サーバーラックと引き込み配管を並べた丸アイコン。データセンターがどの水を使うかの話

データセンターはどの水を使う?上水・工業用水・再生水のちがい

「データセンターが水を使う」と聞いたとき、その水がどこから来ているかまで説明されることは、あまりありません。水道水なのか、工場向けの安い水なのか、下水を処理した水なのか——実は日本の制度では、この3つはまったく別の仕組みで供給されています。この記事では、上水・工業用水・再生水という3つの水の制度上の違いを整理し、そのうえでデータセンターがどこに位置づけられるのかを確かめます。

先に要点をまとめると、次の3点です。

順番に見ていきます。

3つの水は、制度がまるごと別

上水(水道)工業用水再生水・雨水
根拠となる制度水道法工業用水道事業法(昭和33年法律第84号)雨水の利用の推進に関する法律ほか
飲めるか飲める(52項目の水質基準)飲用は対象外。塩素処理まで行われていない場合がほとんど人の飲用以外の用途に使う
主な使い道生活用水全般製造業等の工程用水・冷却用水冷却用水、水洗トイレ、散水、冷房用水など
供給する主体水道事業者工業用水道事業者(146事業者・2025年3月31日現在)建物・地区の設備、下水処理場
表1:上水・工業用水・再生水/雨水の制度上の違い(経済産業省「工業用水の概要」、国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」、環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」より作成・2026年9月9日確認)

同じ「水」でも、根拠となる法律から供給主体まで別です。安いから工業用水を引く、という単純な話ではありません。そもそも誰が引けるのかが法律で決まっています。

工業用水道とは何か

工業用水道事業法は、まず「工業」の範囲を定めています。経済産業省の説明を引きます(経済産業省「工業用水の概要」・2025年11月26日最終更新・2026年9月9日確認)。

「工業用水道事業法(昭和33年、法律第84号)において『工業』とは、製造業、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業を指し、これらの工業の用に供する水(水力発電用、飲用を除く)のことを『工業用水』といいます。『工業用水道』は、導管により工業用水を供給する施設をいい、一般の需要に応じ工業用水道により工業用水を供給する事業を『工業用水道事業』といいます。」

施設の作りは水道と似ているが、中身が違う

工業用水道の施設は、取水施設・貯水施設・導水施設・浄水施設・送水施設・配水施設で構成されます。並びは上水道とほぼ同じですが、浄水施設の中身が違います。経済産業省は浄水施設の説明にこう注記しています。

「(工業用水道でいう浄水処理は、土砂などの沈殿処理が主体で、塩素処理まで行われていない場合がほとんどである。)」

上水道が凝集・沈でん・ろ過・消毒という工程を踏み、高度浄水処理まで行う浄水場もあるのに対して(浄水場は水をどうやってきれいにするのか)、工業用水道は沈殿処理が主体です。使う側が必要な水質まで自前で処理する前提の水、と考えると分かりやすいでしょう。

全国の規模

2025年(令和7年)3月31日現在の整備状況です(経済産業省「工業用水の概要」・工業用水道事業法に基づく報告を基に作成・2026年9月9日確認)。

項目数値
事業者数146(地方公共団体144〈うち企業団11〉、株式会社2)
事業数231
給水能力20,795千立方メートル/日
給水先数5,624
表2:工業用水道事業の整備状況(経済産業省「工業用水の概要」より・2025年3月31日現在・2026年9月9日確認)

事業者の大半は地方公共団体です。どこにでもあるわけではなく、工業地帯を中心に整備されてきた設備だという点は押さえておく必要があります。

工業用水は何にどれだけ使われているか

国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」によれば、2023年(令和5年)に河川水や地下水等から新たに取水する淡水補給量は約100億立方メートル/年で、内訳は河川水が約69億立方メートル(構成比約70%)、地下水が約30億立方メートル(同約30%)です(国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」第2章・2026年9月9日確認)。

