花崗岩をくぐって透きとおる【採水地の水】北杜・白州〜山梨県〜
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山梨県北杜市(ほくとし)白州町は、南アルプスの北端・甲斐駒ヶ岳の東麓にある里です。山から流れ下る尾白川(おじらがわ)は花崗岩の谷を削り、名水百選「白州・尾白川」に選ばれています。同じ市の八ヶ岳南麓には三分一湧水・大滝湧水(名水百選「八ヶ岳南麓高原湧水群」)が湧き、北杜市は市内に二つの昭和の名水百選と一つの平成の名水百選を持つ「名水の里」です。
本記事は、北杜・白州を「採水地」として見たときの地質・水系・歴史を、環境省の名水百選ポータル、北杜市と山梨県の公式資料、北杜市観光協会の公式資料、地質学雑誌・E-journal GEO・地下水学会誌の論文を出所にして整理する「土地と水の記事」です。白州で天然水を採水している会社の公表値は、記事の後半で「企業公式」として別枠にまとめます。
結論:北杜・白州の水を3行で
- ・尾白川は「甲斐駒ヶ岳の花崗岩層によりろ過された水とされ、炭酸ガスやカルシウム、マグネシウム、カリウム、珪素等のミネラル類がごく微量、バランスよく溶け込んでいる」(環境省)。昔から清酒の醸造に、近年は洋酒のブレンドに使われてきました(北杜市)
- ・同じ北杜市の八ヶ岳南麓では、三分一湧水が日量約8,500トン・水温11℃、大滝湧水が日量約22,000トン・水温約12℃で湧いています(北杜市)
- ・三分一湧水は江戸時代前半から下流の村々が三方向に分水して使ってきた湧水で、分水の石組みには400年の歴史があります(環境省)
以上は環境省の名水百選ポータル、北杜市「北杜市の名水百選」、以下で引用する公式資料と論文の記載にもとづきます(いずれも2026年9月調査)。以下で順に見ていきます。


白州の水はどこから来るか
甲斐駒ヶ岳から下る尾白川
環境省の名水百選ポータルは、尾白川を「南アルプスの駒ケ岳が源流である」と記し、上流には「千丈滝・噴水滝・神蛇滝・不動滝等に代表される渓谷美」が続き、その後「のどかな集落を通り、台ヶ原地内では一部国道20号線沿いを流れている」と説明しています。北杜市の公式サイトは、渓谷の見どころとして「エメラルドグリーンの淵が美しい、千ヶ淵」、「釜を作りながら3段になって流れ落ちる姿が美しい神蛇滝」、「渓谷の最深部を流れる不動滝」を挙げています。
北杜市は2004年11月1日に北巨摩郡の7町村(明野村・須玉町・高根町・長坂町・大泉村・白州町・武川村)が合併して生まれ、2006年3月15日に小淵沢町が加わりました(北杜市)。白州町はその西の端、釡無川の右岸に位置し、尾白川は釡無川の支流です。
二つの名水百選を持つ市
北杜市の公式サイト「日本一の名水の里 北杜市の名水百選」によると、市内には昭和60年3月選定の「白州・尾白川」(河川)と「八ヶ岳南麓高原湧水群」(湧水)、平成20年6月選定の「金峰山・瑞牆山源流」(河川)の三つの名水百選があります。南アルプス側の花崗岩の川と、八ヶ岳側の火山の湧水。性格の違う二つの水が、一つの市の中にあります。

花崗岩が磨く水
甲斐駒ヶ岳の花崗岩
甲斐駒ヶ岳の白い山体は花崗岩でできています。地質学雑誌に掲載された佐藤ほか(1989)の査読論文は、甲斐駒ヶ岳花崗岩質岩体のK-Ar年代と岩体冷却史を測定し、赤石山地の形成史の中に位置づけました。山梨県の公式観光サイトも尾白川渓谷を「花崗岩の岩肌を流れる清流」と記しています。花崗岩は石英・長石・雲母からなる硬い岩で、風化すると粗い砂(マサ)になります。雨水はこの砂と岩の割れ目をゆっくり通り、溶け出すミネラルはごく少量にとどまります。環境省が尾白川の水質を「ミネラル類がごく微量、バランスよく溶け込んでいる」と書くのは、この地質の反映です。
言えること・言えないこと
言えること:尾白川が甲斐駒ヶ岳に源を発し花崗岩の谷を流れること(環境省・山梨県・北杜市)、水質がごく微量のミネラルをバランスよく含むと記されていること(環境省)、三分一湧水と大滝湧水の湧出量と水温(北杜市・環境省)、白州の天然水工場の所在地が白州町鳥原であること(企業公式)。
言えないこと:尾白川の水の硬度や成分の具体的な数値。環境省ポータルは「ごく微量」と記すだけで数値を示しておらず、北杜市の資料にも載っていません。また、白州で企業が汲み上げる地下水と尾白川の表流水が同じ水かどうかも、公表資料からは判断できません。企業は「花崗岩層でゆっくりと磨かれ」た地下水と説明していますが、井戸の深さや取水量は公表していないため、本記事では特定しません。三分一湧水の水温は環境省が10度、北杜市が11℃と記しており、出所によって1度の差があります。

