集合住宅の写真を背景に貯水槽方式と直結給水の建物対比を描いたイラスト(給水方式の記事)

貯水槽方式と直結給水の違い

マンションやビルの水道水は、蛇口に届くまでの経路が建物によって異なります。大きく分けると、配水管から蛇口まで直接つながる「直結給水方式」と、建物の受水槽にいったん水をためる「貯水槽水道方式」の二つです。どちらの方式かによって、日々の管理義務と、管理が不十分な場合に起こりうることが変わります。それにもかかわらず、自宅がどちらの方式なのかを意識したことがない、という人は少なくないはずです。

本記事では、東京都水道局の公式資料にもとづいて二つの方式の定義と管理義務の違いを整理し、最後に「自宅の給水方式を知っておく意義」をまとめます。

結論:違いは「水をためるか」と「誰が管理するか」

先に結論です。二つの方式の違いは、「途中で水をためるかどうか」と「その管理を誰が担うのか」という次の2点に集約されます。

貯水槽方式が劣った方式というわけではありません。「事故や災害時等に、貯水槽内に残っている水は使用できます」という長所も公式に挙げられています(東京都水道局「給水方式について」・2026年8月調査)。大切なのは、自宅がどちらの方式で、誰がどんな管理をしているのかを知っておくことです。以下で順に見ていきます。

直圧直結給水方式・増圧直結給水方式・貯水槽水道方式の3つを建物の断面で並べ、受水槽と高置水槽の位置を示した図
直結給水は途中で水をためません。貯水槽水道方式は受水槽と高置水槽を経由します。図:水のソムリエ編集部作成

給水方式の定義:直結2方式と貯水槽方式

東京都水道局は、給水方式を次のように説明しています(東京都水道局「給水方式について(貯水槽水道方式と直結給水方式の違い)」・2026年8月調査)

直圧直結給水方式:配水管の水圧で3階まで

直圧直結給水方式は、「配水管の水圧で3階まで直圧給水する方式」です。配水管が持っている水圧をそのまま使って建物内へ給水するため、ポンプも貯水槽も使いません。戸建て住宅や低層の建物で使われる、もっとも基本的な方式です。

「3階まで」という表現からわかるとおり、配水管の水圧だけで押し上げられる高さには限りがあります。建物が高くなるほど、水圧をどう補うかという工夫が必要になり、それが次の増圧直結給水方式や貯水槽水道方式につながっていきます。

増圧直結給水方式:ポンプで中高層階まで

増圧直結給水方式は、「給水管に増圧ポンプを設置し、水圧の不足分を増圧して、中高層階まで直結給水する方式」です。配水管の水圧だけでは届かない中高層階にも、水をためることなく直接給水できます。直圧・増圧のいずれも「直結給水」であり、配水管から蛇口までが一本につながっている点は共通です。

建物の屋上に設置された白い高置水槽
貯水槽水道方式では、屋上の高置水槽へくみ上げた水が自然流下で各戸へ届きます(イメージ)。写真:Shubham Prajapat/Pexels

貯水槽水道方式:受水槽にためてから給水

貯水槽水道方式は、「水をいったん受水槽にためて、その後ポンプを使って、屋上の高置水槽へくみ上げ、自然流下により給水する方式」です。建物の足元などにある受水槽と、屋上の高置水槽という二つの「ため」を経由して、各戸の蛇口へ水が届きます。マンションやビルで広く使われてきた方式です。

高い場所にためた水を自然流下——つまり重力で落として——各戸へ届けるため、高さのある建物でも各階に給水できるのがこの方式の仕組みです。一方で、配水管から蛇口までの間に「水をためて滞留させる場所」ができるという点が、直結給水との構造的な違いになります。この「ため」の部分をきれいに保つ責任を誰が負うのかが、次に見る管理義務の話です。

二つの方式の長所を一覧表で比較

方式水の経路公式に挙げられている長所
直結給水方式(直圧・増圧)配水管から蛇口まで直接(直圧は3階まで・増圧は中高層階まで)蛇口まで直接給水できる/貯水槽の点検・清掃が不要/敷地を有効活用できる
貯水槽水道方式受水槽にためて、ポンプで高置水槽へくみ上げ、自然流下で給水「事故や災害時等に、貯水槽内に残っている水は使用できます」
表1:直結給水方式と貯水槽水道方式の比較。東京都水道局「給水方式について」にもとづく(2026年8月調査)

直結給水の長所は「ためない」ことに由来し、貯水槽方式の長所は「ためている」ことに由来します。配水管から蛇口まで直接つながっていれば、途中で水がとどまる場所がなく、貯水槽の点検・清掃という手間も発生しません。敷地を有効活用できるという長所も、受水槽の設置スペースが不要になることによるものです。一方で、断水などの非常時に槽内の残り水を使えるのは貯水槽方式ならではの強みで、方式の優劣は一概には決められません。違いが表れるのは、次に見る「管理義務」です。

管理義務の違い:年1回の清掃と「簡易専用水道」の検査

ここからが二つの方式のもっとも大きな違いです。貯水槽水道方式では、水をためる設備が建物側にあるため、受水槽以降の管理は建物の設置者(所有者・管理者)の責任になります。つまり、同じ水道水でも「建物に入ってからの衛生管理を誰が担うのか」が方式によって変わるのです。東京都水道局の「貯水槽水道に関するQ&A」には、貯水槽の設置者に関わる義務として次の内容が明記されています(東京都水道局「貯水槽水道に関するQ&A」・2026年8月調査)

