WUE(水利用効率)とは?PUEとの違いと、開示している会社の数
データセンターの水の話を調べていると、必ず出てくるのが「WUE」という3文字です。電力の効率をあらわす「PUE」と並べて使われますが、何を何で割った数字なのかは、あまり説明されないまま登場します。この記事では、WUEの定義と計算式、PUEとの違い、そしてこの数字を実際に公開している会社が何社あるのかを、公式の一次資料だけで整理します。
先に要点をまとめると、次の3点です。
- ・WUE(Water Usage Effectiveness)は、1年間に加湿と冷却に使った水の量(L)を、IT機器を動かすのに使った1年間の電力量(kWh)で割った値です。単位はL/kWh。この計算式は Microsoft 1社の公式ページで確認したものです(2026年9月7日確認・理由は本文で説明します)
- ・PUEは電気を電気で割った比率で単位がありません。WUEは水を電気で割るので単位が付きます。似た形の指標ですが、割っているものが違います
- ・当社が観測している大手クラウド・データセンター事業者15社のうち、WUEの数値まで開示しているのは4社です(2026-08-21確定・AIライフライン 水章)
順番に見ていきます。
WUE(水利用効率)とは:水を電力で割った数字
WUEは Water Usage Effectiveness の頭文字で、日本語では「水利用効率」と訳されます。データセンターが電力1kWhを使うあいだに、どれだけの水を使ったかを示す指標です。
Microsoftは自社データセンターの公式ページで、WUEの計算方法を次のように説明しています。1年間に加湿と冷却のために使った水の量(リットル)を、IT機器に電力を供給するために使った1年間の電力量(kWh)で割る——これがWUEです。単位はリットル毎キロワットアワー(L/kWh)になります(Microsoft「Measuring energy and water efficiency for Microsoft datacenters」・2026年9月7日確認)。
この定義をどこで確認したか
上の計算式は、Microsoft 1社の公式ページで確認したものです。WUEという指標そのものの出どころについて、当社が確認できたことと確認できなかったことを、先に分けて書いておきます。
- ・提唱したのは業界団体 The Green Grid です。同団体の公式ライブラリに、2011年3月1日公開の白書「WP#35 – Water Usage Effectiveness (WUE): A Green Grid Data Center Sustainability Metric」が登録されており、そのページには同団体がこの新しい指標を提唱するものだと書かれています(2026年9月8日確認)。ただし白書の本文はサインインしないと入手できず、当社は本文を読んでいません
- ・国際規格としては ISO/IEC 30134-9:2022「Information technology — Data centres key performance indicators — Part 9: Water usage effectiveness (WUE)」(2022年3月24日発行・全19ページ)があります。規格が存在することと書誌情報は、IECの公式ストアの当該ページで確認しました(2026年9月8日確認)。ただし規格本文は有償で、当社は条文を読んでいません
- ・したがって、この記事に載せた計算式はThe Green Grid の白書や ISO/IEC の規格の条文ではなく、Microsoft 1社の公式ページの説明です。各社が同じ定義・同じ集計範囲で計算しているかどうかまでは、当社は確認できていません
分子と分母に何が入っているか
- ・分子(水):加湿と冷却に使った水。1年間の合計をリットルで数えます
- ・分母(電気):IT機器を動かすために使った電力量。1年間の合計をkWhで数えます
ここで一度立ち止まっておきたいのは、分子に入るのは「その施設で加湿と冷却に使った水」だけだという点です。式の定義がそうなっている以上、電気をつくる過程(発電所)で使われた水は、この数字には入っていません。WUEは「データセンターという建物が、冷やすために使った水」を測る指標だと理解しておくと、読み違えが減ります。
PUEとの違い:割っているものが違う
WUEとよく並べて出てくるのがPUE(Power Usage Effectiveness/電力使用効率)です。Microsoftの同じページによれば、PUEは施設全体に必要な電力量を、コンピューティングに使った電力量で割った値で、1に近いほど効率が良いとされています(Microsoft公式・2026年9月7日確認)。
2つを並べると違いがはっきりします。
| 指標 | 分子 | 分母 | 単位 |
|---|---|---|---|
| PUE(電力使用効率) | 施設全体に必要な電力量 | コンピューティングに使った電力量 | なし(比率) |
| WUE(水利用効率) | 加湿・冷却に使った水の量(L) | IT機器に使った電力量(kWh) | L/kWh |

