ペットに与える水の選び方
「ペットに与える水は、水道水でいいのでしょうか。それともミネラルウォーターのほうがいいのでしょうか」——犬や猫と暮らしていると、一度は迷う疑問です。人と同じ水でよいのか、専用の水を用意したほうがよいのか。この記事では、環境省が公開している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」の記載を一次の出所として、ペットに与える水の考え方を整理します。
はじめにお断りしておきます。本記事は、病気や体調について説明することを目的としたものではありません。公的なガイドラインに書かれていることと、書かれていないことを区別しながら、「水の選び方」という観点だけを扱います。体調が気になる場合は獣医師にご相談ください。
結論:公的ガイドラインが最重視するのは「いつでも新鮮な水」
先に結論です。環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」には、「いつでも新鮮な水が飲めるようにしてください。なお、人間用のミネラルウォーターは、マグネシウムなどのミネラルが多く含まれているものもあるため、犬や猫に与える場合は注意が必要です」と記載されています(環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」・2026年8月調査)。
この一文から読み取れることは2つあります。1つは、ガイドラインが第一に求めているのが水の「種類」ではなく「新鮮さ」だということ。もう1つは、人間用のミネラルウォーターについては、ミネラルが多く含まれているものもあるため注意が必要とされていることです。逆に、水道水を与えることそのものに注意を促す記載は見当たりません。
したがって本記事の結論は、「基本は水道水で問題ないという整理が一般的であり、公的なガイドラインが最も重視しているのは水の銘柄ではなく、いつでも新鮮な水が飲める状態を保つこと」となります。良い水を探すことよりも先に、器の水をこまめに新しくすること。順番としては、こちらが先です。

環境省ガイドラインが書いていること

「新鮮な水を常にフードのそばに」
同じガイドラインには、水を置く場所についての記載もあります。「新鮮な水を常にフードのそばに置いておきましょう」という一文です。水の器をフードの器とセットで考える、という置き方の案内といえます。
ここでも繰り返されているのは「新鮮な水」という表現です。ガイドラインの記載を通して見ると、水に関する要求は「新鮮であること」と「常にあること」の2点に集約されていることがわかります。何を与えるかよりも、どういう状態で用意しておくかに重心が置かれた書き方です。
人間用のミネラルウォーターについての注意
前掲の一文で注意が促されているのは、「人間用のミネラルウォーター」です。理由として挙げられているのは「マグネシウムなどのミネラルが多く含まれているものもあるため」という点でした。
ここで大切なのは、書かれている範囲を正確に受け取ることです。ガイドラインは「ミネラルウォーターを与えてはいけない」とも、「与えると特定の症状につながる」とも書いていません。書かれているのは、ミネラルが多く含まれているものもあるので注意が必要、という粒度です。本記事でも、ガイドラインに記載のない健康への影響については触れません。気になる点があれば獣医師にご相談ください。
実践に落とすなら、「ミネラルウォーターを与える場合は、その製品にどれだけミネラルが含まれているかを表示で確かめる」という行動になります。その手がかりになるのが、次に説明する「硬度」です。

必要な水分量は「フードの乾物量の約2.5倍」
ガイドラインには、必要な水分量についての記載もあります。「フードの乾物量(水分を除いた重量)の約2.5倍と言われています」という書き方で、あわせて、食べているフードの水分含量・気温・運動量などにも左右されるとされています(環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」・2026年8月調査)。
この記載で見落としたくないのが、水分量がフードの内容に左右されるという点です。ドライフードとウェットフードでは、フードから摂れる水分がそもそも異なります。同じガイドラインには体重別に1日の必要水分量を示した表も掲載されており、たとえば体重2kgの犬で190mLという値が挙げられています。具体的な数値は、ガイドライン本体でご確認ください。
