水道水のくみ置きは何日もつ?災害への備え方

災害への備えとして、水道水をくみ置きしておく方法があります。ペットボトルの水を買わなくても、蛇口の水で今日から始められる手軽な備えですが、「何日もつのか」「どんな容器に入れればよいのか」が分からないと不安が残ります。本記事では、東京都水道局が公表している案内を根拠に、くみ置きの正しい手順と保存できる日数、期限が過ぎた後の活用方法までを整理します。

結論:常温で3日程度・冷蔵庫で10日程度が目安

先に結論です。東京都水道局では、水道水のくみ置きについて「塩素の消毒効果は、直射日光を避けて常温で保存すれば3日程度、冷蔵庫で保存すれば10日程度持続します」と案内しています(東京都水道局「くみ置く際の留意事項」・2026年8月調査)

つまり、飲み水としてのくみ置きの目安は常温3日程度・冷蔵10日程度です。ポイントは、この日数が「塩素の消毒効果が持続する期間」を根拠にしていることです。水道水に含まれる塩素が雑菌の繁殖を抑えてくれるからこそ、一定期間の保存ができる——この仕組みを押さえておくと、後述する「やってはいけない操作」の理由もすっきり理解できます。

なお、本記事で紹介する日数や方法は東京都水道局の案内にもとづくものです。水道水の水質や案内の内容は地域によって異なる場合があるため、実際に備える際は、お住まいの水道局の案内もあわせてご確認ください。

くみ置きの手順:3つのポイント

東京都水道局の案内をもとに、くみ置きの手順を3つに整理します。特別な道具は不要で、清潔な容器さえあればすぐに始められます。

容器に半分だけ水を入れて空気の層が残った状態と、口元まで一杯に入れた状態を並べて描いたイラスト
半分だけ入れてふたをするのは避け、あふれる寸前まで注いでからふたを閉めます。図:水のソムリエ編集部作成

【手順1】清潔でふたのできる容器を用意する

まず、清潔でふたのできる容器を用意します。東京都水道局の案内では「清潔で蓋のできる容器に、できるだけ空気に触れないよう、口元まで一杯に水道水を入れてください」とされています(東京都水道局「くみ置く際の留意事項」・2026年8月調査)。使い終わったペットボトルを使う場合は、中をよく洗ってから使いましょう。容器に汚れが残っていると、せっかくの塩素の効果が十分に働かないことも考えられます。2リットルのペットボトルなら扱いやすく、冷蔵庫にも収まりやすいサイズです。

台所の水栓から容器に水道水を注いでいるところ
容器の口元まで一杯に入れて空気の層を残さないようにし、ふたを閉めます(イメージ)。写真:RDNE Stock project/Pexels

【手順2】空気が残らないよう口元まで一杯に入れる

次に、水道水を容器の口元までぎりぎり一杯に入れます。「できるだけ空気に触れないよう」という部分がポイントで、容器の中に空気の層を残さないことが大切です。半分だけ入れてふたをする、といった入れ方は避け、あふれる寸前まで注いでからふたを閉めましょう。

【手順3】直射日光を避けた場所で保存する

最後に、直射日光の当たらない場所に置きます。常温なら3日程度、冷蔵庫に入れれば10日程度が目安です。日の当たる窓際などは避け、廊下の収納や流しの下など、光の入らない場所を選びましょう。夏場は特に室温が上がりやすいため、家の中でも涼しい場所を選ぶとより安心です。容器に「くみ置きした日付」をメモしておくと、入れ替えのタイミングが一目で分かって便利です。

くみ置き水の保存目安を、常温3日程度・冷蔵庫10日程度として左右に並べた図
常温で3日程度・冷蔵庫で10日程度。塩素の消毒効果が続く期間が根拠です。図:水のソムリエ編集部作成

日数の根拠は「塩素の消毒効果」

常温3日程度・冷蔵10日程度という日数は、水道水に含まれる塩素の消毒効果が持続する期間にもとづいています。水道水には、蛇口に届くまで消毒効果を保つよう塩素が含まれており、これが保存中の雑菌の繁殖を抑える役割を果たします。塩素がどんな役割を持ち、どんな基準で管理されているかは、残留塩素とは何かで詳しく解説しています。