PUEは電気を電気で割るので単位が消え、「1.2」「1.5」といった比率になります。一方WUEは水を電気で割るため、L/kWhという単位が残ります。同じ「効率」という言葉が付いていても、数字の性格は別物です。PUEが1に近づくほど良いという読み方は、WUEにはそのまま当てはまりません。
なお日本では、省エネ・非化石転換法にもとづくデータセンター向けの新しい措置が2026年4月に施行され、PUEの報告・公表などが始まっています。制度の中身は別の記事で扱っています(データセンターの冷却水問題とAI時代の水)。この制度で報告が求められているのは電力の指標であり、水の指標ではありません。
WUEの数字だけでは分からないこと
WUEは分かりやすい数字ですが、会社どうしを単純に比べる用途には向きません。理由は公式ページ自身が説明しています。
MicrosoftはPUEとWUEについて、数値に影響する変数の多くはデータセンターの立地に関係すると述べ、その例としてその地域の気候の湿度と気温を挙げています。さらにWUEについては、立地がより乾燥しているか湿潤であるかが影響する変数の例として書かれています(Microsoft公式・2026年9月7日確認)。
- ・立地の気候で変わる:乾燥した土地と湿潤な土地では、同じ設備でも数字が変わりうる
- ・冷やし方の選択で変わる:水を多く使って電気を減らすのか、電気を多く使って水を減らすのかは、設計上の選択です。WUEが小さいことが、そのままエネルギー効率の良さを意味するわけではありません
- ・集計の範囲で変わる:全社の平均値なのか、地域ごとの値なのか、いつからいつまでの1年なのか。公表のしかたは会社ごとに違います
つまりWUEは、同じ会社の同じ拠点を年ごとに追いかけるには使えますが、条件の違う会社どうしを1つの数字で並べて優劣を語るには向いていない、ということです。
では、WUEを公開している会社は何社あるのか
ここからが本題です。当社は姉妹サイト「AIライフライン」で、大手クラウド・データセンター事業者15社の水に関する開示状況を月次で確認し、公開しています。確認しているのは開示があるかどうかと、その開示レベルだけで、各社の数値そのものは扱いません(理由は後述します)。
2026年8月21日に確認した時点の内訳は、次のとおりです。
| 開示レベル | 社数 |
|---|---|
| WUEの数値まで開示 | 4社 |
| 取水量・総量を開示 | 7社 |
| 方針・目標のみ | 0社 |
| 開示なし・確認できず | 4社 |
| 合計 | 15社 |
15社のうち、WUEという指標の数値まで出しているのは4社でした。取水量や総量までは出しているが、WUEという形にはしていない会社が7社。当社が確認した範囲で水に関する開示を見つけられなかった会社が4社です。
各社の開示ページ
実際の中身は、各社の公式ページで確認できます。以下は当社が2026年8月21日に確認したときの開示ページです。
WUEの数値まで開示(4社)
- ・Microsoft(世界)|データセンターのエネルギー・水の効率
- ・AWS(Amazon/世界)|Water stewardship
- ・Meta(世界)|Water
- ・Equinix(世界)|Sustainability data summary
取水量・総量を開示(7社)
- ・Google(世界)|データセンターにおける責任ある水の使用
- ・Apple(世界)|Environment
- ・Oracle(世界)|Social Impact
- ・Digital Realty(世界)|Sustainability
- ・NTTデータグループ(国内)|サステナビリティレポート
- ・KDDI(国内)|ESGデータ(環境)
- ・ソフトバンク(国内)|ESGデータ
当社が確認した範囲では水の開示を見つけられなかった(4社)
この4社について補足します。ここに挙げたのは「開示していない」という断定ではなく、「当社が確認した範囲では見つけられなかった」という意味です。水の開示は各社の任意であり、公表の場所や形式も統一されていません。別の資料に記載がある可能性は残ります。
なぜ各社の数値を載せないのか
AIライフライン 水章は、観測するのは開示の有無のみで、各社の数値(WUE・取水量)は転載しないという方針を定めています。この記事もそれに揃えました。
- ・前の章で見たとおり、WUEは立地の気候で変わる数字です。条件の違う会社の数字を並べると、比較できないものを比較しているように見えてしまいます
- ・各社の数値は更新されます。転載した数字は古くなりますが、リンクなら常に各社の最新の公表を指せます
- ・開示が多いことが「良い」、少ないことが「悪い」という基準を、当社は定めていません。数えているのは事実の有無だけです
自分で確かめるときの手順
WUEの数字を自分で確かめたいときは、次の順序が分かりやすいでしょう。
- 1. 【手順1】上の一覧から、調べたい会社の公式ページを開きます。まとめサイトやニュース記事ではなく、その会社自身が出しているページから始めます
- 2. 【手順2】その数字がいつの1年間のものかを確認します。会計年度で区切っている会社が多く、暦年とはずれます