水の「種類」よりも「量」と「新鮮さ」が先に来る、というガイドラインの姿勢は、この記載にも表れています。器が空のまま何時間も放置されていないか、暑い日に水が足りているか——確認すべきはまずそこ、という順番です。
水道水と「硬度」の基礎知識
硬度とは何を表す数字か
ガイドラインが「マグネシウムなどのミネラル」に触れていることから、水選びの手がかりとして役に立つのが「硬度」という指標です。硬度は、水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量をもとにした数値で、市販のミネラルウォーターではラベルや公式サイトに表示されていることがあります。硬度そのものの考え方は硬度とは何かを解説した記事で詳しく整理しています。
また、硬度の高い水・低い水は一般に「硬水」「軟水」と呼び分けられます。呼び分けの基準や、味・使い勝手の違いについては軟水と硬水の違いをまとめた記事をご覧ください。ミネラルウォーターの表示を読むときの前提知識として、先に押さえておくと迷いが減ります。
日本の水道水の硬度はどう管理されているか
水道水の硬度には、公的な基準があります。水道の水質基準は52項目からなり、硬度については「カルシウム、マグネシウム等(硬度)300mg/L以下」と定められています。さらに、水質管理目標設定項目では「カルシウム、マグネシウム等(硬度)10mg/L以上100mg/L以下」という目標が示されています(環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」・2026年8月調査)。
基準値と管理目標があるということは、蛇口から出る水の硬度が野放しではないということです。ミネラルウォーターの硬度が製品によって大きく異なるのに対し、水道水は基準の枠の中で供給されています。
なお、水道水には消毒のための塩素が含まれています。東京都水道局の解説では、「蛇口で検出される塩素の濃度(残留塩素濃度)を0.1mg/L以上保持するよう定められています(水道法施行規則第17条第3号)」と説明されており、快適性のための上限目標は1mg/L以下とされています(東京都水道局「塩素消毒」・2026年8月調査)。塩素の量についても、下限と上限目標の両方が管理されているということです。
硬度には地域差がある
同じ水道水でも、硬度は地域によって差があります。基準の範囲内という前提は共通していますが、実際の数値はお住まいの地域の水道事業者が公表しています。地域ごとの硬度の傾向は地域別の水道水の硬度と浄水型サーバーの記事で整理しているので、自宅の水がどのあたりに位置するのかを確かめたい方はそちらをご覧ください。
水の種類ごとの整理
ここまでの内容を、水の種類ごとに表にまとめます。ガイドラインに記載のない事項は、推測で埋めずに「記載なし」と明記しました。
| 水の種類 | ガイドラインでの扱い | 飼い主が確認したいこと |
|---|---|---|
| 水道水 | 種類を名指しした記載はなし(求められているのは「いつでも新鮮な水」) | 器の水をこまめに入れ替えているか |
| 人間用のミネラルウォーター | 「マグネシウムなどのミネラルが多く含まれているものもあるため、犬や猫に与える場合は注意が必要です」 | 製品の硬度・ミネラル量の表示 |
| ペット用として販売されている水 | ガイドラインに個別の記載なし | 製品表示と販売元の案内 |

実践:ペットの水まわりを手順にすると
ガイドラインの記載を、毎日の行動に落とし込むと次の流れになります。
- ・【手順1】水の器をフードのそばに置く(「新鮮な水を常にフードのそばに置いておきましょう」の記載どおり)
- ・【手順2】器の水をこまめに入れ替える。減っていないかを1日のうちで何度か確認する
- ・【手順3】ミネラルウォーターを与える場合は、硬度やミネラル量の表示を確かめる
- ・【手順4】フードの種類・気温・運動量によって必要な水分量が変わることを踏まえ、暑い日や運動量が多い日は水の減り方を意識する
難しい判断はどこにもありません。特別な水を用意することよりも、【手順2】をどれだけ続けられるかのほうが、ガイドラインの求めていることに近いといえます。
ペットの水のよくある疑問
水道水をそのまま与えてもいいのですか?
