データセンターは夏どれだけ冷やしにくくなる?冷却度日という見方
データセンターは1年じゅう機械を冷やしています。ただし「冷やしにくさ」は季節で変わります。外が寒ければ外の空気で冷やせますが、暑ければ設備をよけいに働かせるしかありません。この「冷やしにくさ」を1つの数字で表す道具が冷却度日(れいきゃくどにち)です。この記事では、その定義と読み方、日本での実際の値、そしてこの数字で言えないことを整理します。
先に要点をまとめると、次の3点です。
- ・冷却度日は「その日の平均気温が基準温度を何度上回ったか」を足し上げた数字です。当社の観測では基準を18.3℃(=65°F)としています
- ・当社の観測(東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の5地点平均)では、2026年8月の日平均が9.66、9月1〜8日の日平均が6.45でした(当社集計・2026年9月9日取得)
- ・気象庁の平年値から当社が試算すると、冷却度日は6月から9月に集中し、都市によって年間で5倍前後の差があります。ただし「冷却度日が上がれば水を多く使う」とは言えません(当社はその因果を観測していません)
順番に見ていきます。
冷却度日とは何か
冷却度日(Cooling Degree Days・CDD)は、冷房の必要量をおおまかに表すために使われてきた指標です。計算はとても単純です。
CDD = max(0, その日の平均気温 − 基準温度)
平均気温が基準を下回った日は0として扱い、上回った日だけ超過分を数えます。当社が姉妹サイト「AIライフライン」のデータセンター章で観測している系列は、基準温度18.3℃、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の5地点平均、1日1回という条件です(AIライフライン データセンター章 定義書v1.0・2026年9月9日確認)。
| 項目 | 当社の観測条件 |
|---|---|
| 計算式 | max(0, 日平均気温 − 18.3) |
| 基準温度 | 18.3℃(=65°F) |
| 地点 | 東京/大阪/名古屋/福岡/札幌の5地点平均 |
| 頻度 | 1日1回 |
| 元データ | 気象庁「過去の気象データ」からの自前計算 |
なぜ18.3℃という半端な基準なのか
18.3℃は華氏65度をそのまま摂氏に直した値です。当社がこれを採った理由は、定義書に明記してあります。米国の同じ指標(米国気候予測センターと同じ基準)と足して比較できるようにするためです。日本の省エネ法で使われる暖房度日の18℃ともほぼ同じ水準にあたります。
ここは読み違えやすい部分なので、定義書の但し書きも添えておきます。この系列は一般的な冷房デグリーデー(24℃基準)とは異なり、またASHRAE度日法や独自定義でもありません。基準温度が違えば数字はまったく変わるので、他所の「冷却度日」と並べるときは基準温度の確認が要ります。
日本の冷却度日は実際どのくらいか
当社の観測値(5地点平均・日次)を月ごとにまとめると、次のようになります。
| 期間 | 日数 | 1日あたりの平均 | 最大 | 最小 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年8月 | 31日 | 9.66 | 11.7(8月7日) | 7.8(8月12日・8月29日) |
| 2026年9月1〜8日 | 8日 | 6.45 | 8.8 | 4.4 |
8月は1日あたり9.66、9月に入って6.45——1か月で3割ほど下がっています。数字の意味は「5地点の平均気温が、18.3℃を1日あたり平均9.66度上回っていた」ということです。8月の5地点平均気温は、おおよそ28℃前後だったことになります。
ここで正直に書いておくと、この系列は観測を始めたばかりです。データセンター章の観測開始は2026年8月30日で、日次の値は2026年8月1日にさかのぼって取得しています。したがってこの観測値だけでは季節の一巡を語れません。そこで次の節では、気象庁の平年値から年間の形を試算します。
1年でみた冷却度日の形(当社試算)
気象庁が公表している平年値(1991〜2020年の30年平均)の月平均気温を使い、同じ5地点で max(0, 月平均気温 − 18.3) を計算しました。これは当社の試算であり、日ごとに計算して足し上げた実測値ではありません(この点は後述します)。
| 月 | 5地点平均気温(平年値) | 1日あたりの冷却度日(当社試算) |
|---|---|---|
| 1〜5月 | 4.0〜18.2℃ | 0 |
| 6月 | 21.8℃ | 3.46 |
| 7月 | 25.8℃ | 7.46 |
| 8月 | 27.0℃ | 8.66 |
| 9月 | 23.3℃ | 4.96 |
| 10〜12月 | 6.4〜17.6℃ | 0 |
形ははっきりしています。冷却度日は6月から9月の4か月に集中し、それ以外の月はこの計算ではほぼ0になります。ピークは8月です。
この試算の限界
表3を実測値として扱わないでください。理由は2つあります。
- ・月平均から計算すると過小になります。月の平均気温が18.3℃未満でも、その月の中には18.3℃を超える日があります。日ごとに計算すればその日は値が付きますが、月平均で計算すると0に潰れてしまいます。5月や10月が0になっているのは、この計算方法のせいです
- ・平年値は2026年の実際の気温ではありません。実際、当社の観測では2026年8月の日平均が9.66だったのに対し、平年値からの試算は8.66でした。差は1.00です。この差が「2026年の8月が平年より暑かった」ためなのか、「月平均から計算したことによる過小」なのか、その両方なのかは、この2つの数字だけでは分けられません
表3は「年間の形」を見るための道具として使い、水準はあくまで表2の実測を見るのが正しい読み方です。
同じ日本でも都市によって大きく違う
5地点の平均を出す前に、都市ごとの値も見ておきます。同じ方法(平年値の月平均気温から試算)で年間を合計すると、次のようになりました。
| 都市 | 年間の冷却度日(当社試算) | 8月の平均気温(平年値) |
