も把握している特定の個人の熱意に依存し、記録が続かない。相談先が未定

施設タイプ別に、とくに確認しておきたいこと

施設タイプ詰まりやすい軸と、確認しておきたいこと
オフィス①② 小規模テナントは単相100Vのみで、大型機を置けないことが多い。増設可否をビル管理会社に先に確認する
工場・倉庫③ 電源容量には余裕があることが多い一方、粉じん・油分・においなど取り込む空気の質を確認したい
学校③⑤ 授業中の騒音、長期休暇で水が滞留する期間の扱い、当番制で回る記録の仕組み
病院・介護施設④⑤ 感染対策の動線を妨げない設置場所か。夜勤帯を含む当番で保守が回るか
飲食店・給食施設④⑤ 食品衛生法の運用にかかわるため、所管の保健所への事前確認が要になる
屋外・イベント・建設現場②③ 夏場は空気の条件が良い一方、電源の確保、防水・防じん、移動時の重量が制約になる
離島・山間部①③ 給水車が入りにくい地域ほど価値が出やすい。保守要員が到着するまでの時間も見込む
寒冷地・内陸① 通年で使う前提か、暖候期に限る前提かを最初に決める。後者なら冬季の代替水源とセットで設計する

次の一歩:検討の順番を間違えない

空気製水の導入検討ステップの工程図。1目的を決める、2環境を測る、3条件を確かめる、4用途と衛生を決める、5年額で比べる、の順に矢印形の帯で並べ、カタログを集めるのは最後でよいことを示す
検討の順番。カタログを集めるのは、いちばん後でよい

「うちには向いているかもしれない」と感じたなら、次にすることはカタログを集めることではありません。順番はこうです。

  1. 1. 目的を決める:何を・どこまで・どのくらいの期間、水を確保したいのか
  2. 2. 環境を測る:設置候補地の温度と湿度を、季節をまたいで記録する
  3. 3. 条件を確かめる:電源、排熱、騒音、スペース、給排水、保守の受け入れ先
  4. 4. 用途と衛生を決める:飲用か非飲用か。水質確認と記録の体制、行政への相談
  5. 5. 年額で比べる:本体・工事・電気・保守・フィルターを合算して比較する

1と2を飛ばして5から入ると、比較の前提が決まらないまま見積書だけが増えていきます。逆に1と2さえ手元にあれば、メーカーへの問い合わせは「この条件で何リットルですか」という一文で済みます。装置そのものの理解を補いたい場合は、空気製水(AWG)の仕組みもあわせてご覧ください。

この記事について

最終更新:2026年7月29日/製品仕様・制度の記載は同日時点で公表されている内容にもとづきます。仕様や基準は改定されることがあるため、実際の検討では最新の一次情報をご確認ください。本記事は特定の製品・メーカーを推奨するものではありません。「試算」と明記した数値は、公表仕様から編集部が計算したものです。

執筆・編集:水のソムリエ編集部(運営責任者・編集長プロフィール

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