農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」でも、水道水の備蓄は塩素による消毒効果により3日程度は飲料水として使用可能と説明されており、清潔な容器に口まで満たして、直射日光を避けた室温の低い場所に置くことが案内されています(農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」・2026年8月調査)。東京都水道局の案内と同じ考え方が、国のガイドでも示されているわけです。

なお、3日程度・10日程度という日数はあくまで目安です。保存中の温度や容器の状態によって条件は変わり得るため、目安の範囲内であっても、飲む前に見た目やにおいに違和感がないかを確かめる習慣をつけておくと、より安心して活用できます。

浄水器の水や煮沸した水は、くみ置き保存に向かない

ここで注意したいのが、くみ置きに使う水は「蛇口から出たままの水道水」であることです。東京都水道局は「浄水器を通したり、沸かしたりすると、消毒用の塩素が除去されてしまいます」と案内しています(東京都水道局「くみ置く際の留意事項」・2026年8月調査)。塩素が抜けた水は、保存中の雑菌の繁殖を抑える仕組みを失っているため、くみ置き保存には向きません。

これは、水道水のカルキ臭を和らげるために煮沸や浄水器で塩素を除く、いわゆる「カルキ抜き」とはちょうど正反対の操作です。おいしく飲むためには塩素を除き、保存するためには塩素を残す——目的によって扱いが逆になる点は、水道水と付き合ううえで覚えておきたいポイントです。カルキ抜きの方法と考え方は残留塩素の解説記事で扱っていますので、あわせてお読みください。

保存期間が過ぎたら生活用水として使う

くみ置きした水は、保存期間が過ぎたら捨てるしかないのでしょうか。そんなことはありません。飲用の目安を過ぎた後の使い道まで含めて案内されているのが、くみ置きという備え方の実用的なところです。東京都水道局は「保存期間が過ぎたら、トイレなどの生活用水にお使いください」と案内しています(東京都水道局「くみ置く際の留意事項」・2026年8月調査)

災害時には、飲み水だけでなくトイレを流す水や手洗いの水も必要になります。飲用の目安期間を過ぎたくみ置き水は、そうした生活用水として十分役立ちます。「期限が来たら生活用水に回し、新しい水をくみ直す」というサイクルにすれば、水を無駄にすることなく、常に新しいくみ置きを保てます。

この「飲用の期限を過ぎても捨てずに使い道がある」という点は、くみ置きという備え方の大きな利点です。ペットボトルの水と違って費用はほぼ水道代だけなので、入れ替えのたびに損をした気持ちになることもありません。気軽に始めて、気軽に回し続けられる備えといえます。

保存日数と使いみちの整理表

ここまでの内容を、保存の状態ごとに一覧表で整理します。くみ置きを始めるときの目安として活用してください。

保存の状態飲用の目安目安を過ぎたら
常温(直射日光を避ける)3日程度トイレなどの生活用水に使う
冷蔵庫で保存10日程度トイレなどの生活用水に使う
浄水器を通した水・煮沸した水くみ置き保存には向かない(塩素が除去されているため)
表1:水道水くみ置きの保存目安と期限後の使いみち。東京都水道局「くみ置く際の留意事項」の案内をもとに整理(2026年8月調査)

入れ替えを習慣にする運用例

常温3日程度という目安から考えると、常温保存分は3日ごとに入れ替えるサイクルになります。たとえば「月・木の朝にくみ直す」のように曜日を決めてしまうと、日数を数える手間がなくなり、習慣として続けやすくなります。入れ替えで出た古い水は、掃除や植物の水やり、トイレ用のストックなどに回せば無駄がありません。冷蔵分は10日程度もつため、「週末にまとめてくみ直す」といったゆるやかなサイクルでも目安に収まります。

食卓で、容器から透明なグラスへ水を注いでいるところ
容器に直接口を付けず、コップに移して飲みます(イメージ)。写真:Farhad Ibrahimzade/Pexels

