浄水場の建物と蛇口を並べた丸アイコン。浄水場から家庭までの工程の話

浄水場は水をどうやってきれいにするのか——着水井から配水池まで

蛇口をひねれば当たり前に出てくる水は、川や湖から取った水がそのまま来ているわけではありません。あいだに浄水場という工場があり、そこでいくつもの工程を通っています。この記事では、取水口から蛇口までに水が通る順番を、水道事業者(都道府県・水道局)が公表している資料だけを使って追いかけます。「着水井(ちゃくすいせい)」のような聞き慣れない名前も、役割が分かると流れがつながります。

先に要点をまとめると、次の3点です。

順番に見ていきます。

水が通る順番:取水口から配水池まで

千葉県が公表している「水道水ができるまで」の説明が、工程の名前と役割を一つずつ短く書いていて分かりやすいので、これをそのまま順に並べます(千葉県「水道水ができるまで」・2026年9月9日確認)。

順施設の名前そこで何をするか
1取水塔川から水を取り入れます
2沈砂池(ちんさち)取水した水に混ざっている砂や泥を沈めます
3導水ポンプ浄水場に水を送ります
4着水井(ちゃくすいせい)送られてきた水が浄水場に着きます
5薬品混和池水のにごりを固める薬品(凝集剤)を入れます
6フロック形成池薬品の加えられた水をかきまぜます
7沈でん池にごりのかたまりを沈めて取り除きます
8ろ過池さらにきれいにするため、こまかいにごりを砂や砂利の層でこします
9オゾン接触池かびくさいにおい等をオゾンで分解します
10活性炭吸着池分解されたにおいの素を活性炭に吸着させます
11配水池すっかりきれいになった水をためておきます(消毒のため塩素を注入します)
12送水ポンプ水を給水場に送ります
13配水塔・給水場送られてきた浄水を貯留し、水の圧力や量を調整します
表1:浄水場の工程(千葉県「水道水ができるまで」の記載順・記載表現より作成・2026年9月9日確認)。9・10は高度浄水処理を行う浄水場の工程です

13の工程がありますが、性格で分けると3つの塊になります。①水を運んで受け止める(1〜4)②濁りを取る(5〜8)③消毒してためて配る(9〜13)です。以下、塊ごとに見ていきます。

①受け止める:沈砂池と着水井は何のためにあるのか

川から取った水には、砂や泥が混ざっています。細かい処理をする前に、まず沈砂池で重い砂を沈めます。これは薬品も使わない、ただ流速を落として沈ませるだけの工程です。ここを飛ばすと後段の設備がすぐ傷むので、地味ですが欠かせません。

次の着水井は、名前から役割が想像しにくい設備です。千葉県の説明は「送られてきた水が浄水場に着きます」の一行ですが、大阪市水道局は着水井について「取水ポンプからくみ上げられた水は、着水井で水の量を調整しながら、ぎょう集沈でん池に送られます」と説明しています(大阪市水道局「WEB浄水場見学」・2026年9月9日確認)。

つまり着水井は浄水場の入口にある調整弁です。川の水位や導水ポンプの都合で流れ込む量は揺れますが、そのまま後段に流すと薬品の量が合わなくなります。いったんここで受け止めて水位と流量を落ち着かせ、一定のペースで次に送る——それが着水井の仕事です。

②濁りを取る:凝集・沈でん・ろ過という3段構え

水の濁りのもとは、とても小さな粒です。小さすぎて、置いておいても沈みません。そこで薬品混和池で凝集剤を入れ、フロック形成池でゆっくりかきまぜて、粒どうしをくっつけて大きな塊(フロック)に育てます。大きくなれば重くなり、沈でん池で沈むようになります。ここまでが「凝集・沈でん」です。

沈でん池の上澄みには、まだ沈みきらなかった細かい濁りが残ります。それをろ過池の砂の層に通して取り除きます。

急速ろ過と緩速ろ過

ろ過には2つの方式があります。東京都水道局の説明では、急速ろ過は「水中の小さな濁りや細菌類などを薬品で凝集、沈殿させた後の上澄みを、速い速度でろ過池の砂層に通し、水をきれいにする方法」で、金町浄水場や朝霞浄水場などの大規模な浄水場で採用されています。一方の緩速ろ過は、ゆっくりした速度でろ過し、砂層の表層部で微生物を繁殖させた「生物ろ過膜」の浄化作用を利用する方式です(東京都水道局「急速ろ過」「緩速ろ過」・2026年9月9日確認)。

どちらが優れているという話ではなく、水源の水質と処理量と土地の広さで選ばれるものです。大都市の浄水場に急速ろ過が多いのは、この事情によります。とはいえ東京都でも、多摩川水系の境浄水場(日量31.5万立方メートル)は緩速ろ過方式、砧・砧下浄水場は緩速ろ過方式と膜ろ過方式で運転されています(東京都水道局「浄水施設の紹介」浄水場の施設概要より・2026年9月9日確認)。都市部だから急速ろ過、と決まっているわけではありません。

