水道料金が値上がりする理由と今後
「水道料金が上がった」「値上げを検討というニュースを見た」——ここ数年、水道料金の話題を目にする機会が増えました。なぜ水道料金は値上がりするのでしょうか。
本記事では、総務省の資料「水道事業及び下水道事業の現状と課題」(令和6年9月)にもとづいて、水道料金が値上がりする構造的な理由を整理します。そのうえで、自分の住む自治体の料金や改定情報を調べる方法を【手順】形式で案内します。
なお本記事は、将来の値上げ幅を予測するものではありません。掲載する数値はすべて上記の総務省資料(2026年8月調査)にもとづきます。
結論:値上がりの背景は「使う水は減り、直す設備は増える」という構造
先に結論です。水道料金が値上がりする背景には、次の3つの構造的な要因があります。
- ・収入のもとになる水の使用量(有収水量)が、1998年をピークに減り続けている
- ・水道管をはじめとする設備の老朽化が進み、法定耐用年数を超えた管路の割合が年々上昇している
- ・老朽化した設備の更新に、これまでよりも大きな投資が必要になると見込まれている
水道事業は基本的に水道料金の収入で運営されるため、「収入が減る一方で、必要な支出が増える」というこの構造が、料金を見直す動きの土台にあります。ひとつずつ、総務省資料の数字で確認していきます。
理由①:水の使用量(有収水量)が減り続けている
有収水量とは、料金収入につながった水の量、つまり「売れた水の量」のことです。水道事業の収入の土台となる数字ですが、総務省資料によると、有収水量は「1998年(平成10年)をピークに減少しており、2050年(令和32年)頃にピーク時の67%程度に減少し、2100年(令和82年)頃にはピーク時の37%程度まで減少する見通し」とされています(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。
ピークはすでに四半世紀以上前で、今後も長期的に減少が続く見通しです。人口減少や節水機器の普及が進む中で、「水がたくさん売れて収入が増える」という前提は成り立ちにくくなっています。
ここで押さえておきたいのは、水道の費用の性質です。水道は、浄水場や配水池、張りめぐらされた水道管といった大きな設備を維持して初めて成り立つサービスです。使われる水の量が減っても、設備を維持する費用はそれに比例しては減りません。収入が減っても支出が減りにくい——この非対称が、水道事業の経営を難しくしています。
理由②:水道管の老朽化が進んでいる
2つめの理由は設備の老朽化、とくに水道管(管路)の老朽化です。
管路は事業用資産の約7割を占める
総務省資料によると、管路は水道事業の事業用資産の約7割を占めています。そしてその管路について、「管路経年化率が年々上昇」していると指摘されています(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。
管路経年化率とは、法定耐用年数(40年)を超えた管路の延長が、管路全体に占める割合のことです。つまり「耐用年数切れの古い水道管の割合が、年々増え続けている」ということを意味します。

今の更新ペースでは、すべての管路の更新に約150年
古くなった管路は順次新しいものに取り替えていく必要がありますが、総務省資料は「管路更新率は低調に推移。(R3年度の更新率では、仮にすべての管路を更新するとなると約150年も要する計算)」と指摘しています(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。
法定耐用年数が40年である一方、全部を取り替えるのに約150年かかるペースというギャップは、このままでは古い管路がさらに積み上がっていくことを示しています。古い管路の割合が増えれば、漏水や破損のリスク管理、耐震化といった課題への対応も重くなっていきます。
理由③:更新に必要な投資額が、これまでより大きくなる
3つめの理由はお金の見通しです。総務省資料によると、過去10年間(2011〜2020年度)の水道事業における年間平均投資額(更新費を含む)は約1兆3千億円でした。これに対し、2021年度から2050年度までの30年間に更新のために必要となる年間平均投資額は、平均約1兆8千億円とされています(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。
これまでの投資ペースよりも大きな金額を、今後30年にわたって毎年投じていく必要がある、という見通しです。理由①で見たとおり収入のもとになる水量は減っていく見通しですから、「減っていく収入で、増えていく更新費をまかなう」という難題に、多くの水道事業者が直面していることになります。
そもそも水道料金はどう決まっているのか
ここで、水道料金の基本的な仕組みも押さえておきます。水道事業は自治体などの水道事業者が運営しており、かかる費用を水道料金の収入でまかなうことが基本です。だからこそ、前の章まで見てきた「収入減・費用増」の構造が、料金の見直しに直結します。
水準感の参考として、総務省資料には上水道の供給単価の全国平均が178円/m³(うち資本費の全国平均は74円/m³)という数字が示されています(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。供給単価とは、水1立方メートル(1,000リットル)を供給して得られる収入の平均です。ペットボトルの水と比べると桁違いに安く、水道が日常のあらゆる用途を支えられるのは、この価格水準があってこそだと分かります。
ただし、これはあくまで全国平均です。水源の条件や地形、人口密度、設備の状況は地域ごとに大きく異なるため、実際の料金体系や水準は自治体によって差があります。「わが家の水道料金」を知るには、自分の自治体の情報を確認するのが確実です。

明細は「基本料金+従量料金」が基本形
家庭の水道料金は、多くの自治体で「基本料金」と「従量料金」の組み合わせで計算されます。基本料金は使用量にかかわらず必要となる部分で、メーターの口径などによって決まるのが一般的です。従量料金は使った水の量に応じてかかる部分で、使用量の段階によって単価が変わる体系を採用している自治体もあります。
また、検針票や請求書には、水道(上水道)の料金と下水道使用料が併せて記載されていることが多くあります。「水道代が上がった」と感じたときは、上水道と下水道のどちらが変わったのかを分けて確認すると、状況を正確につかめます。

