井戸水は飲んでいい?水質検査の項目と頻度
敷地に井戸がある家、実家の井戸を使い続けている家、山あいの集落で共同の井戸から水を引いている——井戸水を飲んでいる暮らしは、いまも各地にあります。ただ、水道水と違って井戸水には「誰かが検査してくれる仕組み」が付いていません。この記事では、飲用の井戸に何が求められているのかを、国の通知「飲用井戸等衛生対策要領」にそって整理します。
先に要点をまとめると、次の3点です。
- ・井戸水を飲んでよいかは、水質検査に適合しているかどうかで判断します。見た目や味では分かりません
- ・定期の水質検査は1年以内ごとに1回。項目は一般細菌・大腸菌・硝酸態窒素など11種類を基本に、周辺の状況から必要な項目を足します
- ・使い始める前にも検査が要ります。また異常を感じたときは臨時の検査を行い、健康を害するおそれを知ったときは直ちに給水を止めて保健所等に連絡します
順番に見ていきます。
井戸水には「水道法の外側」というルールが当てはまる
水道水は水道法にもとづき、水道事業者が水質検査を行い、基準に適合した水を送っています。ところが個人の井戸や小さな給水施設は、水道法の規制の対象になりません。そこを埋めるために国が定めたのが「飲用井戸等衛生対策要領」です(昭和62年1月29日 衛水第12号・最近改正 平成26年3月31日 健発0331第30号)。
この要領は対象となる施設を3つに分けています(飲用井戸等衛生対策要領 3.対象施設・2026年9月9日確認)。
| 区分 | どんな施設か |
|---|---|
| 一般飲用井戸 | 個人住宅、寄宿舎、社宅、共同住宅等に居住する者に対して飲用水を供給する井戸等の給水施設 |
| 業務用飲用井戸 | 官公庁、学校、病院、店舗、工場その他の事業所等に対して飲用水を供給する井戸等の給水施設 |
| 小規模受水槽水道 | 水道事業の用に供する水道又は専用水道から供給を受ける水のみを水源とする小規模受水槽を有する施設 |
家庭で使っている井戸は、通常「一般飲用井戸」に当たります。管理の責任は、設置者や管理者——つまり使っている人自身にあります。
定期の水質検査は何を、どのくらいの頻度で
検査する項目
要領は、定期の水質検査で調べる項目を次のように定めています。水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)の項目のうち、次のものです(同要領 4.-2)-②-ア-ⅰ)・2026年9月9日確認)。
| # | 項目 | 何を見ているか |
|---|---|---|
| 1 | 一般細菌 | 細菌による汚染の全体的な目安 |
| 2 | 大腸菌 | し尿などによる汚染の指標 |
| 3 | 亜硝酸態窒素 | 窒素化合物による汚染 |
| 4 | 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 | 肥料・家畜排せつ物・浄化槽などに由来する汚染 |
| 5 | 塩化物イオン | 生活排水や海水の混入の指標 |
| 6 | 有機物(全有機炭素(TOC)の量) | 有機物による汚れの量 |
| 7 | pH値 | 水の酸性・アルカリ性 |
| 8 | 味 | 異常がないか |
| 9 | 臭気 | 異常がないか |
| 10 | 色度 | 水の色の程度 |
| 11 | 濁度 | 水の濁りの程度 |
要領はこれに加えて、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン等に代表される有機溶剤、その他水質基準項目のうち周辺の水質検査結果等から判断して必要となる事項——も検査の対象としています。つまり11項目は下限であって、上限ではありません。
何を足すべきかは地域によって違います。要領は都道府県等に対し、地域の井戸やその他地下水の水質検査結果をもとに「定期的に検査を行うことが望ましい項目を定めて周知する」よう求めています。まずお住まいの自治体の情報を確認するのが早道です。
検査の頻度
頻度は1年以内ごとに1回です。要領の書き方はやや細かく、次のようになっています。
- ・一般飲用井戸(設置者が自分の住宅だけに供給するものを除く)・業務用飲用井戸・小規模受水槽水道——1年以内ごとに1回行うものとする
- ・それ以外(自分の家だけで使っている井戸)——1年以内ごとに1回行うことが望ましい
自分の家だけで使っている井戸は「望ましい」という表現になっていますが、頻度そのものは同じ1年に1回です。誰も代わりに検査してくれない立場だと考えると、むしろ間隔を空けない理由になります。
どこに依頼するか
依頼先も決まっています。要領は、一般飲用井戸・業務用飲用井戸の水質検査は「水道法第20条第3項に規定する地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者」に依頼するものとしています。市販の簡易試験紙は日常の目安にはなりますが、要領が求める定期の水質検査の代わりにはなりません。
使い始める前と、異常を感じたとき
定期検査のほかに、2つの場面で検査が求められています。
- ・給水開始前——要領は「一般飲用井戸及び業務用飲用井戸については、給水開始前に水道法に準じた水質検査を実施し、これに適合していることを確認すること」としています。新しく井戸を掘ったとき、長く使っていなかった井戸を再開するときは、まず検査です
- ・臨時の水質検査——「飲用井戸等から給水される水に異常を認めたとき、臨時に行う水質基準項目のうち必要なものについての水質検査」。濁った、においが変わった、味が変わったといったときが該当します
汚染が分かったときにすること
ここは順序が決まっています。要領の書きぶりをそのまま示します(同要領 4.-2)-③・2026年9月9日確認)。
