赤ちゃんのミルクは水道水で作れる?湯冷ましと70℃ルール
「赤ちゃんのミルクは水道水で作ってもいいの?」「湯冷ましってそもそも何?」——初めての育児では、調乳に使う水のことが気になるものです。この記事では、厚生労働省のサイトに掲載されているWHO/FAO(世界保健機関/国連食糧農業機関)のガイドライン概要を一次出所として、粉ミルクの調乳と水道水の関係、そして「70℃ルール」と呼ばれる基本手順を整理します。
本記事は公的なガイドラインの記載を紹介するもので、個別の医療上の助言をするものではありません。赤ちゃんの体調や調乳方法について心配な場合は、かかりつけの小児科やお住まいの自治体の案内をご確認ください。
結論:水道水で作れる。ただし「70℃以上」のルールを守る
先に結論です。日本の水道水は法令にもとづいて水質が管理されており、粉ミルクの調乳には「沸かした水道水」が広く使われています。そして水の種類よりも大切なのが、WHO/FAOのガイドライン概要に示された調乳の手順です。概要では「湯は70℃以上に保ち、沸かしてから30分以上放置しないようにします」と説明されています(厚生労働省掲載 WHO/FAOガイドライン概要・2026年8月調査)。
つまり、「どの水を使うか」の前に「一度沸かして、70℃以上の湯で調乳する」という手順があり、この手順を守ることが調乳の基本になっています。本記事では、この70℃ルールの中身と、水道水の安全性がどう管理されているか、そして「湯冷まし」の正しい位置づけを順に見ていきます。

WHO/FAOガイドラインの調乳ルールを確認する
粉ミルクの調乳について国際的に参照されているのが、WHO/FAOの「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」です。厚生労働省のサイトにその概要が掲載されており、家庭での調乳の基本手順が具体的に書かれています。ここでは、その中から特に大切な4つのルールを原文とともに紹介します。
ルール1:湯は70℃以上・沸かしてから30分以上放置しない
概要には「湯は70℃以上に保ち、沸かしてから30分以上放置しないようにします」とあります。ポイントは2つで、調乳に使う湯の温度を70℃以上に保つこと、そして沸かした湯を長時間放置してから使わないことです。時間がたつほど湯の温度は下がっていくため、「沸かしてから30分以上放置しない」という時間の目安が、70℃以上を保つことと対になっています。
そのうえで、粉ミルクの入れ方についても「正確な量の粉ミルクを哺乳ビン中の湯に加えます」と記載されています。湯冷ましなどのぬるい水で溶かすのではなく、70℃以上の湯に正確な量の粉を加える——これがガイドライン概要の示す流れです。

ルール2:調乳したらすぐに授乳できる温度まで冷やす
70℃以上の湯で作ったミルクは、そのままでは赤ちゃんに飲ませられません。概要では「混ざったら、直ちに流水をあてるか、冷水又は氷水の入った容器に入れて、授乳できる温度まで冷やします」と説明されています。哺乳びんの外側から流水や冷水で冷やす、という方法です。
ここで注目したいのは、「熱い湯と冷たい水を混ぜて温度を調整する」のではなく、「70℃以上の湯で作ってから、外側から冷やす」という順番になっている点です。この順番が、次に説明する「湯冷まし」の位置づけを考えるうえで大切になります。
ルール3:調乳後2時間以内に使わなかったミルクは捨てる
作り置きについては、概要に「調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは捨てましょう」と明記されています。せっかく作ったミルクを捨てるのはもったいなく感じますが、ガイドラインはこの時間の線引きをはっきり示しています。飲み残しを取っておいて後で飲ませる、まとめて作って常温に置いておく、といった運用はこのルールに合いません。
ルール4:ミルクを温めるときに電子レンジは使わない
概要では「ミルクを温める際には…電子レンジは使用しないでください」とされています。理由として挙げられているのは、ホット・スポット(部分的に熱くなるムラ)によって赤ちゃんがやけどをするおそれへの注意です。電子レンジで温めると外側はぬるくても内側の一部だけが熱くなることがある、という加熱ムラの問題であり、温め直しには電子レンジを使わない、と覚えておきましょう。

水道水の安全性はどう管理されているか