甲州街道の宿場と水の暮らし
台ヶ原宿
尾白川が国道20号に沿って流れる台ヶ原(だいがはら)は、江戸時代に甲州街道の宿場として栄えた町です。北杜市観光協会は「今でも古い民家や蔵が点在し、情緒ある酒蔵や和菓子屋が並ぶ」と紹介し、この旧街道は「日本の道百選」に選ばれています。北杜市の公式サイトは、尾白川の水が「昔から清酒の醸造、近年では洋酒のブレンドなどに使われるほか、味わい豊かな天然水として生活と深く係ってきました」と記しています。宿場の酒蔵と、川の水は、切り離せない関係にあります。
環境省ポータルによると、尾白川流域では竹宇(ちくう)・白須下(しらすしも)・台ヶ原の3集落がごみ拾いと草刈りを続け、合併浄化槽の設置を進めています。渓谷には年間5万人程度の観光客が水遊び・キャンプ・ハイキング・甲斐駒ヶ岳登山に訪れます。
地下水をめぐる町の選択
白州町の地下水は、飲料水メーカーの立地とともに地域の資源として議論されてきました。E-journal GEOに掲載された新井ほか(2011)の論文「山梨県白州町の地下水をめぐるポリティカル・エコロジー」は、白州町の地下水をめぐる利用と地域社会の関係を扱っています。名水の里であることと、その水を誰がどう使うかは、別の問いとして地元で考えられてきました。

同じ市の名水百選
八ヶ岳南麓高原湧水群(長坂町・小淵沢町・昭和の名水百選)
環境省の名水百選ポータルは、三分一湧水について「江戸時代前半、府本の6つの村で3方向に分水し使用していた。分水池の様子は大変美しく、水分石は先人の知恵、400年の歴史がある」と記しています。「三分一湧水は下流の6か村が均等に分水し水利権を有している」とも書かれ、水量は8,500トン/日、水温10度。北杜市は水温11℃・日量約8,500トンとしています。大滝湧水は日量約22,000トン・水温約12℃(北杜市)で、「湧水後背地の山林は滝山と称し、江戸時代に水源かん養のため甲府代官が民有地を買い上げ、御留林として湧水の保全を図った」(環境省)という歴史があります。
北杜市は「本湧水は農業用水ですので生水での飲用には適しません」と注意を添えています。地下水学会誌の連載「名水を訪ねて」第136回(内山・内山2022)は、この八ヶ岳南麓の名水を解説しています。尾白川と八ヶ岳南麓の湧水は水系こそ違いますが、どちらも北杜市の水であり、山に降った雨と雪が岩と土の中で磨かれて地表に戻る点で共通しています。

