標高980mの湖のふもとに眠る【採水地の水】山中湖〜山梨県〜
本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
山梨県山中湖村(やまなかこむら)は、富士山の北東の麓、標高980mの山中湖を囲む高原の村です。湖は富士五湖でいちばん高い所にあり、富士山の噴火で川がせき止められてできました。湖のまわりの地下には富士山に降った雨と雪がしみ込み、その一部は湖の水と一緒に地下を通って、隣の忍野村で名水百選・忍野八海として湧き出します。
本記事は、山中湖村を「採水地」として見たときの地質・水系・歴史を、山梨県と山中湖村の公式資料、環境省の名水百選ポータル、山中湖観光協会の公式資料、地学雑誌の査読論文を出所にして整理する「土地と水の記事」です。宅配水として山中湖村の地下水を届けている会社の公表値は、記事の後半で「企業公式」として別枠にまとめます。
結論:山中湖の水を3行で
- ・山中湖は標高980.5m、最大水深13.3mの堰止湖で、富士五湖でいちばん高い所にあります。面積は山梨県の資料で6.78km²、山中湖観光協会の資料で6.57km²と、出所によって幅があります
- ・査読論文は、山中湖が富士山の溶岩によって二度にわたって形づくられたこと、北麓の地下水が五つの帯水層に分かれて流れていることを報告しています
- ・別の査読論文は、隣村の忍野八海の湧水の主要な水源が山中湖の水であることを示しています。山中湖村の水道も地下水です
以上は山梨県公式観光サイト、山中湖観光協会、山中湖村、環境省の名水百選ポータル、以下で引用する査読論文の記載にもとづきます(いずれも2026年9月調査)。以下で順に見ていきます。


山中湖の水はどこから来るか
富士五湖でいちばん高い湖
山梨県公式観光サイトは、山中湖を「標高/980.5m、面積/6.78平方キロメートル、最高深度/13.3m」と記し、「富士山の火山活動によって形成された堰止湖です」と説明しています。山中湖観光協会は面積を6.57km²とし、「高所にある湖として日本で3位、富士五湖で一番高い」と書いています。面積の数字が資料によって違うのは、測り方や基準年の違いによるものと思われますが、当サイトでは両方の出所をそのまま示します。
湖の水は、富士山に降った雨と雪が地表を流れて集まる分と、地下を通って湖底から入る分の両方でできています。山中湖観光協会によると、村の一年の平均気温は9度で札幌と同じくらい、夏の平均気温は20度前後です。この涼しさが、湖に注ぐ水の量と蒸発の少なさを支えています。
湖から忍野へ抜ける地下水
山中湖の水は、桂川となって西へ流れ出るだけではありません。地学雑誌に掲載された中村ほか(2017)の査読論文は、富士山北麓の湧水の水と硝酸の起源を調べ、忍野の湧水の主要な水源が山中湖の水であることを示しました。湖の水が地下にしみ込み、溶岩の層を通って、隣の忍野村で再び地表に顔を出しているのです。忍野八海(名水百選)の透明な水は、山中湖とつながった一つの水系の一部です。

堰き止められた湖と、地下を流れる水
二度の溶岩がつくった湖
地学雑誌に掲載された内山(2020)の査読論文は、富士火山北麓の水文地質構造を整理し、山中湖が二つの時期の溶岩流によって形づくられたことを報告しています。論文は、およそ5,000年前と、およそ1,400年前の噴火活動が現在の湖の形に関わっているとしています。富士山の噴火は湖をつくっただけでなく、湖のまわりに水を通しやすい溶岩の層を重ね、地下水の通り道をつくりました。
五つに分かれる帯水層
同じ論文は、北麓の地下水が流れる帯水層を五つに区分しています。古い富士山の噴出物、新しい溶岩流、湖の堆積物などが層になっていて、それぞれの層で水の流れ方と滞留する時間が異なります。山中湖村の地下から汲み上げられる水は、どの層から取るかによって成分が変わります。「富士山の水」と一言でくくれない理由がここにあります。
言えること・言えないこと
言えること:山中湖が富士山の火山活動による堰止湖であること(山梨県)、湖の形成に二度の溶岩流が関わり北麓の帯水層が五つに分かれること(内山2020)、忍野湧水の主要な水源が山中湖の水であること(中村ほか2017)、山中湖村の水道が地下水であること(山中湖村)。
