空気製水(AWG)とは?水は“買う・引く”から「生み出す」へ
「もし、明日から水が止まったら?」
経営者・施設責任者、あるいは一般の方でも、この問いが頭をよぎることがあるでしょう。
BCP(事業継続計画)の策定、現場への指示、備蓄の見直し、……。対策を重ねても、災害時に「物流やインフラが止まったらどうするか」という不安は、どこかに残りがちです。
断水や災害は避けにくい出来事かもしれません。だからこそ大切なのは、「前提条件を理解したうえで、複数の手段を組み合わせて備える」こと。その選択肢の一つとして、今回は「空気製水(AWG)」を、できるだけフラットに整理します。
AWGは魔法の杖ではありません。一方で、期待値を適正に置き、用途を絞って運用できれば、断水時の“粘り”を増やす手段になり得ます。
目次
空気製水とは?
空気製水のAWGは「Atmospheric Water Generator」の略称です。
仕組みはシンプルで、空気中の水蒸気を冷却・吸着などの方法で集めて水にする装置を指します。
夏の暑い日、冷えた瓶やグラスの表面に水滴がつく「結露」を思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません。AWGは、こうした現象を機器の中でコントロールして水を得ます。
なお、装置によってはフィルターやUVなどの機能を備えるものもありますが、「どんな用途にもそのまま使える」とは限りません。
特に飲用提供まで想定する場合は、水質確認・衛生運用・管理体制(必要に応じて行政への確認を含む)を前提に、慎重に検討する必要があります。
水の確保は複数手段で考える
これまで施設の水は「水道から引く」か「購入して備える」が中心でした。ただ、災害時は“一本足”が弱点になります。水も電気と同じで、複数の確保手段を持っておく発想が現実的です。
| 水の確保方法 | ここが強い(メリット) | ここに注意(リスク) |
|---|---|---|
| 上水道(引く) | 平時は安定している。 | 非常時は断水・配管損傷・復旧待ちで時間がかかる。 |
| 購入・配送(買う) | 平時は安定している。品質は読みやすい。 | 物流停止・欠品・保管場所の制約がある。 |
| 備蓄(ためる) | 初動対応に強い。 | 量の上限・入替え管理・保管負担が発生する。 |
| AWG(生み出す) | 条件が合えば、現地で水を確保する補助線になり得る。 | 温湿度・電源・設置環境・保守に左右される。 |
AWGは水道を置き換えるものではありません。断水や物流停止といった「厳しいシナリオで、備えの幅を広げる選択肢」として位置づけるのが安全です。
「備蓄を増やす」は正論でも、スペース・予算・入替え管理の負担が現場にのしかかります。
だからこそ、設備を足す場合も“導入して終わり”ではなく、日常の運用として回るかを起点に考えることが重要です。
AWGは条件で性能が変わる
ここからが重要です。AWGはカタログスペックだけで判断すると、導入後にギャップが起きやすい設備です。環境によって生成量や運用の難易度が変わります。
- ・温度・湿度:空気中の水分量が少ない季節や環境では、生成量が落ちやすい。
- ・電源の確保:多くの機種は電力を使うため、停電時に動かすなら非常用電源等を含めた全体設計が必要。
- ・設置環境:吸気・排熱・動作音・結露対策などを詰めないと、現場ストレスやトラブルの原因に。
- ・保守・衛生管理:フィルター交換やタンク清掃などが止まると性能も衛生面も維持できない。
AWGの導入は、機器購入というより「運用設計」のプロジェクトです。
AWGで“できること”と“できないこと”を分けて考える
できること
ポイントは、すべての水をAWGで賄おうとしないことです。AWGは「命と衛生を守るための用途」に絞ると、現実的に活きやすくなります。
- ・衛生維持の補助:清拭(体を拭く)、環境清掃、手洗いなど、「最低限の衛生」を支える用途。
- ・備蓄を使い切った後の“粘り”:給水支援や物流が戻るまでの空白を埋める補助線。
- ・心理的な安定:「一定条件下で自分たちでも水を確保できる」ことが、現場の混乱を抑える一因に。
注意点
一方で、次の点は最初から割り切って考えるのが安全です。
- ・生成量は変動する:温湿度などの条件で日々の生成量は上下。
- ・停電対策は別途必要:電源が落ちれば止まるため、発電機・蓄電池等との組み合わせを検討。
- ・飲用提供は別途要件(検査・衛生運用・必要に応じて行政確認)
仕組みは代表的には2系統(冷却式/吸湿式)
AWGには、大きく分けて2つの方式があります。
- ・コンプレッサー式(冷却式):空気を冷やして結露させる方式。
- ・吸湿式:吸湿材などに水分を吸わせ、加熱等で取り出す方式。
どちらが優れているかではなく、施設の気候・設置環境・運用体制にどちらが合うかが重要です。
空気製水(AWG)の仕組みをもう少し具体的に知りたい方はこちら(準備中)
責任者向け:期待値を適正化する「導入前チェック」
導入を検討する際、現場に丸投げにせず、責任者として先に整理しておきたいポイントがあります。ここが曖昧だと、導入後に「思っていたのと違った」が起きやすくなります。
- ・どの用途の水を最優先で守るか(飲用/手洗い/清掃など)
- ・平時にどう使うか(非常時専用だと不具合に気づきにくい)
- ・停電時の運用シナリオ(非常用電源の容量、燃料、切替手順と担当)
- ・日常点検の担当と責任の所在(誰が、どこまで、いつやるか)
- ・設置場所と近隣配慮(動作音・排熱・結露などのトラブルを防げるか)
AWGが“向く/向かない”は、環境の条件で決まる
AWGは安価な設備ではありません。だからこそ、合う環境/合わない環境は先に切り分けた方が安全です。換気設計や電源の余裕、運用体制によって、実用性は大きく変わります。
おわりに

災害対策に「これさえあれば100%正解」はありません。
自治体の運用やガイドライン、そして技術は変わり得ます。だからこそ、条件を理解し、複数の手段を組み合わせて備えることが、施設運営の強さにつながります。