業種別の割合は、経済産業省の集計でパルプ・紙・紙加工品製造業が24%、化学工業が21%、鉄鋼業が15%です(2023年経済構造実態調査 製造業事業所調査)。

回収率という考え方

工業用水の世界には、上水道にはない指標があります。回収率——いちど使った水を場内で再利用する割合です。

国土交通省の資料によれば、業種別の回収率は化学工業と鉄鋼業が80〜90%程度と高く、パルプ・紙・紙加工品製造業は40%程度で推移しています。全体としても回収率は昭和40年代に大幅に向上し、その後も微増を続けており、資料は「回収率は、水の有効利用と排水規制に対応する必要から向上してきた」と説明しています。

この結果、工業用水の淡水補給量(外から新たに取る水)は1974年以降、漸減傾向で推移しています。使う水を減らしたというより、同じ水を何度も回すようになったという変化です。

再生水と雨水は「飲まない水」

3つめの水です。国土交通省は雨水・再生水利用を次のように定義しています(国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」第3章・2026年9月9日確認)。

「雨水・再生水利用は、雨水や一度使用した水道水や下水処理の再処理水(再生水)を水道水と比較して低いレベルの水質でも使用可能な、冷却用水、水洗トイレの用、散水の用、冷房用水など人の飲用以外の用途に利用することをいう。」

用途の筆頭に「冷却用水」が挙がっている点は、この記事の文脈では見逃せません。制度の側は、冷却を再生水・雨水の想定用途として最初に置いています。

利用の形は規模によって4つに分かれます。

方式内容
個別循環方式事務所ビルなどの建築物内で利用する
地区循環方式大規模な集合住宅や市街地再開発地区等の複数の建築物で共同で利用する
広域循環方式下水処理場で処理された下水再生水を受け、雑用水として利用する
雨水利用方式雨水のみを建物内の雑用水として利用する
表3:雨水・再生水利用の4方式(国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」第3章より・2026年9月9日確認)

雨水利用の実績としては、2025年(令和7年)3月末時点で全国4,563施設、年間利用量1,278万立方メートルです。雨水の側の詳しい話は別の記事で扱います。

では、データセンターはどこに入るのか

ここが本題です。制度の側から言えることを、順に並べます。

したがって、データセンターが実際にどの水を使っているかを国の統計から知ることはできません。知る手立ては、いまのところ各社が任意で公表しているサステナビリティ情報しかありません。

その各社の開示がどこまで進んでいるかというと、当社が姉妹サイト「AIライフライン」の水章で確認した2026年8月21日時点で、大手クラウド・データセンター事業者15社のうちWUE(水利用効率)の数値まで開示していたのは4社、取水量・総量までが7社、当社が確認した範囲で開示を見つけられなかったのが4社でした。しかもこの開示は「どれだけ使ったか」であって、「どの水源から取ったか」ではありません。

制度の統計にも現れず、企業の開示でも水源までは分からない——というのが、2026年9月時点の現在地です。当社の水章も「国内データセンターが水源や地域の水供給に与える影響(取水量・水源の系列は観測していない)」を、この章から言えないこととして宣言しています。

注意:この記事が確かめていないこと

ここまでで示したのは法律の定義と国の統計の対象範囲です。個々の工業用水道事業者が、条例や供給規程にもとづいて製造業以外に給水している例があるかどうかは、当社は確認していません。事業者ごとに条件は異なりうるため、特定の施設について知りたい場合は、その地域の工業用水道事業者に直接あたる必要があります。

まとめ

「どの水を使っているか」は、量の話より地味に見えます。しかし地域の水にとっては、上水道の配水池から引くのか、河川から直接取るのか、下水処理場の再生水を回すのかで意味がまったく変わります。量の議論が進む前に、この区別を持っておきたいところです。

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出典

一次資料(政府機関の公表資料および当社の観測データ)

データ出典:AIライフライン 水章

この記事で触れた「各社の開示がどこまで進んでいるか」は、当社が運営する定点観測サイト「AIライフライン」の水章から引用しています。引用するのは確定日の付いた値だけで、暫定値は使いません。