雨水は何に使える?雨水タンクと利用のきほん
庭に雨水タンクを置いてみようか——そう考えたとき、最初に知りたいのは「何に使えるのか」だと思います。飲めるのか、洗濯に使えるのか、災害のときに役立つのか。この記事では、国が雨水利用をどう位置づけているかを法律と統計で確かめ、そのうえで家庭で導入するときの見方を整理します。
先に要点をまとめると、次の3点です。
- ・国の定義では、雨水は「人の飲用以外の用途」に使う水です。具体例として挙がっているのは冷却用水、水洗トイレ、散水、冷房用水です
- ・全国の雨水利用施設は4,563施設、年間利用量は1,278万立方メートル(2025年3月末時点)。用途は水洗トイレと散水が多くを占めます
- ・2014年に「雨水の利用の推進に関する法律」が施行され、国や独立行政法人等の新築建築物では雨水利用施設の設置率を原則100%とすることが閣議決定されています
順番に見ていきます。
雨水は「飲まない水」として位置づけられている
まず国の定義から確認します。国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」は、雨水・再生水利用を次のように説明しています(国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」第3章・2026年9月9日確認)。
「雨水・再生水利用は、雨水や一度使用した水道水や下水処理の再処理水(再生水)を水道水と比較して低いレベルの水質でも使用可能な、冷却用水、水洗トイレの用、散水の用、冷房用水など人の飲用以外の用途に利用することをいう。」
ここでの位置づけは明快です。雨水は「水道水ほどの水質を必要としない用途」に回す水であり、飲用は想定されていません。家庭で使う場合も、この線引きから始めるのが安全です。
利用の形は規模によって4つに分かれます。個人宅の雨水タンクは、いちばん小さい「雨水利用方式」(雨水のみを建物内の雑用水として利用する)に当たります。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 個別循環方式 | 事務所ビルなどの建築物内で利用する |
| 地区循環方式 | 大規模な集合住宅や市街地再開発地区等の複数の建築物で共同で利用する |
| 広域循環方式 | 下水処理場で処理された下水再生水を受け、雑用水として利用する |
| 雨水利用方式 | 雨水のみを建物内の雑用水として利用する |
日本でどれくらい使われているのか
実績の数字です。2025年(令和7年)3月末において、雨水を利用している公共施設や事務所ビル等の数は全国で4,563施設、雨水利用量は1,278万立方メートル/年です(国土交通省水資源部調べ・2024年度末現在・2026年9月9日確認)。
地域には偏りがあります。関東臨海および東海の両地域で全国の約52%を占め、なかでも1970年代中頃から雨水等の導入を推進してきた東京都に集中しています。用途別では水洗トイレ、散水での利用が多いとされています。
規模感をつかむために比べておくと、日本全体の生活用水の使用量は2023年で約143億立方メートル/年です。雨水利用の1,278万立方メートルは、そのおよそ0.09%にあたります(当社が両者を割って算出)。水量として大勢を左右するものではありません。雨水利用の意味は、次に見る法律の目的のほうに表れています。
雨水の利用の推進に関する法律
「雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)」が2014年(平成26年)5月1日に施行されました。国土交通省の説明を整理すると、次の3つが決まっています(国土交通省「令和8年版 日本の水資源の現況」第3章・2026年9月9日確認)。
- ・国に、雨水の利用施設の総合的な施策を推進する責務が義務づけられました
- ・2015年(平成27年)3月10日の閣議決定により、国及び独立行政法人等は、新築建築物において雨水利用施設の設置率を原則100%とすることとなりました
- ・同日付で「雨水の利用の推進に関する基本方針」が決定され、施策に係る基本的な事項や推進に関する重要事項が定められました
目的も明記されています。「水資源の有効な利用を図るとともに、下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与すること」です。
ここが大事な点です。雨水利用のねらいは「水を節約すること」だけではありません。降った雨をいったん受け止めることで、下水道や河川に一気に流れ込むのを抑える——という役割が並んで書かれています。都市部の内水氾濫を考えれば、後者の意味は小さくありません。
なお、雨水利用の推進のために交付金制度や税制等の施策が講じられており、多くの地方公共団体が基本方針に即した計画等を策定して、助成措置や施策を行っています。家庭用の雨水タンクに助成金を出している自治体は少なくありません。導入を検討するときは、まずお住まいの自治体のページを確認してください。
実際の設備はどんな規模か
国土交通省の資料には、実際の施設の諸元が一覧で載っています。集水面積・貯留槽容量・年間の利用水量がそろって公表されている貴重な例なので、いくつか引きます(国土交通省水資源部調べ・2024時点・2026年9月9日確認)。
| 施設 | 用途 | 処理方式 | 集水面積 | 貯留槽容量 | 利用水量 |
|---|---|---|---|---|---|
| 能登空港ターミナル(石川県輪島市) | トイレ洗浄用水・消火用水 | 自然沈殿処理、消毒処理 | 3,700㎡ | 500㎥ | 7,239㎥/年 |