- 1. 【手順1】その供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知ったときは、直ちに給水を停止します
- 2. 【手順2】利用者にその旨を周知します。同じ井戸を使っている家族・近隣・施設の利用者に伝えます
- 3. 【手順3】保健所等へ連絡し、指示を受けます
- 4. 【手順4】水質検査の結果、水道法にもとづく水質基準を超える汚染が判明した場合も、保健所等へ連絡し指示を受けます
「止める」が先で「調べる」が後、という順番です。原因が分かってから止めるのではありません。
なお都道府県等の側の対応も定められていて、有機溶剤等による汚染が判明した場合には、環境行政の部局と連携して汚染経路や地域内の事業場での使用・処分の実態を把握するよう努める、とされています。井戸の汚染は、その井戸だけの問題で終わらないことがあるためです。
日ごろの管理
検査は年に1回ですが、管理は日常のものです。要領が設置者等に求めているのは次の点です。
- ・井戸とその周辺に、みだりに人畜が立ち入らないように適切な措置を講ずること
- ・構造の定期点検——井筒、ケーシング、ポンプ、吸込管、弁類、管類、井戸のふた、水槽等を定期的に点検し、汚染源に対する防護措置を講ずること
- ・周辺の清潔保持に努めること
- ・新たに設置するときは、設置場所と設備に十分配慮すること
「井戸のふた」まで名指しされているのは、上から入る汚れが実際に起きるからです。ふたの破損、周囲のたまり水、近くの浄化槽や家畜——こうしたものは検査を待たずに直せます。
水道水と比べたときに知っておきたいこと
水道水が満たしている水質基準は、2026年(令和8年)4月1日施行の内容で52項目です。2026年4月からはPFOS及びPFOAが基準項目に加わり、基準値は0.00005mg/L以下と定められました(環境省「水質基準項目と基準値(52項目)」・2026年9月9日確認)。
一方、飲用井戸の定期検査で必ず調べるのは表2の11項目が基本です。この差は、井戸水が劣っているという意味ではなく、「調べていない項目がある」という意味です。周辺に不安の材料がある場合(工場、ガソリンスタンド、農地、旧処分場など)は、基本の11項目に加えて、その原因物質の検査を足すかどうかを保健所に相談するのが確実です。
もうひとつ、塩素消毒がないという違いもあります。水道水は浄水場で塩素を入れ、蛇口まで効き目が残るようにしていますが(残留塩素の役割とカルキ抜きの方法)、井戸水にはその守りがありません。汲み置きや配管内での細菌の増え方は、水道水と同じには考えられません。
なお、この要領には「都道府県、市町村又は特別区において、既に条例、要綱等の定めるところに従つて飲用井戸等の衛生確保対策が十分に行われている場合には、この要領にかかわらず、その条例、要綱等に従つて指導することは差し支えない」という定めがあります。お住まいの自治体に独自のルールがあれば、そちらが優先されます。最終的な確認先は、地元の保健所です。
まとめ
- ・飲用の井戸は水道法の対象外で、管理の責任は使っている人にあります。国の指針は「飲用井戸等衛生対策要領」です
- ・定期の水質検査は1年以内ごとに1回。一般細菌・大腸菌・亜硝酸態窒素・硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素・塩化物イオン・有機物(TOC)・pH値・味・臭気・色度・濁度の11項目が基本で、有機溶剤など必要な項目を足します
- ・使い始める前にも水道法に準じた検査が必要です。異常を感じたときは臨時の検査を行います
- ・健康を害するおそれを知ったときは、直ちに給水を停止し、利用者に周知し、保健所等へ連絡します
- ・水道水の水質基準は52項目(令和8年4月1日施行、PFOS・PFOAを含む)。井戸の基本11項目との差は「調べていない項目がある」という差です
井戸水は、その土地の地下水をそのまま飲むという贅沢な形です。だからこそ、地下で何が起きているかを年に1度は数字で確かめておく——それがこの要領の考え方だと言えます。
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出典
一次資料(政府機関の公表資料)
- ・厚生労働省|飲用井戸等衛生対策要領の実施について(昭和62年1月29日 衛水第12号・最近改正 平成26年3月31日 健発0331第30号)|対象施設の3区分(一般飲用井戸・業務用飲用井戸・小規模受水槽水道)とその定義、定期の水質検査の項目(一般細菌、大腸菌、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、有機物(全有機炭素(TOC)の量)、pH値、味、臭気、色度及び濁度、並びにトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン等に代表される有機溶剤その他必要となる事項)、検査の頻度(1年以内ごとに1回)、給水開始前の検査、臨時の水質検査、検査の依頼先(水道法第20条第3項に規定する地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者)、汚染が判明した場合の措置(直ちに給水を停止・利用者に周知・保健所等へ連絡)、日常の管理事項(人畜の立入防止、井筒・ケーシング・ポンプ・吸込管・弁類・管類・井戸のふた・水槽等の定期点検、周辺の清潔保持)、都道府県条例等との整合|確認日2026年9月9日
- ・環境省|水質基準項目と基準値(52項目)|水道水の水質基準の項目数(52項目・令和8年4月1日施行)およびPFOS及びPFOAの基準値(0.00005mg/L以下)|確認日2026年9月9日
本記事は国の通知の内容を整理したものです。実際の運用は自治体の条例・要綱によって異なることがあります。個別の判断は、お住まいの地域の保健所にご確認ください。