|---|---|---|
| 大阪 | 約1,082 | 29.0℃ |
| 福岡 | 約1,027 | 28.4℃ |
| 名古屋 | 約944 | 28.2℃ |
| 東京 | 約770 | 26.9℃ |
| 札幌 | 約220 | 22.3℃ |
大阪と札幌では5倍近い開きがあります。同じ国の中でこれだけ違うのですから、「日本の冷却度日」という一つの数字は、5地点を混ぜた便宜的な指標にすぎません。当社が5地点平均を採っているのは、地域差を消すためではなく、1本の系列として毎日追い続けられるようにするためです。
冷やしにくさと水の関係——書けることと書けないこと
ここが、この記事でいちばん慎重に書きたい部分です。
冷却塔や、外気冷却に水の蒸発を補助的に使う方式では、水を蒸発させて熱を捨てます。査読誌 Communications of the ACM に採録された論文「Making AI Less “Thirsty”」は、この点について「暑い天候は蒸発による水の需要と最大の水消費量を高め、暑い日のピーク需要時に地域の水供給に負荷をかける可能性がある」と述べています(Li, Yang, Islam & Ren, arXiv:2304.03271v5・2026年9月9日確認)。
ただし、これは論文が述べていることであって、当社が観測して確かめたことではありません。当社の立場をはっきりさせておきます。
- ・データセンター章が言えないこととして宣言しているのは、国内データセンターの電力消費量・施設数・建設中の件数、変圧器の納期そのもの、そして冷却度日の水準が「良い・悪い」に当たるかです
- ・水章が言えないこととして宣言しているのは、各社の実際の水使用量やWUEの数値、そして国内データセンターが水源や地域の水供給に与える影響です
- ・つまり「冷却度日が上がると国内データセンターの水使用が増える」ことを、当社のどの章も観測していません。この記事もそう書きません
冷却度日が示すのは、あくまで気温の側の条件です。それが設備の運転や水の使用にどうつながるかは、冷却方式・設計・立地によって変わります。指標をひとつ持つことと、因果を語れることは別だ、というのがここでの線引きです。
自分で確かめるときの手順
- 1. 【手順1】気象庁「過去の気象データ検索」で、調べたい地点の日平均気温を取り出します
- 2. 【手順2】各日について max(0, 日平均気温 − 18.3) を計算します。18.3℃以下の日は0です
- 3. 【手順3】期間で足し上げます。月合計を出すときは、必ず日ごとに計算してから足します(月平均気温から計算すると小さく出ます)
- 4. 【手順4】他所の数字と比べるときは、基準温度をそろえます。18.3℃基準と24℃基準の値は、そのままでは比較できません
まとめ
- ・冷却度日は max(0, 日平均気温 − 基準温度) を足し上げた指標です。当社は基準18.3℃(=65°F)、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の5地点平均で毎日観測しています
- ・当社の観測では、2026年8月の日平均が9.66(最大11.7・最小7.8)、9月1〜8日の日平均が6.45でした
- ・気象庁の平年値からの試算では、冷却度日は6月から9月に集中し、8月がピークです。ただし月平均から計算しているため実測より小さく出ます
- ・都市別の年間値(同じ試算)は大阪約1,082、札幌約220で、5倍近い差があります
- ・冷却度日と水使用の因果関係は、当社のどの章も観測していません。この指標が示すのは気温の側の条件だけです
指標は答えではなく、問いを立て直すための道具です。冷却度日は「暑さ」という漠然としたものを1本の線にしてくれますが、その線から何が言えるかは、また別に確かめていくことになります。
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出典
一次資料(政府機関の公表データ、当社の観測データおよび査読論文)
- ・AIライフライン|データセンター章|冷却度日の定義(max(0, 日平均気温−18.3) の5地点平均・1日1回)、基準18.3℃=65°Fを採った理由(米国版と足して整数比較を可能にするため。省エネ法の暖房度日18℃とほぼ同水準)、一般的な冷房デグリーデー(24℃基準)やASHRAE度日法とは異なる旨、観測開始日(2026年8月30日)、およびこの章から言えないこと|確認日2026年9月9日
- ・AIライフライン|データセンター章 機械可読データ(datacenter_jp.json)|表2の日次系列の原データ(2026年8月1日〜9月8日)。表2の月別平均・最大・最小は当社がこの日次系列から集計|取得日2026年9月9日
- ・気象庁|過去の気象データ検索|表3・表4に用いた東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の月平均気温の平年値(1991〜2020年の30年平均)。表3・表4の冷却度日はこの平年値をもとに当社が計算した試算値|取得日2026年9月9日
- ・Pengfei Li, Jianyi Yang, Mohammad A. Islam, Shaolei Ren「Making AI Less “Thirsty”: Uncovering and Addressing the Secret Water Footprint of AI Models」arXiv:2304.03271v5(Communications of the ACM 採録)|暑い天候が蒸発による水の需要と最大の水消費量を高め、暑い日のピーク需要時に地域の水供給に負荷をかける可能性があるという記述|2025年3月26日改訂・確認日2026年9月9日
- ・AIライフライン|水章 機械可読データ(water_jp.json)|水章が「国内データセンターが水源や地域の水供給に与える影響」を観測対象外と宣言していること|確認日2026年9月9日
冷却度日は日次で更新される系列です。本文の集計値は2026年9月9日に取得した時点のもので、最新の値は上のリンク先でご確認ください。