今後どうなる?——断定はできないが、構造は続く
「では、これからいくら上がるのか」が気になるところですが、将来の値上げ幅は自治体ごとの経営状況や施設の状況、料金改定の判断によって決まるものであり、本記事で断定的に予測することはできません。
言えるのは、総務省資料が示す「有収水量の長期的な減少」「管路経年化率の上昇」「更新投資の必要額の増加」という構造的な要因は、特定の自治体だけの話ではなく、日本の水道全体が向き合っている課題だということです(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。だからこそ、住んでいる自治体の料金や改定の動きを、一次情報で確認できるようになっておくことが役に立ちます。
なお、料金の改定は事業者が思い立ってすぐに行えるものではなく、収支の見通しの検討や審議会での議論、議会での手続きなどを経て決まっていくのが一般的です。改定が検討される段階で資料が公開されることも多いため、関心を持って情報を追えば、決定前に背景を知ることができます。次の章では、その具体的な調べ方を紹介します。

自分の自治体の水道料金・改定情報を調べる方法
最後に、自分の自治体の水道料金と改定情報を調べる手順を紹介します。特別な知識は不要で、手元の検針票とインターネット検索だけでできます。
【手順1】手元の検針票(「水道使用量のお知らせ」など)を確認します。自分の家の使用水量と請求額、そして水道事業者の名前(○○市水道局、○○県企業局など)がここで分かります。
【手順2】検針票に書かれた水道事業者の公式サイトで、料金表を確認します。検索エンジンで「自治体名 水道料金」と調べると、基本料金と従量料金の仕組みを説明したページが見つかります。多くの自治体では、メーターの口径や使用水量の段階によって料金が決まる体系になっています。
【手順3】料金改定の予定や検討状況を確認します。「自治体名 水道料金 改定」で検索すると、改定のお知らせや、審議会・経営戦略などの資料が公開されている場合があります。改定の理由として、本記事で見たような設備更新や収支の見通しが説明されていることが多く、資料の背景が読み取りやすくなっているはずです。
【手順4】不明な点は、水道事業者の窓口に直接問い合わせます。検針票に問い合わせ先が記載されています。減免制度や支払い方法の相談も、この窓口が受け付けています。
水道料金のよくある疑問
値上げは全国一律で行われるの?
いいえ、一律ではありません。水道事業は自治体などの事業者ごとに運営されており、料金の改定もそれぞれの事業者の判断と手続きで行われます。総務省資料が示す「有収水量の減少」「管路の老朽化」「更新投資の増加」という構造的な課題は全国に共通しますが、いつ・どのような形で料金に反映されるかは地域ごとに異なります。だからこそ、自分の自治体の情報を個別に確認することに意味があります。
なぜ地域によって料金に差があるの?
水源までの距離や地形、人口密度、施設の規模や更新の進み具合など、水を届けるためにかかる費用の条件が地域ごとに大きく違うためです。同じ量の水を届けるにも、条件が厳しい地域ほど費用はかさみます。先ほど紹介した供給単価の全国平均178円/m³という数字は、あくまでこうした地域差をならした平均値です(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)。
節水すれば水道代は必ず下がる?
使用量に応じてかかる従量料金の部分は下がりますが、基本料金の部分は使用量にかかわらずかかるため、請求額全体が使用量に比例して下がるとは限りません。また、水道事業全体で見ると、使用量の減少は収入の減少要因でもあります。一人ひとりの節水は大切にしつつも、「みんなが節水すれば料金が下がる」という単純な関係ではない点は、本記事で見た構造から読み取れるポイントです。
水道への理解は、日々の水の選び方にもつながる
水道料金の構造を知ると、蛇口から出る水そのものへの関心も高まります。当サイトでは、水道水にまつわる疑問を掘り下げた記事も公開しています。
- ・水道水はそのまま飲めるのか:日本の水道水の安全性の考え方を整理しています
- ・貯水槽方式と直結給水方式の違い:同じ水道水でも、建物への届き方に種類があることを解説しています
水道は「安くて当たり前」の存在に見えますが、その裏側では、設備の更新と収入減少という長期的な課題への取り組みが続いています。料金の話題を目にしたときに、背景の構造まで思い浮かべられると、ニュースの見え方も変わってくるはずです。
まとめ
- ・水道料金が値上がりする背景には、「収入のもとになる有収水量の減少」「管路の老朽化」「更新投資の増加」という3つの構造的要因があります
- ・有収水量は1998年をピークに減少しており、2050年頃にはピーク時の67%程度、2100年頃には37%程度まで減少する見通しです(総務省「水道事業及び下水道事業の現状と課題」令和6年9月・2026年8月調査)
- ・事業用資産の約7割を占める管路は経年化率が年々上昇しており、令和3年度の更新率では、仮にすべての管路を更新すると約150年を要する計算です
- ・年間平均投資額は過去10年(2011〜2020年度)の約1兆3千億円に対し、2021〜2050年度は平均約1兆8千億円が必要とされています
- ・将来の値上げ幅は自治体ごとの判断によるため断定できません。検針票と自治体公式サイトで、自分の地域の料金と改定情報を確認するのが確実です
出典
- ・総務省 自治財政局「水道事業及び下水道事業の現状と課題」(令和6年9月・資料2)(2026年8月調査。有収水量の見通しの出典表記は厚生労働省資料)