飲むときは容器に直接口を付けない

くみ置きした水を飲むときにも、ひとつ注意があります。東京都水道局の案内では「くみ置きした水は雑菌が入らないよう、直接口を付けずにコップなどに注いでから飲みましょう」とされています(東京都水道局「くみ置く際の留意事項」・2026年8月調査)

ペットボトルに口を付けて飲むと、口の中の雑菌が容器内に入り、残りの水の傷みが早まる原因になり得ます。少し手間でも、コップに注いでから飲む習慣にしておくと安心です。これは災害時に限らず、ふだんの飲み物の保存にも通じる考え方です。

どのくらいの量をくみ置きすればよいか

量の目安についても、東京都水道局は「人間に必要な水の量は1人1日3リットルです。この量を目安に、3日分程度のくみ置きをしてください」と案内しています(東京都水道局「くみ置く際の留意事項」・2026年8月調査)。1人なら9リットル、4人家族なら36リットルが3日分の目安です。

2リットルのペットボトルに換算すると、1人分でも4〜5本になります。冷蔵庫にすべて入れるのは難しい量なので、常温保存分と冷蔵分を組み合わせて回すのが現実的です。最初から全量をくみ置きでそろえようとせず、まずは2リットルボトル2〜3本分から始めて、容器が増えたら量を広げていく、という進め方でも構いません。大切なのは、止まらずに回し続けられる仕組みにすることです。世帯人数別の必要量の早見表や、備蓄量の数え方の注意点は、備蓄水は1人何リットル必要?根拠と目安で詳しく整理しています。

くみ置きでよくある疑問

容器は何を使えばよい?

案内で求められている条件は「清潔で蓋のできる容器」です。飲み終わったペットボトルを再利用する場合は、中を水でよくすすぎ、清潔な状態にしてから使いましょう。ふたが緩んでいたり、内側に汚れやにおいが残っていたりする容器は避けたほうが無難です。大きめのポリタンクを使う場合も、考え方は同じです。

冷蔵庫に入りきらないときは?

1人1日3リットル×3日分をすべて冷蔵保存するのは、庫内のスペース的に難しいご家庭が多いはずです。その場合は、飲用に使う分だけ冷蔵し、残りは直射日光の当たらない涼しい場所で常温保存する、という組み合わせで問題ありません。常温分は3日程度、冷蔵分は10日程度という、それぞれの目安で管理しましょう。

くみ置きした日を忘れてしまいそうなときは?

容器にマスキングテープを貼って日付を書いておくのが簡単で確実です。ホワイトボード用のマーカーでふたに直接書く方法もあります。日付が分からなくなった水を飲用にするのは避け、生活用水に回して新しくくみ直すのが安心です。前述のように「月・木にくみ直す」と曜日を固定してしまえば、日付を書く手間そのものを省くこともできます。ご自身が続けやすいやり方を選んでください。

くみ置きだけに頼らず、ほかの備えと組み合わせる

くみ置きは手軽な備えですが、常温3日程度という期限がある以上、こまめな入れ替えが必要です。農林水産省のガイドでは、水の備蓄方法として、普段からミネラルウォーターを飲んで減った分を買い足す方法、水道水のくみ置き、賞味期限が5〜10年と長い保存水の3つが紹介されています。くみ置きを基本にしつつ、ペットボトルの水や保存水を組み合わせると、入れ替えの負担を減らしながら必要量を確保しやすくなります。

また、ウォーターサーバーを使っているご家庭では、未開封のストックボトルも飲料水の備えになります。停電時にサーバーが使えるかどうかは機種によって異なるため、災害・停電時にウォーターサーバーは使える?で事前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

水道水のくみ置きについて、要点をまとめます。

くみ置きは、費用がほとんどかからず、思い立った日に始められる備えです。ペットボトルの水や保存水をそろえるまでのつなぎとしても、そろえた後の上乗せとしても役立ちます。まずは今日、清潔なペットボトル1本に水道水を口元まで入れてみるところから始めてみてください。

本記事の記載は2026年8月時点の調査にもとづきます。紹介した日数や方法は東京都水道局の案内によるものです。地域によって案内の内容が異なる場合があるため、実践の際はお住まいの水道局の最新の案内をご確認ください。

出典

一次資料(政府機関・公的機関の公表資料および査読論文)