公表されている水質(企業公式)
白州町を採水地とする天然水について、会社が公式サイトで公表している内容を整理します。以下は企業の公表値であり、当サイトが測定したものではありません。数値は2026年9月6日に公式サイトで確認しました。
| 社名・商品名 | 採水地(公式記載) | 硬度 | pH | その他の公表値 |
|---|---|---|---|---|
| サントリー「サントリー天然水(南アルプス)」 | 山梨県北杜市白州町鳥原2913-1(サントリー天然水 南アルプス白州工場) | 約30mg/L(サントリーお客様センターFAQ) | 記載なし | 「花崗岩層でゆっくりと磨かれ、長い歳月をかけてミネラルをたっぷり含んだ水」と説明。1991年発売 |
サントリーの宅配水サービス「サントリー天然水ウォーターサーバー」については、その採水地が白州であるかどうかを公式サイトで確認できませんでした(2026年9月6日時点・サイトが自動取得に応じないため)。本記事では、ボトル製品の工場所在地のみを事実として掲げます。硬度の計算方法は硬度とは、軟水・硬水の区分は軟水と硬水の違いをご覧ください。
この水源の水を家で飲むなら
白州の水を家庭に届ける宅配水について、当サイトは2026年9月時点で提携先を持たず、採水地の公式確認も取れていないため、ここに商品の案内は置いていません。採水地が公式に確認でき、提携の確認が取れた時点で、公式サイトで裏取りできる事実表現に限って商品の案内を掲載します。他社との比較はウォーターサーバー10社比較で整理しています。
まとめ
- ・尾白川は甲斐駒ヶ岳に源を発し、花崗岩の谷を削って流れる名水百選(昭和60年選定)の川です
- ・環境省はその水質を「ミネラル類がごく微量、バランスよく溶け込んでいる」と記し、清酒の醸造や洋酒のブレンドに使われてきました
- ・台ヶ原宿は甲州街道の宿場町で、古い民家・蔵・酒蔵が残り、旧街道は「日本の道百選」です
- ・同じ北杜市の八ヶ岳南麓には三分一湧水(日量約8,500トン)と大滝湧水(日量約22,000トン)が湧き、三分一の分水には400年の歴史があります
- ・白州町の地下水をめぐる利用と地域の関係は、論文の対象にもなってきました
- ・企業公式で確認できるのは白州工場の所在地、花崗岩層の説明、硬度約30mg/L。宅配水の採水地は要再確認です
出典
一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)。リンクの到達性は2026年9月6日に確認しました。
- ・環境省|名水百選ポータル 白州・尾白川(山梨県北杜市)|源流が駒ヶ岳であること、上流の滝と渓谷、台ヶ原で国道20号沿いを流れること、花崗岩層によりろ過された水質、年間5万人の観光客、3集落の保全活動の根拠
- ・環境省|名水百選ポータル 八ヶ岳南麓高原湧水群(山梨県北杜市)|三分一湧水8,500トン/日・水温10度、6か村の分水と400年の歴史、大滝湧水と御留林の根拠
- ・北杜市|日本一の名水の里 北杜市の名水百選|三つの名水百選と選定年月、三分一湧水(水温11℃・日量約8,500トン)、大滝湧水(水温約12℃・日量約22,000トン)、清酒醸造・洋酒ブレンドへの利用、生水飲用の注意の根拠
- ・北杜市|尾白川渓谷|甲斐駒ヶ岳を源とする清流、千ヶ淵・神蛇滝・不動滝の根拠
- ・北杜市|合併の経緯|2004年11月1日の7町村合併と2006年3月15日の小淵沢町合併の根拠
- ・佐藤興平・柴田賢・内海茂(1989)|甲斐駒ヶ岳花崗岩質岩体のK-Ar年代と岩体冷却史:赤石山地の地質構造形成史における意義|地質学雑誌 95巻1号 33-44|DOI: 10.5575/geosoc.95.33|甲斐駒ヶ岳が花崗岩体であることの根拠(査読論文。年代の数値は本記事で使っていない)
- ・新井智一・福石夕・原山道子(2011)|山梨県白州町の地下水をめぐるポリティカル・エコロジー|E-journal GEO 5巻2号 125-137|DOI: 10.4157/ejgeo.5.125|白州町の地下水をめぐる利用と地域社会の関係が論文の対象になっていることの根拠(査読論文)
- ・内山高・内山美恵子(2022)|名水を訪ねて(136)山梨県・南八ヶ岳山麓の名水|地下水学会誌 64巻1号 139-149|DOI: 10.5917/jagh.64.139|八ヶ岳南麓の名水を解説した学会誌記事(背景として参照。本文の数値は本記事で使っていない)
- ・環境省|名水百選ポータル|「選定された名水は飲用に適することを保証するものではありません」の注記の根拠
参考サイト
観光情報と企業公式の公表値
- ・山梨県|富士の国やまなし観光ネット 尾白川渓谷|「雄大な甲斐駒ヶ岳に源を発する尾白川」「花崗岩の岩肌を流れる清流」の根拠
- ・一般社団法人北杜市観光協会|尾白川渓谷|所在地(北杜市白州町白須)、千ヶ淵・神蛇滝・不動滝、アクセスの根拠
- ・一般社団法人北杜市観光協会|台ヶ原宿|甲州街道の宿場、古い民家や蔵、酒蔵と和菓子屋、「日本の道百選」の根拠
- ・サントリー|サントリー天然水 南アルプス白州工場 ものづくりのこだわり(企業公式)|工場所在地(北杜市白州町鳥原2913-1)、花崗岩層で磨かれた水、1991年発売の公表値
- ・サントリーお客様センター|『サントリー天然水』の硬度を教えてください(企業公式)|硬度約30mg/L(南アルプス)・約10mg/L(北アルプス)・約20mg/L(奥大山)・約80mg/L(阿蘇)の公表値(2026年9月6日にブラウザで直接確認)
画像クレジット
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- ・本文1枚目:撮影:Koichi Oda/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.0
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