環境省のガイドラインには、水道水を与えることについての注意書きはありません。注意が促されているのは人間用のミネラルウォーターのほうです。基本は水道水で問題ないという整理が一般的で、ガイドラインが求めているのは「いつでも新鮮な水が飲めるようにする」ことです。心配な点がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
ミネラルウォーターは絶対に与えてはいけませんか?
ガイドラインの記載は「注意が必要です」であり、禁止ではありません。理由として挙げられているのは、マグネシウムなどのミネラルが多く含まれているものもあるという点です。与えるかどうかを判断するなら、まず製品の硬度やミネラル量の表示を確認することになります。本記事では、記載のない範囲まで踏み込んだ断定はしません。
水は1日に何回替えればいいですか?
ガイドラインに交換回数の具体的な指定はありません。示されているのは「いつでも新鮮な水が飲めるようにしてください」という状態の目標です。回数を決めるよりも、器を見たときに水が減っている・時間が経っているようであれば入れ替える、という運用のほうが記載の趣旨に沿っています。
ウォーターサーバーの水を与えてもいいですか?
ガイドラインに、宅配水やウォーターサーバーの水についての個別の記載はありません。ミネラルウォーターを与える場合と同じ考え方で、その水の硬度がどの程度なのかを表示や公式の案内で確かめる、というのが本記事の整理です。
家庭の水を見直すきっかけに
ペットの水を考えることは、家庭で使っている水そのものを見直すきっかけにもなります。飲む水・料理の水・ペットの水——共通しているのは、その水の硬度を知っているかで選択の精度が変わる点です。
国内で流通している宅配水・ウォーターサーバーの水は、硬度が公式に公表されているものが多くあります。銘柄ごとの硬度は軟水系サーバーの硬度を一覧で整理した記事にまとめているので、数字を確かめたいときの参照先としてお使いください。もっとも、環境省のガイドラインが求めているのは特別な水ではなく、いつでも新鮮な水が飲める状態です。まずは器の水を替えるところから始めるのが、いちばん確実な一歩になります。
まとめ
ペットに与える水について、環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」から言えるのは次のとおりです。
- ・最重視されているのは「いつでも新鮮な水が飲めるようにしてください」という状態の維持
- ・置き方は「新鮮な水を常にフードのそばに置いておきましょう」
- ・人間用のミネラルウォーターは「マグネシウムなどのミネラルが多く含まれているものもあるため、犬や猫に与える場合は注意が必要」
- ・必要な水分量は「フードの乾物量(水分を除いた重量)の約2.5倍と言われています」。フードの水分含量・気温・運動量にも左右される
- ・水道水の硬度は水質基準(300mg/L以下)と管理目標(10mg/L以上100mg/L以下)の枠内で管理されている
水の銘柄を探す前に、器の水が新鮮かどうかを見る。ガイドラインの記載を素直に読むと、優先順位はこの並びになります。ミネラルウォーターを選ぶ場合は、硬度の表示を確かめてから——という一手間を加えれば、ガイドラインが促している注意にも応えられます。
なお、本記事は水の選び方を整理したものであり、健康状態や病気について判断するものではありません。飲水量の変化や体調が気になる場合は、自己判断せず獣医師にご相談ください。
本記事の記載は2026年8月時点の調査にもとづきます。参照したガイドラインや基準の内容は変わる場合があるため、最新の情報は各公式ページでご確認ください。
出典
一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)
- ・環境省自然環境局|飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~|新鮮な水・人間用ミネラルウォーターへの注意・飲水量約2.5倍・体重別必要水分量(犬2kg=190mL)の根拠|確認日2026-08-30
- ・環境省|水質基準項目と基準値(52項目)|硬度300mg/L以下・目標10〜100mg/Lの根拠|確認日2026-08-30
- ・東京都水道局|水質に関するトピック「塩素消毒」|残留塩素0.1mg/L以上・上限目標1mg/Lの根拠|確認日2026-08-30