高度浄水処理:においを取るための追加工程

凝集・沈でん・ろ過は濁りを取る工程で、においには効きません。かび臭のような、量としてはごく微量なのに気づかれやすい成分に対しては、追加の工程が要ります。それが高度浄水処理です。

東京都水道局は、高度浄水処理を「通常の浄水処理に加え、オゾンの強力な酸化力と生物活性炭による吸着機能を活用した浄水処理」と説明し、「水の中に残るごく微量のトリハロメタンやイヤなニオイや有機物をほぼ除去することができます」としています(東京都水道局「高度浄水処理について」・2026年9月9日確認)。表1の9番・10番が、この2段階に当たります。

順序にも意味があります。オゾンで大きな分子を分解し、分解してできた細かい成分を活性炭に吸わせる——という受け渡しになっているため、オゾンが先、活性炭が後です。

③消毒してためる:塩素と配水池

濁りとにおいを取っても、それだけでは飲める水になりません。消毒が要ります。千葉県の説明では、配水池のところに「消毒のため塩素を注入します」と書かれています。

塩素が使われるのは、殺菌力があるからというだけではありません。浄水場を出たあとも効き目が残ることが理由です。水道管の中を何時間もかけて各家庭へ向かうあいだ、水を守り続ける必要があるためで、蛇口の水に塩素のにおいがするのはその名残です。塩素の働きと家庭でのカルキ抜きについては、別の記事で詳しく扱っています(残留塩素の役割とカルキ抜きの方法)。

配水池は、きれいになった水をためておく場所です。水の使われ方は朝夕に山があり、浄水場の処理は急に増やしたり減らしたりできません。その差を吸収するのが配水池で、いわば水道のバッテリーに当たります。断水時に「配水池の水があるうちは出る」と言われるのは、この貯えのことです。

出口で守られている基準は52項目

浄水場から送り出される水は、水道法にもとづく水質基準を満たす必要があります。基準は「水質基準に関する省令」で定められており、2026年(令和8年)4月1日施行の内容で52項目です(環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」・2026年9月9日確認)。

項目基準値
一般細菌1mlの検水で形成される集落数が100以下
大腸菌検出されないこと
濁度2度以下
色度5度以下
pH値5.8以上8.6以下
味異常でないこと
臭気異常でないこと
PFOS及びPFOA0.00005mg/L以下
表2:水質基準52項目のうち、浄水場の工程と結びつきやすい項目(環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」より抜粋・令和8年4月1日施行・2026年9月9日確認)

ここまでの2つの表を重ねると、工程の意味が見えてきます。濁度と色度は凝集・沈でん・ろ過が受け持ち、臭気は高度浄水処理が受け持ち、一般細菌と大腸菌は塩素消毒が受け持つ——という対応です。工程は水質基準に合わせて組まれています。

なおPFOS及びPFOAは2026年4月1日施行の基準で新たに水質基準項目となり、基準値は0.00005mg/L以下です。従来の凝集・沈でん・ろ過で除きにくい物質のため、対応が必要な浄水場では活性炭による処理などが用いられます。

数字で見る浄水場の規模

規模の感覚もつかんでおきましょう。東京都水道局の浄水場の施設能力は、合計で1日あたり684万立方メートルです。主な浄水場の内訳は次のとおりです(東京都水道局「浄水施設の紹介」・2026年9月9日確認)。

一方、家庭側の数字は1人1日あたり約281リットル(2023年度・有効水量ベース・都市活動用水を含む)です(国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」・2026年9月9日確認)。朝霞浄水場の1日分は、単純に割れば600万人分を超える計算になります。

もうひとつ、送るあいだに失う水の話もしておきます。上水道の有効率——給水量のうち、漏水などで失われずに利用先まで届いた割合——は、2023年度で92.0%です。1993年度に90%に達して以来、90%台前半で推移しています。裏を返せば、いまも8%前後が管路の途中で失われているということです。

自分の街の浄水場を調べる手順

  1. 1. 【手順1】お住まいの市区町村の水道局・上下水道局のサイトを開きます。民間のまとめサイトではなく、水を供給している事業者自身のページから始めます
  2. 2. 【手順2】「浄水場」「水道水ができるまで」といったページで、どの方式か(急速ろ過か緩速ろ過か、高度浄水処理があるか)を確認します
  3. 3. 【手順3】「水質検査結果」のページで、実際の測定値を見ます。基準値と並べて公表されているのが普通です
  4. 4. 【手順4】水源も確認します。同じ市内でも、浄水場ごとに給水区域と水源が違うことがあります

まとめ

蛇口の水は、13の工程と52項目の基準を通り抜けてきた水です。その順番を知っておくと、水質検査の結果表を見たときに「この数字はどの工程が受け持っているのか」が分かるようになります。

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出典

一次資料(水道事業者・自治体および政府機関の公表資料)