「水道水で作れる」と言える背景には、日本の水道水が法令にもとづいて管理されているという事実があります。ここでは2つの仕組みを紹介します。
水質基準52項目による管理
日本の水道水には52項目の水質基準が定められており、そのすべてに適合した水だけが蛇口に届きます。硬度についても「カルシウム、マグネシウム等(硬度)300mg/L以下」という基準値があり、さらに、よりおいしい水を目指す水質管理目標設定項目では「カルシウム、マグネシウム等(硬度)10mg/L以上100mg/L以下」という目標値が設定されています(環境省「水質基準項目と基準値」・2026年8月調査)。
水道水がそもそも飲用としてどう管理されているかの全体像は、水道水はそのまま飲めるのかを解説した記事で詳しく整理しています。
残留塩素による衛生管理
もう一つの仕組みが塩素消毒です。東京都水道局の解説によると、塩素消毒の目的は病原性微生物の殺菌であり、「蛇口で検出される塩素の濃度(残留塩素濃度)を0.1mg/L以上保持するよう定められています(水道法施行規則第17条第3号)」とされています。また、快適性の観点から残留塩素濃度の上限目標は1mg/L以下とされています(東京都水道局「塩素消毒」・2026年8月調査)。
つまり水道水は、蛇口に届くまで消毒効果が保たれるように管理されている水です。そして調乳ではさらに「一度沸かす」という手順が加わります。水質基準による管理、残留塩素による衛生管理、そして沸かして70℃以上で調乳するというガイドラインの手順——この積み重ねが「水道水でミルクを作れる」の中身です。

湯冷ましとは何か:「冷ます水」ではなく「沸かした湯を冷ましたもの」
調乳の話題でよく出てくる「湯冷まし」という言葉を整理しておきます。湯冷ましとは、一度沸かした湯を飲める温度まで冷ましたものを指します。ここで大切なのは、ガイドライン概要の手順では、粉ミルクを溶かすのはあくまで「70℃以上の湯」だという点です。ぬるい湯冷ましで粉を溶かす手順は、概要には書かれていません。
また、熱いミルクに湯冷ましを注ぎ足して温度を下げる方法が紹介されることもありますが、概要に記載されている冷まし方は「流水をあてるか、冷水又は氷水の入った容器に入れて」冷やす方法です。本記事では一次出所に書かれた手順の範囲で、調乳の流れを次のように整理します。
- ・【手順1】水道水をやかんなどで沸かす
- ・【手順2】沸かした湯を30分以上放置せず、70℃以上を保ったまま調乳に使う
- ・【手順3】正確な量の粉ミルクを、哺乳びんの中の湯に加えて溶かす
- ・【手順4】混ざったら直ちに、流水をあてるか冷水・氷水の入った容器に入れて、授乳できる温度まで冷やす
- ・【手順5】調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは捨てる
この流れを見ると、「湯冷ましを作っておく」ことよりも、「沸かした湯を70℃以上のうちに使い、作ったミルクを直ちに冷ます」ことが手順の中心だとわかります。湯を沸かすところから授乳までがひとつながりの手順になっている、というのがガイドライン概要の考え方です。
調乳ルールの早見表
| 場面 | ガイドライン概要の記載 | ポイント |
|---|---|---|
| 湯の温度 | 70℃以上に保ち、沸かしてから30分以上放置しない | 沸かした湯は放置せずに使う |
| 粉の溶かし方 | 正確な量の粉ミルクを哺乳ビン中の湯に加える | ぬるい水ではなく70℃以上の湯で溶かす |
| 冷まし方 | 直ちに流水・冷水・氷水で授乳できる温度まで冷やす | 哺乳びんの外側から冷やす |
| 作り置き | 調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは捨てる | 飲み残し・常温放置を取っておかない |
| 温め直し | 電子レンジは使用しない | 加熱ムラ(ホット・スポット)によるやけどへの注意 |
迷ったときは表1に立ち返ってください。どの水を使うかにかかわらず、この手順のルールは共通です。夜間の授乳や外出先での調乳など、慌ただしい場面ほど手順のどこかを省略したくなりますが、そういうときこそ「70℃以上」「2時間以内」「電子レンジ不可」という3つの線引きだけでも思い出せるようにしておくと安心です。
調乳の水についてよくある疑問
ミネラルウォーターで作ってもいいですか?