- 3. 【手順3】どの範囲の平均かを確認します。全世界の平均なのか、地域ごとなのか、特定の拠点なのかで意味が変わります
- 4. 【手順4】他社と比べたくなったら、立地の気候が近いかどうかを先に見ます。乾燥地と湿潤地の数字を並べても、設備の優劣にはなりません
まとめ
- ・WUEは「1年間に加湿と冷却で使った水(L)÷ IT機器の1年間の電力量(kWh)」で、単位はL/kWhです
- ・この計算式はMicrosoft 1社の公式ページで確認したものです。WUEを提唱したのは The Green Grid(2011年)、国際規格は ISO/IEC 30134-9:2022 ですが、どちらも本文の入手に制約があり、当社は条文を読んでいません
- ・PUEは電気を電気で割った比率で単位がありません。WUEとは割っているものが違い、「1に近いほど良い」という読み方はWUEには当てはまりません
- ・WUEは立地の気候に左右されるため、条件の違う会社を並べて優劣を語る使い方には向きません
- ・大手クラウド・データセンター事業者15社のうち、WUEの数値まで開示しているのは4社です(2026-08-21確定)。取水量・総量までが7社、当社が確認した範囲で見つけられなかったのが4社でした
「AIが水を使う」という話は大きな数字とともに語られがちですが、その数字がどう定義され、誰がどこまで公表しているのかを押さえておくと、報道や記事を落ち着いて読めるようになります。
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出典
一次資料(規格・標準化団体の公式ページ、各社の公式サステナビリティ情報、および当社の観測データ)
- ・Microsoft|Measuring energy and water efficiency for Microsoft datacenters|WUEの計算式(加湿・冷却に使った年間の水量÷IT機器の年間電力量)・単位L/kWh・PUEの計算式・「1に近いほど効率が良い」・数値に影響する変数が立地(気候の湿度と気温、乾燥/湿潤)に関係するという記述|確認日2026-09-07
- ・The Green Grid|WP#35 – Water Usage Effectiveness (WUE): A Green Grid Data Center Sustainability Metric|WUEを提唱した団体と白書の公開日(2011年3月1日)。白書本文はサインイン必須のため当社は取得していない|確認日2026-09-08
- ・IEC Webstore|ISO/IEC 30134-9:2022 Information technology — Data centres key performance indicators — Part 9: Water usage effectiveness (WUE)|WUEが国際規格として存在すること・発行日2022年3月24日・全19ページという書誌情報。規格本文は有償のため当社は条文を読んでいない|確認日2026-09-08
- ・AIライフライン|水章|大手クラウド・データセンター事業者15社の水開示レベル別の社数(WUE 4社/取水量・総量 7社/方針・目標のみ 0社/開示なし・確認できず 4社)と、各社の開示ページの所在|確定日2026-08-21・確認日2026-09-07
- ・AIライフライン|水章 機械可読データ(water_jp.json)|上記の社数と各社リンクの原データ、および「各社の数値は転載しない」という観測方針|確認日2026-09-07
本文中で各社の開示ページとして挙げたリンクは、AIライフライン 水章が2026年8月21日に確認した時点のものです。各社の公表内容は更新されるため、最新の状態は各リンク先でご確認ください。
データ出典:AIライフライン 水章
この記事で扱った「WUEを何社が開示しているか」は、当社が運営する定点観測サイト「AIライフライン」の水章から引用しています。引用するのは確定日の付いた値だけで、暫定値は使いません。
- ・WUE数値まで開示している事業者数:4社(2026-08-21 確定)
- ・内訳(同章の記載):2026-08-21 確認時点で、大手15社のうち4社です。取水量・総量レベルの開示は7社、方針・目標のみ0社、開示なし・確認できず4社。
- ・出典:AIライフライン 水章(確定日 2026-08-21)
- ・機械可読データ:water_jp.json
- ・この章は観測中で、良否の基準は定めていません。数値の増減が「良い・悪い」を意味するものとして引用しないでください
- ・この章から言えないこと:各社の実際の水使用量や WUE の数値(各社の数値は転載しない方針・2026-08-21 裁定)/国内データセンターが水源や地域の水供給に与える影響(取水量・水源の系列は観測していない)/開示している社数の多寡が「良い・悪い」に当たるか(開示は各社の任意であり、基準を定めていない)。
- ・次の更新予定:2026-09(更新のたびに確定日が進みます。引用時は上のURLで最新の確定日をご確認ください)