| 南町田グランベリーパーク(東京都町田市) | 旅客トイレ洗浄水 | 濾過処理 | 3,534㎡ | 150㎥ | 4,320㎥/年 |
| 平和堂HATOスタジアム(滋賀県彦根市) | トイレ洗浄水・フィールドへの散水 | 自然沈澱処理(沈砂槽)、濾過処理、消毒処理 | 2,500㎡ | 43㎥ | 3,417㎥/年 |
| 宇都宮市立南図書館(栃木県宇都宮市) | トイレ洗浄水・散水用水 | 自然沈殿処理、濾過処理、消毒処理 | 5,600㎡ | 138㎥ | 2,510㎥/年 |
| むつ市立第三田名部小学校(青森県むつ市) | トイレ洗浄水 | 自然沈殿処理、濾過処理、消毒処理 | 1,500㎡ | 98㎥ | 1,320㎥/年 |
この表から3つのことが読み取れます。
- ・用途はトイレ洗浄と散水がほとんどです。飲用はもちろん、風呂や洗濯も出てきません
- ・処理は「沈める・こす・消毒する」の組み合わせです。屋根から集めた水をそのまま使っているわけではありません
- ・貯留槽は集水面積のわりに小さいのが特徴です。宇都宮市立南図書館は集水面積5,600㎡に対して貯留槽138㎥。降った雨をすべてためるのではなく、使う分だけ回している設計だと分かります
家庭で使うときに押さえること
公共施設の例をふまえて、家庭での見方を整理します。
使える用途
国の定義に沿えば、散水(庭・植木)、洗車、打ち水といった屋外用途が中心になります。公共施設の事例で最も多いトイレ洗浄水は、家庭では配管を分ける工事が必要になるため、新築や大規模なリフォームのときの選択肢です。
飲用・調理・入浴には使いません。屋根やといには鳥のふん、落ち葉、大気中の汚れが乗ります。表2の公共施設が例外なく沈殿・ろ過・消毒のいずれかを組み合わせているのは、雑用水として使うためにもそれだけの処理が要るからです。
災害時の位置づけ
断水したときに雨水タンクの水が役立つのは、トイレを流す水としてです。飲み水の備えにはなりません。飲用の備蓄は別に用意しておく必要があります。
導入の手順
- 1. 【手順1】お住まいの自治体の助成制度を確認します。国の基本方針を受けて、多くの地方公共団体が助成措置を設けています。設置後の申請では対象外になることがあるため、先に調べます
- 2. 【手順2】使う用途を決めます。散水だけなのか、洗車も含むのか。用途によって必要な容量が変わります
- 3. 【手順3】設置場所を決めます。といからの取り込みが必要なので、雨どいの位置と、水を使う場所の近さの両方を見ます
- 4. 【手順4】ふたと虫の対策を確認します。開放したままの容器は、たまり水として蚊の発生源になります。市販の雨水タンクは目の細かいフィルターとふたが付いているものを選びます
- 5. 【手順5】あふれたときの逃がし先を確認します。オーバーフローの配管がどこへ流れるかを見ておかないと、隣地や基礎まわりに水が回ることがあります
まとめ
- ・国の定義では、雨水は「人の飲用以外の用途」に使う水です。例示されているのは冷却用水、水洗トイレ、散水、冷房用水です
- ・全国の雨水利用施設は4,563施設、年間利用量は1,278万立方メートル(2025年3月末)。関東臨海と東海で約52%を占め、用途は水洗トイレと散水が多くを占めます
- ・2014年5月1日に「雨水の利用の推進に関する法律」が施行され、国等の新築建築物では雨水利用施設の設置率を原則100%とすることが2015年3月10日に閣議決定されています
- ・法律のねらいは水資源の有効利用と、下水道・河川への雨水の集中的な流出の抑制の2つです
- ・公共施設の事例では、沈殿・ろ過・消毒を組み合わせたうえでトイレ洗浄水や散水に使っています。家庭でも飲用・調理・入浴には使いません
雨水タンクは、水道代を大きく減らす道具ではありません。降った雨をいったん受け止めるという、街の側の役割を家で少しだけ引き受ける設備だと考えると、置く意味が分かりやすくなります。
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出典
一次資料(政府機関の公表資料)
- ・国土交通省|令和8年版 日本の水資源の現況|雨水・再生水利用の定義(人の飲用以外の用途=冷却用水、水洗トイレの用、散水の用、冷房用水など)と4方式(個別循環・地区循環・広域循環・雨水利用)、雨水利用施設数4,563施設・雨水利用量1,278万立方メートル/年(2025年3月末)、関東臨海および東海で全国の約52%、用途は水洗トイレ・散水が多いこと、「雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)」の施行日(2014年5月1日)と国の責務、2015年3月10日の閣議決定(国及び独立行政法人等の新築建築物における雨水利用施設の設置率を原則100%)および「雨水の利用の推進に関する基本方針」の決定、目的(水資源の有効な利用と、下水道・河川等への雨水の集中的な流出の抑制)、交付金制度や税制等の施策と地方公共団体の助成措置、表2の施設別の諸元(能登空港ターミナル・南町田グランベリーパーク・平和堂HATOスタジアム・宇都宮市立南図書館・むつ市立第三田名部小学校)、および2023年の生活用水使用量約143億立方メートル/年|2026年8月7日公表・確認日2026年9月9日
- ・国土交通省|「令和8年版 日本の水資源の現況」を公表(報道発表資料)|同資料の公表日(令和8年8月7日)|確認日2026年9月9日
雨水利用の割合(約0.09%)は、上記資料の雨水利用量1,278万立方メートルを生活用水使用量約143億立方メートルで当社が割って求めた値です。助成制度の有無・内容は自治体によって異なります。導入前にお住まいの自治体の最新情報をご確認ください。