市販のミネラルウォーターには軟水から硬水までさまざまな硬度の製品があります。調乳の場面では一般に硬度の低い軟水を選び、硬水を避けるとされることが多いのですが、その理由やミネラルとの関係の詳しい整理は、赤ちゃんと硬水について解説した記事に委ねます。ミネラルウォーターを使う場合も、70℃以上で調乳するなどの手順のルールは同じです。
ウォーターサーバーの水は使えますか?
ウォーターサーバーには温水機能を備えた機種が多く、調乳の場面で使われることがあります。機種ごとの温水の温度やチャイルドロックなどの仕様は製品によって異なるため、サーバーでの調乳を検討している方は赤ちゃんのミルクとウォーターサーバーの記事を参考にしてください。また、赤ちゃんのいる家庭向けの機能やプランの比較は赤ちゃん対策で選ぶウォーターサーバーの記事で整理しています。どの機器を使う場合も、本記事で紹介したガイドラインの手順が土台になります。
ミルクの作り置きはできますか?
ガイドライン概要の記載は「調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは捨てましょう」です。本記事ではこの記載の範囲を超える保存方法の紹介はしません。夜間の授乳などで調乳の負担を減らしたい場合の工夫については、かかりつけの小児科やお住まいの自治体の案内をご確認ください。
沸かした湯が70℃まで下がったかは、どう確かめればいいですか?
ガイドライン概要が示しているのは「70℃以上に保ち、沸かしてから30分以上放置しない」という枠であり、家庭での具体的な温度の測り方までは概要に書かれていません。温度が気になる場合は、調理用の温度計で湯温を確かめる方法があります。大切なのは「下がりすぎていないか」を気にすることで、沸かした湯を長く放置しないという時間の目安を守っていれば、この枠の中に収まります。
なぜ70℃なのですか?
本記事が参照したのはガイドラインの概要版であり、温度設定の科学的な根拠の詳細までは概要には展開されていません。本記事では一次出所に書かれていないことを推測で補わない方針のため、「ガイドラインが70℃以上と定めている」という事実の紹介にとどめます。より詳しく知りたい方は、厚生労働省のサイトに掲載されている資料をご確認ください。
まとめ:水の種類より先に、手順のルールを押さえる
赤ちゃんのミルクと水道水について、本記事の内容をまとめます。
- ・日本の水道水は水質基準52項目と残留塩素の管理のもとで供給されており、沸かした水道水は調乳に広く使われている
- ・WHO/FAOガイドライン概要の基本は「湯は70℃以上・沸かしてから30分以上放置しない」「調乳後2時間以内に使わなかったミルクは捨てる」「温め直しに電子レンジは使わない」
- ・粉ミルクは70℃以上の湯で溶かし、作ったミルクを流水・冷水で直ちに冷ます——「湯冷ましで溶かす」流れではない
- ・硬度・ミネラルの観点からの水選びは別記事で、ウォーターサーバーでの調乳も別記事で詳しく整理している
調乳は毎日のことだからこそ、特別な水を用意することよりも、手順のルールを正しく押さえることが先です。そのうえで、水の硬度や機器の使い勝手を家庭の事情に合わせて選んでいけば十分です。
本記事の記載は2026年8月時点の調査にもとづきます。ガイドラインや基準の内容は変わる場合があるため、最新の情報は厚生労働省・環境省・各水道事業者の公式ページでご確認ください。また、本記事は医療上の助言をするものではありません。赤ちゃんの体調や調乳について心配な場合は、かかりつけの小児科やお住まいの自治体の案内をご確認ください。
出典
一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)
- ・厚生労働省|「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」について(Q&A)|WHO/FAO共同作成ガイドラインの掲載元|確認日2026-08-30
- ・厚生労働省掲載|乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの概要(FAO/WHO共同作成)|70℃以上・30分・調乳手順・2時間ルール・電子レンジ不使用の根拠|確認日2026-08-30
- ・環境省|水質基準項目と基準値(52項目)|硬度300mg/L以下・水質管理目標10〜100mg/Lの根拠|確認日2026-08-30
- ・東京都水道局|水質に関するトピック「塩素消毒」|残留塩素0.1mg/L以上(水道法施行規則第17条第3号)・上限目標1mg/Lの根拠|確認日2026-08-30