言えないこと:山中湖村で宅配水会社が汲み上げている井戸の水が、五つの帯水層のどれに当たるか、湖の水がどれだけの割合で混ざっているか。企業公式サイトにはその説明がなく、査読論文も個別の井戸を扱っていないため、本記事では特定しません。また、面積の数字が資料によって6.57〜6.78km²と幅があることは上で示したとおりです。

湖畔の村と水の暮らし
地下水の村の水道
山中湖村の公式サイトは、村の水道について「地下水を利用しています。地下の水は水源池に集められ、配水管を通って、みなさまのご家庭に水をお届けします」と説明し、「私たちの村の水道は富士の天然水」と題しています。村の人口は5,741人(2026年7月末現在・山中湖村)。湖のまわりの集落と別荘地の暮らしは、富士山の地下水で支えられています。
世界遺産の湖と白鳥
山中湖は2013年6月、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として世界文化遺産に登録されました(山梨県)。湖には国の天然記念物フジマリモが生息し、山中湖観光協会によると昭和31年(1956年)に発見されたフジマリモはマリモの分布の南限とされています。冬の湖面にはコブハクチョウをはじめ多くの野鳥が集まり、富士山を背にした白鳥の姿は湖の象徴になっています。

同じ水系の名水百選
忍野八海(忍野村・昭和の名水百選)
環境省の名水百選ポータルは、忍野八海を「富士山麓に降った雪や雨が富士山内で伏流し、やがて清冽な水となって湧き出た八つの湧水池」と説明し、「富士山の地下水が比較的水を通しにくい溶岩と溶岩の間を何十年もの歳月をかけ伏流し湧き出ている」と記しています。八つの池は、お釜池・底抜池・銚子池・湧池・濁池・鏡池・菖蒲池・出口池。湧池の流れは今も水車小屋の水車を回しています。
上で見たとおり、中村ほか(2017)は忍野湧水の主要な水源が山中湖の水であることを示しました。山中湖村と忍野村は隣り合う村で、山中湖は忍野八海の「上流」に当たります。忍野八海の見どころと写真は、当サイトの名水記事忍野八海と富士の湧水を巡る山梨の旅でも紹介しています。富士山北麓の地下水がその先で富士吉田市の水道と桂川流域の湧水群につながっていることは、採水地シリーズの富士吉田の記事で扱います。
公表されている水質(企業公式)
山中湖村を採水地とする宅配水について、会社が公式サイトで公表している数値を整理します。以下は企業の公表値であり、当サイトが測定したものではありません。数値は2026年9月6日に公式サイトで確認しました。
| 社名・商品名 | 採水地(公式記載) | 硬度 | pH | その他の公表値 |
|---|---|---|---|---|
| キララ「富士山の天然水」 | 山梨県南都留郡山中湖村 | 28mg/L(軟水) | 8.2 | 溶存酸素9mg/L(1Lあたり) |
キララの公式サイトは、採水地を山中湖村と記していますが、井戸の深さや標高、カルシウム・マグネシウムなどの個別成分は製品仕様ページに載っていません。本記事はページに書かれている数値だけを掲げます。硬度の計算方法は硬度とは、軟水・硬水の区分は軟水と硬水の違い、宅配水各社の横並びは宅配水5社の硬度一覧をご覧ください。
この水源の水を家で飲むなら
山中湖村を採水地とする宅配水は、上の表のキララです。当サイトは2026年9月時点でこの会社と提携していないため、ここに案内リンクは置いていません。提携の確認が取れた時点で、公式サイトで裏取りできる事実表現に限って商品の案内を掲載します。他社との比較はウォーターサーバー10社比較で整理しています。
まとめ
- ・山中湖は標高980.5m・最大水深13.3mの堰止湖で、富士五湖でいちばん高い所にあります。面積は資料により6.57〜6.78km²
- ・査読論文は、湖の形成に二度の溶岩流が関わり、北麓の地下水が五つの帯水層に分かれて流れていると報告しています
- ・忍野八海(昭和の名水百選)の湧水の主要な水源は山中湖の水で、二つの村は一つの水系でつながっています