つまり貯水槽方式の建物では、少なくとも年1回の清掃が行われているはずであり、規模の大きい貯水槽(有効容量10m³超)なら、登録検査機関による年1回の検査も受けている、というのが法令上の姿です。一方、直結給水方式にはそもそも貯水槽がないため、この清掃・検査の枠組み自体が不要です。表1で直結給水の長所として「貯水槽の点検・清掃が不要」が挙げられているのは、この管理の枠組みごと不要になるという意味です。

住む側の視点で整理すると、次のようになります。

管理を怠るとどうなるか:公式資料の記載

では、貯水槽の管理が不十分だと何が起こりうるのでしょうか。清掃や検査が義務づけられているのは、裏を返せば、放置すれば水質に影響が出うるからです。同じQ&Aは、管理を怠った場合について次のように記載しています(東京都水道局「貯水槽水道に関するQ&A」・2026年8月調査)

ここで挙げられている「残留塩素」について補足します。水道水は、病原性微生物の殺菌を目的として塩素消毒が行われており、「蛇口で検出される塩素の濃度(残留塩素濃度)を0.1mg/L以上保持するよう定められています(水道法施行規則第17条第3号)」(東京都水道局「塩素消毒」・2026年8月調査)。蛇口の時点で一定の濃度を保つことが、水道水の衛生を支える仕組みになっているわけです。

貯水槽の管理が不十分なまま水が滞留して残留塩素の濃度が下がると、この消毒の仕組みが働かなくなることがある——これが公式資料の指摘の意味するところです。裏を返せば、法定どおりの清掃・検査が行われている貯水槽であれば、こうした事態を防ぐための管理がなされているということでもあります。いたずらに不安がる必要はなく、「自分の建物で管理が行われているか」を確認することが本質です。

晴れた日に外から見た中層の集合住宅
【手順1】は建物の外まわりを見ること。受水槽や高置水槽の有無が手がかりになります(イメージ)。写真:Jakub Pabis/Pexels

自宅の給水方式を確認する手順

自宅がどちらの方式かは、次の流れで確認できます。特別な知識や道具は必要なく、日常の範囲でできる確認ばかりです。

【手順1】建物の外まわりを見てみます。敷地や建物の足元に受水槽(大きなタンク)、屋上に高置水槽があれば、貯水槽水道方式の可能性が高いと考えられます。見当たらない場合でも設備の配置は建物によって異なるため、外観だけで断定はせず、次の手順で確認します。

【手順2】賃貸なら管理会社や大家さんに、分譲マンションなら管理組合に、給水方式と貯水槽の清掃・検査の実施状況を確認します。貯水槽方式であれば、年1回の清掃は法定義務なので、実施記録の有無は確認のポイントになります。有効容量が10m³を超える貯水槽なら、簡易専用水道としての年1回の検査を受けているかもあわせて聞いてみるとよいでしょう。

【手順3】わからない場合は、お住まいの地域の水道局の案内を確認します。東京都水道局のように、給水方式や貯水槽管理の解説ページを公開している水道局もあります。管理の制度は水道法にもとづく全国共通の枠組みなので、他の地域にお住まいの方も、本記事で見てきた「年1回の清掃」「10m³超は簡易専用水道」という考え方を手がかりに確認できます。

自宅の方式を知る意義:水の使い方を選ぶ出発点になる

自宅の給水方式を知っておくことには、はっきりした意義があります。

災害への備えという点では、給水方式にかかわらず、家庭での飲料水の備蓄も基本になります。首相官邸の案内では、飲料水は3日分(1人1日3リットルが目安)を備えておくこととされています(首相官邸「災害に対するご家庭での備え」・2026年8月調査)。貯水槽方式の「槽内の残り水を使える」という長所は、あくまで建物側の仕組みの話であり、各家庭の備蓄と組み合わせて考えるのが現実的です。

また、自宅の水回りの環境を把握しておくことは、浄水機器やウォーターサーバーを検討する際の前提知識にもなります。たとえば水道直結型のウォーターサーバーは、自宅の水道からサーバーへ配管をつなぐ方式のため、設置の流れや工事の内容を知っておくと検討がスムーズです。詳しくは「水道直結ウォーターサーバーの工事」の記事で解説しています。水道直結型の代表的なサービスの仕組みについては「ウォータースタンドとは」の記事をご覧ください。

「水道水がどういう経路で届いているか」という本記事の視点は、こうした機器を選ぶ場面でも、「自宅の水道環境に何をつなぐのか」を具体的にイメージする助けになります。方式の知識は、それ自体が目的ではなく、水にまつわる判断を自分でできるようになるための土台です。

まとめ

貯水槽方式と直結給水の違いを、東京都水道局の公式資料にもとづいて整理しました。本記事の要点は次のとおりです。

ふだん何気なくひねっている蛇口の向こう側には、建物ごとに異なる水の経路があります。引っ越しや住まい探しの際に給水方式まで気にする人は多くありませんが、方式と管理状況は水の衛生に直結する情報です。まずは自宅の方式を確認するところから、毎日の水との付き合い方を見直してみてください。

出典

一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)