山梨県の地図輪郭を重ねた採水地シリーズのアイキャッチ。背景は北杜市白州町の尾白川渓谷・千ヶ淵

花崗岩をくぐって透きとおる【採水地の水】北杜・白州〜山梨県〜

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山梨県北杜市(ほくとし)白州町は、南アルプスの北端・甲斐駒ヶ岳の東麓にある里です。山から流れ下る尾白川(おじらがわ)は花崗岩の谷を削り、名水百選「白州・尾白川」に選ばれています。同じ市の八ヶ岳南麓には三分一湧水・大滝湧水(名水百選「八ヶ岳南麓高原湧水群」)が湧き、北杜市は市内に二つの昭和の名水百選と一つの平成の名水百選を持つ「名水の里」です。

本記事は、北杜・白州を「採水地」として見たときの地質・水系・歴史を、環境省の名水百選ポータル、北杜市と山梨県の公式資料、北杜市観光協会の公式資料、地質学雑誌・E-journal GEO・地下水学会誌の論文を出所にして整理する「土地と水の記事」です。白州で天然水を採水している会社の公表値は、記事の後半で「企業公式」として別枠にまとめます。

結論:北杜・白州の水を3行で

以上は環境省の名水百選ポータル、北杜市「北杜市の名水百選」、以下で引用する公式資料と論文の記載にもとづきます(いずれも2026年9月調査)。以下で順に見ていきます。

北杜市長坂町の三分一湧水。黒い岩の間を白い流れが落ちる
北杜市長坂町の三分一湧水。八ヶ岳南麓に湧く名水百選の一つで、日量約8,500トン・水温11℃の水が湧きます。写真:Koichi Oda(Wikimedia Commons・CC BY-SA 2.0)
甲斐駒ヶ岳と、八ヶ岳南麓高原湧水群の三分一湧水の位置を示した地図。甲斐駒ヶ岳から北東へ尾白川が流れ、白州町の台ヶ原を通る
白州(尾白川・台ヶ原)と甲斐駒ヶ岳・八ヶ岳南麓の湧水の位置関係(川の名前は地理院地図の注記)出典:国土地理院「地理院タイル(標準地図・陰影起伏図)」、国土交通省「国土数値情報(行政区域)」を加工して作成(図:水のソムリエ編集部作成)

白州の水はどこから来るか

甲斐駒ヶ岳から下る尾白川

環境省の名水百選ポータルは、尾白川を「南アルプスの駒ケ岳が源流である」と記し、上流には「千丈滝・噴水滝・神蛇滝・不動滝等に代表される渓谷美」が続き、その後「のどかな集落を通り、台ヶ原地内では一部国道20号線沿いを流れている」と説明しています。北杜市の公式サイトは、渓谷の見どころとして「エメラルドグリーンの淵が美しい、千ヶ淵」、「釜を作りながら3段になって流れ落ちる姿が美しい神蛇滝」、「渓谷の最深部を流れる不動滝」を挙げています。

北杜市は2004年11月1日に北巨摩郡の7町村(明野村・須玉町・高根町・長坂町・大泉村・白州町・武川村)が合併して生まれ、2006年3月15日に小淵沢町が加わりました(北杜市)。白州町はその西の端、釡無川の右岸に位置し、尾白川は釡無川の支流です。

二つの名水百選を持つ市

北杜市の公式サイト「日本一の名水の里 北杜市の名水百選」によると、市内には昭和60年3月選定の「白州・尾白川」(河川)と「八ヶ岳南麓高原湧水群」(湧水)、平成20年6月選定の「金峰山・瑞牆山源流」(河川)の三つの名水百選があります。南アルプス側の花崗岩の川と、八ヶ岳側の火山の湧水。性格の違う二つの水が、一つの市の中にあります。

雪をかぶった甲斐駒ヶ岳・アサヨ峰・鳳凰山の山並み。手前に暗い針葉樹の尾根
南アルプス北端の甲斐駒ヶ岳(中央)・アサヨ峰・鳳凰山。尾白川はこの山塊の花崗岩の谷から流れ出します。写真:Alpsdake(Wikimedia Commons・CC BY-SA 4.0)

花崗岩が磨く水

甲斐駒ヶ岳の花崗岩

甲斐駒ヶ岳の白い山体は花崗岩でできています。地質学雑誌に掲載された佐藤ほか(1989)の査読論文は、甲斐駒ヶ岳花崗岩質岩体のK-Ar年代と岩体冷却史を測定し、赤石山地の形成史の中に位置づけました。山梨県の公式観光サイトも尾白川渓谷を「花崗岩の岩肌を流れる清流」と記しています。花崗岩は石英・長石・雲母からなる硬い岩で、風化すると粗い砂(マサ)になります。雨水はこの砂と岩の割れ目をゆっくり通り、溶け出すミネラルはごく少量にとどまります。環境省が尾白川の水質を「ミネラル類がごく微量、バランスよく溶け込んでいる」と書くのは、この地質の反映です。

言えること・言えないこと

言えること:尾白川が甲斐駒ヶ岳に源を発し花崗岩の谷を流れること(環境省・山梨県・北杜市)、水質がごく微量のミネラルをバランスよく含むと記されていること(環境省)、三分一湧水と大滝湧水の湧出量と水温(北杜市・環境省)、白州の天然水工場の所在地が白州町鳥原であること(企業公式)。

言えないこと:尾白川の水の硬度や成分の具体的な数値。環境省ポータルは「ごく微量」と記すだけで数値を示しておらず、北杜市の資料にも載っていません。また、白州で企業が汲み上げる地下水と尾白川の表流水が同じ水かどうかも、公表資料からは判断できません。企業は「花崗岩層でゆっくりと磨かれ」た地下水と説明していますが、井戸の深さや取水量は公表していないため、本記事では特定しません。三分一湧水の水温は環境省が10度、北杜市が11℃と記しており、出所によって1度の差があります。