- ・山中湖村の水道は地下水。湖は世界文化遺産の構成資産で、フジマリモの南限、冬にはコブハクチョウが集まります
- ・宅配水1社の公表値は硬度28mg/L・pH8.2(企業公式)の軟水です
出典
一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)。リンクの到達性は2026年9月6日に確認しました。
- ・山梨県|富士の国やまなし観光ネット 山中湖|標高980.5m・面積6.78km²・最高深度13.3m・堰止湖・世界文化遺産構成資産(2013年6月)・フジマリモの根拠
- ・山中湖村|私たちの村の水道は富士の天然水|村の水道が地下水であることの根拠
- ・山中湖村|公式サイト|人口5,741人(2026年7月末現在)の根拠
- ・環境省|名水百選ポータル 忍野八海(山梨県忍野村)|八つの湧水池、溶岩と溶岩の間を何十年もかけて伏流する湧水、水車小屋の根拠
- ・内山高(2020)|Hydrogeological Structure and Hydrological Characterization in the Northern Foot Area of Fuji Volcano, Central Japan(富士火山北麓および富士五湖の水文地質構造と水文学的特徴)|地学雑誌 129巻5号 697-724|DOI: 10.5026/jgeography.129.697|山中湖の形成に関わる二度の溶岩流、北麓の帯水層の五区分の根拠(査読論文)
- ・中村高志・長谷川達也・山本真也・内山高・瀬子義幸・清水源治・米山悠・風間ふたば(2017)|Sources of Water and Nitrate in Springs at the Northern Foot of Mt. Fuji and Nitrate Loading in the Katsuragawa River(富士山北麓の湧水の水と硝酸の起源と桂川の硝酸負荷)|地学雑誌 126巻1号 73-88|DOI: 10.5026/jgeography.126.73|忍野湧水の主要な水源が山中湖の水であることの根拠(査読論文)
- ・山梨県富士山科学研究所|土隆一「富士山の地下水・湧水」(『富士火山』2007・PDF)|北麓の地下水・湧水に関する総説(背景として参照。本文の数値は本記事で使っていない)
- ・環境省|名水百選ポータル|「選定された名水は飲用に適することを保証するものではありません」の注記の根拠
参考サイト
観光情報と企業公式の公表値
- ・山中湖観光協会|山中湖|面積6.57km²・水深13.3m・海抜980.5m・高所の湖として日本3位・富士五湖で一番高い・平均気温9度・フジマリモ(1956年発見・南限)・コブハクチョウの根拠
- ・キララ|製品仕様(企業公式)|採水地(山梨県南都留郡山中湖村)・硬度28mg/L・pH8.2・溶存酸素9mg/Lの公表値
画像クレジット
本文の写真はWikimedia Commonsに投稿された現地の実写で、いずれも商用利用可のライセンスです。撮影者・ライセンス・元ファイルは次のとおりです。
- ・アイキャッチ背景:撮影:lumoplank/Wikimedia Commons/CC0(切り取り・縮小し、県の地図輪郭を重ねて加工)
- ・本文1枚目:撮影:Alpsdake/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0
- ・本文2枚目:撮影:Alpsdake/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0
- ・本文3枚目:撮影:Alpsdake/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0
- ・本文4枚目:撮影:RESPITE/Wikimedia Commons/Public domain
※アイキャッチ画像の都道府県の地図輪郭は、「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)を加工して作成しています。