空気製水(AWG)は万能ではない!?向く施設・慎重に検討すべき施設の考え方
BCP(事業継続計画)を策定する際、経営者が最も頭を悩ませるのは「何を、どこまで守るか」という決断ではないでしょうか。
災害や断水は、起きないに越したことはありません。しかし、私たちは「起きてしまう運命」から目を背けることはできません。その意思決定のテーブルによく上がるのが、AWG(空気製水機)です。
最初にお伝えしておきます。AWGは「これさえあれば全て解決」という魔法の杖ではありません。しかし、その限界を正しく理解し、役割を絞り込んで設計できれば、断水時における「最強の切り札」になります。
この記事では、導入後の「こんなはずじゃなかった」をゼロにするために、あえて厳しい視点で皆さんの「期待値」を整えていきます。
目次
なぜ「万能ではない」と言い切るのか
施設運営における備えは、根性論ではなく「設計」です。BCPの本質は、最悪の事態でも「どこまでなら担保できるか」を事前に決め、関係者と合意しておくことにあります。
その前提に立つと、AWGを“万能”として扱うのは経営上のリスクになります。 なぜなら、AWGのパフォーマンスは、温湿度・電源・設置環境・保守といった外部条件に大きく左右されるからです。環境が少し変わるだけで、水の生産量や運用コストの体感は変動します。
だからこそ、私はこう言います。 「AWGは万能ではない。だからこそ、既存インフラの穴を埋める『ピース』として、これ以上ない力を発揮する」
受水槽、備蓄水、給水ルート、非常用電源。今ある備えの「死角」を埋めるための独自のピースとしてAWGを再定義する。これが、迷いのない意思決定の第一歩です。
AWGが得意なこと/苦手なこと
AWGは水をゼロから生み出す魔法の箱ではなく、「水の入手経路をもう1本増やす装置」だと捉えてください。
◎ 得意なこと
・断水時にも飲用・衛生機能を維持するための水供給ルートの確保。
・清拭、手洗い、清掃など、あらかじめ決められた手順での水確保。
・配送トラックや水道管の破損に左右されない、その場での水生成。
× 苦手なこと
・施設で使う全ての水を賄おうとすると、需要と供給がパンクの可能性。
・停電時に「電源設計」がないと、ただの箱になる。
・湿度が極端に低い場所や、排気が汚れている場所では性能が落ちる。
詳細は別記事で徹底解説しています:AWGの環境条件(温湿度・設置場所)の考え方(準備中)。
向く施設の共通点
カタログスペック以上に重要なのは、「その装置が、現場の日常に無理なく馴染むか」という一点です。うまく運用できている施設には、共通する「設計の思想」があります。
目的が“補完”としてシャープに定義されている
「断水でも運営を止めない」という言葉を、解像度高く分解できている施設です。
「全部を守る」ことを潔く捨て、「まずは手洗いと清拭だけは絶対に止めない」といった、用途を絞った設計ができる組織こそ、導入効果を最大化できます。
電源の議論から逃げない
非常時にAWGを動かすのは、気合いではなく「電力」です。
非常用発電機の優先順位、蓄電池の容量。「誰が、どの手順で、どのコンセントに差し込むのか」までを具体化できている施設は、災害時に本物のレジリエンスを発揮します。
現場目線で「熱・音・動線」をシミュレーションしている
現場を疲弊させるのは、大きなトラブルよりも「小さな不快」の積み重ねです。 点検のしづらさ、通路の狭まり、稼働音。
これらを「現場のわがまま」で片付けず、夜間の静寂や感染対策の動線まで含めて事前に検討できる施設は、導入後も装置が「愛着のある備え」になります。
保守・衛生・記録を「仕組み」に落とし込んでいる
フィルター交換やタンク洗浄を、「意識の高い特定の担当者」に依存してはいけません。
当番制でも回るチェックリストを作り、外部保守との責任分界点を明確にする「個人の努力」を「組織の仕組み」に変換できる施設が、AWGを使いこなす資格を持ちます。
向かない施設のサイン
もし以下の項目に心当たりがあるなら、今はまだ導入のタイミングではないかもしれません。
現場で運用が破綻するサイン
- ・「水さえ出れば、使い方は後で考えればいい」という楽観論がある。
- ・地味な清掃作業が、特定の職員の善意に寄りかかっている。
- ・夜勤帯のオペレーションや、パニック時の動線議論が抜け落ちている。
事務(比較・契約)で詰まるサイン
- ・比較軸が「本体価格」だけで、工事費や継続的な保守コストが見えていない。
- ・「故障したときにどうするか」という代替策(バックアップのバックアップ)が空白。
- ・保健所等の運用ルールや施設内監査との整合性が取れていない。
失敗しないための「用途分け」早見表
AWGを“万能”という罠にハメないためには、用途を分けて設計することが不可欠です。
| 判断軸 | 向く | 向かない |
|---|---|---|
| 目的 | 断水時の“補完”として用途が絞れている | 既存の水道をまるごと置き換える前提 |
| 環境条件 | 設置場所の通気・温湿度の見立てがある | 置き場所ありきで、環境確認が後回し |
| 電源 | 非常用電源との接続・優先順位を議論済み | 停電時は「その時考える」になっている |
| 運用 | 清掃・交換・停止時対応がマニュアル化されている | 特定の個人に依存し、記録が続かない |
| 用途分け | 非飲用から着手し、段階的に拡張する | 最初から飲用フルスペックで現場が詰まる |
次の一歩:導入の順番を間違えない

もし「私たちの施設には向いているかもしれない」と感じたなら、次にすべきはカタログを取り寄せることではありません。
まずは「導入のステップ」を正しく理解し、組織内の合意形成のルートを固めることです。現場が迷わず動き、経営が納得する。そんな失敗しないためのプロセスを、こちらの記事で整理しました。