北杜市武川町の萬休院。しだれ桜と椿の花の奥に寺の屋根が見える
北杜市武川町の萬休院。白州に隣り合う武川の里は、釡無川の河岸段丘に寺と集落が点在します。写真:円周率3パーセント(Wikimedia Commons・CC BY-SA 4.0)

甲州街道の宿場と水の暮らし

台ヶ原宿

尾白川が国道20号に沿って流れる台ヶ原(だいがはら)は、江戸時代に甲州街道の宿場として栄えた町です。北杜市観光協会は「今でも古い民家や蔵が点在し、情緒ある酒蔵や和菓子屋が並ぶ」と紹介し、この旧街道は「日本の道百選」に選ばれています。北杜市の公式サイトは、尾白川の水が「昔から清酒の醸造、近年では洋酒のブレンドなどに使われるほか、味わい豊かな天然水として生活と深く係ってきました」と記しています。宿場の酒蔵と、川の水は、切り離せない関係にあります。

環境省ポータルによると、尾白川流域では竹宇(ちくう)・白須下(しらすしも)・台ヶ原の3集落がごみ拾いと草刈りを続け、合併浄化槽の設置を進めています。渓谷には年間5万人程度の観光客が水遊び・キャンプ・ハイキング・甲斐駒ヶ岳登山に訪れます。

地下水をめぐる町の選択

白州町の地下水は、飲料水メーカーの立地とともに地域の資源として議論されてきました。E-journal GEOに掲載された新井ほか(2011)の論文「山梨県白州町の地下水をめぐるポリティカル・エコロジー」は、白州町の地下水をめぐる利用と地域社会の関係を扱っています。名水の里であることと、その水を誰がどう使うかは、別の問いとして地元で考えられてきました。

三分一湧水の石組みの分水路。湧水が三方向に分けられて流れ出る
三分一湧水の分水路。湧き水を三つの村へ等しく分けるために築かれた石組みが、今も水を配っています。写真:Koichi Oda(Wikimedia Commons・CC BY-SA 2.0)

同じ市の名水百選

八ヶ岳南麓高原湧水群(長坂町・小淵沢町・昭和の名水百選)

環境省の名水百選ポータルは、三分一湧水について「江戸時代前半、府本の6つの村で3方向に分水し使用していた。分水池の様子は大変美しく、水分石は先人の知恵、400年の歴史がある」と記しています。「三分一湧水は下流の6か村が均等に分水し水利権を有している」とも書かれ、水量は8,500トン/日、水温10度。北杜市は水温11℃・日量約8,500トンとしています。大滝湧水は日量約22,000トン・水温約12℃(北杜市)で、「湧水後背地の山林は滝山と称し、江戸時代に水源かん養のため甲府代官が民有地を買い上げ、御留林として湧水の保全を図った」(環境省)という歴史があります。

北杜市は「本湧水は農業用水ですので生水での飲用には適しません」と注意を添えています。地下水学会誌の連載「名水を訪ねて」第136回(内山・内山2022)は、この八ヶ岳南麓の名水を解説しています。尾白川と八ヶ岳南麓の湧水は水系こそ違いますが、どちらも北杜市の水であり、山に降った雨と雪が岩と土の中で磨かれて地表に戻る点で共通しています。

北杜市から望む八ヶ岳南部の山並み。手前に広い森が広がる
北杜市の八ヶ岳高原大橋付近から望む八ヶ岳。南麓の森に降った雨と雪が、三分一湧水などの湧水群になります。写真:663highland(Wikimedia Commons・CC BY 2.5)

公表されている水質(企業公式)

白州町を採水地とする天然水について、会社が公式サイトで公表している内容を整理します。以下は企業の公表値であり、当サイトが測定したものではありません。数値は2026年9月6日に公式サイトで確認しました。

社名・商品名採水地(公式記載)硬度pHその他の公表値
サントリー「サントリー天然水(南アルプス)」山梨県北杜市白州町鳥原2913-1(サントリー天然水 南アルプス白州工場)約30mg/L(サントリーお客様センターFAQ)記載なし「花崗岩層でゆっくりと磨かれ、長い歳月をかけてミネラルをたっぷり含んだ水」と説明。1991年発売
サントリー「南アルプス白州工場 ものづくりのこだわり」の記載(2026年9月6日確認)。硬度はサントリーお客様センターFAQの記載(南アルプス約30mg/L)です。

サントリーの宅配水サービス「サントリー天然水ウォーターサーバー」については、その採水地が白州であるかどうかを公式サイトで確認できませんでした(2026年9月6日時点・サイトが自動取得に応じないため)。本記事では、ボトル製品の工場所在地のみを事実として掲げます。硬度の計算方法は硬度とは、軟水・硬水の区分は軟水と硬水の違いをご覧ください。

この水源の水を家で飲むなら

白州の水を家庭に届ける宅配水について、当サイトは2026年9月時点で提携先を持たず、採水地の公式確認も取れていないため、ここに商品の案内は置いていません。採水地が公式に確認でき、提携の確認が取れた時点で、公式サイトで裏取りできる事実表現に限って商品の案内を掲載します。他社との比較はウォーターサーバー10社比較で整理しています。

まとめ

出典

一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)。リンクの到達性は2026年9月6日に確認しました。

参考サイト

観光情報と企業公式の公表値

画像クレジット

本文の写真はWikimedia Commonsに投稿された現地の実写で、いずれも商用利用可のライセンスです。撮影者・ライセンス・元ファイルは次のとおりです。

※アイキャッチ画像の都道府県の地図輪郭は、「国土数値情報(行政区域データ)」(国土交通省)を加工して作成しています。